映画『ゾンビランド:ダブルタップ』は単なる同窓会映画だったなあ

ゾンビランド:ダブルタップ (監督:ルーベン・フライシャー 2019年アメリカ映画)

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「ゾンビ世界で生き残るにはルールが大事だッ!ヒヤリハットは命取り!日頃の点検怠るな!指差し確認で安全確保!ゼロ災でいこう、ヨーッシ!」というどこかの作業現場みたいにルール順守の連中がゾンビ世界をサヴァイブする映画『ゾンビランド:ダブルタップ』でございます。これ、2009年公開の映画『ゾンビランド』の続編なんですな。タイトルの「ダブルタップ」というのは「ルール2、二度撃ちして止めを刺せ」と2作目であることに準じているのありましょうや。

出演陣は前作と一緒、ジェシー・アイゼンバーグウディ・ハレルソンエマ・ストーンアビゲイル・ブレスリン。何故か前作でアレなことになったビル・マーレイも出演しているのでお楽しみに。監督も前作と同じルーベン・フライシャーが務めます。

それにしても『ゾンビランド:ダブルタップ』の出演陣、『ゾンビランド』後の10年で物凄く注目される俳優へと成長していて驚かせられますね。ジェシー・アイゼンバーグはなんといっても『ソーシャル・ネットワーク』だしDCEU映画『 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』や『ジャスティス・リーグ』だし、ウディ・ハレルソンは『スリー・ビルボード』で『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』だし、エマ・ストーンは『ラ・ランド』で『アメイジングスパイダーマン』ですよ。アビゲイル・ブレスリンは……まあいいや。

しかし10年も経って続編というのもスゴイ、というかきっと監督ルーベン・フライシャーが2018年の『ヴェノム』製作の余勢をかって「おっしゃー!好きなことやるぞおお!」とか言いつつ作ったのではないか想像しております。とはいえそんなに続編が待たれた映画だったっけか?と思わないことも無いんですが……1作目、確かに面白いっちゃあ面白かったけど、あそこから何か膨らますようなお話だったけかなあ、という気がしないでもない。

とまあ長々と前置きを書きましたが、なんでこんなに長々と前置きをして回り道をしたかというと、ええっと、実はそれほど面白くなかったからで……いやあどうもスイマセン。

いや、面白くなかった、というのは言い過ぎで、映画館にいる間はそれなりに楽しめた、あれやこれやの小ネタに終始クスリとさせられた、というのが正確な所ですが、いわゆる「映画のデキ」として全体を眺め回して見るならば、なんかこうシナリオにインパクトがない、練られてない、エピソードをあれこれと無理矢理ヒリ出してなんとかお話を繋いでいる、なんだかその場の思い付きで特に吟味せず勢いだけで作ってしまった、そんな印象なんですよ。ゾンビ映画だけに「死に体」な映画になってしまってるんですな。

まず舞台ですよね。冒頭のホワイトハウスやその後のエルヴィスの聖地やクライマックスの「バビロン」や、まあロケーションとして面白いっちゃあ面白いんですが、で、なんでそこなの?という必然性があんまり感じないんですよ。その「バビロン」に住む連中、いわゆるニューエイジな皆さんなんですが、それで?と思うけど特に話が膨らまない。見た目はおかしいですが批評性があったり皮肉であったりというものでもなく、ただニューエイジってだけ。

そしてこの2作目から登場する「進化したゾンビ」ね。これ、ルール順守の連中によりゾンビ討伐がやり易くなってしまったがために、敵をパワーアップさせなきゃバランス取れなくなるってことで登場させたんでしょうね。でも結局「カタイ敵」以上の特徴のない芸の無さで、拍子抜けさせられる。エルヴィスの聖地で登場したあの二人も「主人公二人と似ている」という設定が何の役に立ったのかさっぱりわからない。なんかこー、「続編」というよか「二次創作」みたいな映画なんだよな。これじゃあ単なる同窓会だよなあ。

そんなションボリさせられる作品ではありましたが、見所が無いわけでもない。それは、ゾーイ・ドゥイッチ演じる新キャラ、大バカ女のマディソンなんですね!このマディソンさん、ひたすらフワフワチャラチャラした脳みそお花畑で人生全てナメ切ってるアッパラパー女なんですよ。普通こういうキャラが映画に登場したら、見ているだけで苛立たせられること必至の上、この映画みたいなホラーテイストの作品やサスペンス作品であれば、主要人物の足を引っ張ってさらに苛立たせられるもんです。ところが、この『ダブルタップ』では奇跡のように物語を風通しよくさせ、なおかつ心憎いフックをもたらしてくれる存在となってるんですよ!

そもそもこのマディソンさん、こんな大バカ女がゾンビアポカリプスな世界で今までどうやって生き延びてたんだ、と眉間に皺寄せさせる存在であると同時に、物語の中でもこんな大バカ女がなんで生き延びられるんだ、と呆れ返ってしまうキャラクターなんですよ。ゾンビ映画で有り得ないですよこんな人。で、そこがいい。ゾンビとの熾烈な戦いをマジぶっこいて繰り広げるわけでもなく、フワフワヘラヘラと適当にクソナメ切った生き方だけでゾンビ世界を生き延びてしまう。これ新しい。最強。そしてこういうキャラが登場できるからこそのコメディ作なんですね。もうこのマディソンさんを主人公にして作品作った方がよかったかもしれないとすら思わせました。そう、ゾンビ世界も人生も、ナメ切ってナンボ!!ここ、大事な所ですよ!