リー・ペリーのインスト3部作(正確には「アップセッターズのインスト3部作」)である。「え、ダブとインストってどう違うの?」と聞かれると返答に困ってしまう音楽的知識の乏しいオレではあるが、ダブ・ミュージックがオリジナル音源をダブ処理した作品だとするとインストはヴォーカル無し演奏のみの音源として最初から製作されたもの……という当たり前すぎる説明でいいだろうか。ま、最初からオリジナル音源無しにダブ・ミュージックを製作することもあるようだが。
今回はリー・ペリーのインスト3部作『Musical Bones』『Kung Fu Meets the Dragon』『Return of Wax』、それとは別にリー・ペリー、ないしはアップセッターズ名義のオリジナルアルバムを幾つか紹介する。
■Musical Bones / Lee Perry
「3部作」の中で最も完成度が高く、リー・ペリー作品としても非常に評価が高いのがこの『Musical Bones』だ。全編に渡りドン・ドラモンドJr.のトロンボーンがフィーチャーされており、リー・ペリー作品から離れても「トロンボーン・レゲエ」として楽しめる。というよりあまりリー・ペリー作品の印象がしないほどだ。演奏は泥臭くジャズ・ミュージックのそれとは全く味わいが違うが、逆にこの泥臭さ、武骨さが当時のレゲエの雰囲気をきっちりとパッキングしているのだ。それにしてもこのアルバム、プレミア値が付いてて購入には相当思い切ってしまった、という余談がある。
■Kung Fu Meets the Dragon / Lee Perry
「カンフーとドラゴンの出会い」である。 お馬鹿なジャケットがなにしろ楽しくてしょうがない。このグラフィックを使ったTシャツの購入を一時考えてしまったぐらいだ。それにしてもカンフーとリー・ペリー、非常にお似合いではないか。内容もジャケット同様とぼけていてリラックスしたものであり、時折リー・ペリーが変な音を出したりブルース・リーの怪鳥音を真似た奇声を発しまくったりしていて、「ああ、変だ、変なアルバムだ」としみじみ楽しむ事が出来る。
■Return of Wax / Lee Perry
「帰ってきたワックス」ではあるが、ワックスが何の隠語なのか分からないので知ってる方は教えてください。しかし今作もまたふざけたジャケットだ。上半身裸のマッチョなペリーにドラゴンにタイガー。よく分からない。よく分からないがこれでいいんだと思う。だってリー・ペリーだし。内容は 『Kung Fu Meets the Dragon』同様ダブというよりも確かにインスト曲集で、実際地味ではあるが落ち着いたユルイ演奏をユルく堪能できる作りになっている。そしてこのユルさがまた心地よいのだ。
■Double Seven / Lee Perry

- アーティスト: Lee Perry,The Upsetters,U Roy
- 出版社/メーカー: Sanctuary Records
- 発売日: 2001/10/09
- メディア: CD
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「俺はシャウトしまくるぜ!」というヤル気満々なジャケットのアルバムである。今作における特色はペリーには珍しいピョーンピョーンとした妙なムーグ音が多数フィーチャーされていることだろうか。ムーグは珍しくとも「妙な」という部分でペリーらしくなっている。ブラック・アーク期直前直後ということでまだまだ尖がったペリー・サウンドという訳ではないが、生き生きとした曲が多く、ヴォーカル曲も多彩だ。後にコンピレーションに収められるようなイイ演奏が結構収められていて、これは意外と隠れた良盤かもしれない。
■Revolution Dub / Lee Perry & the Upsetters
「インスト3部作」と同時期にリリースされたダブ。『スーパー・エイプ』のような変幻自在の妖しさはないが、じっくりじわじわ確実に聴かせるシブ目のダブが展開する。レコード回転数が落ちてるんじゃないか、と思っちゃうぐらいユッタリでスカスカ、でも時々ゲップなのかエズキなのかよく分からない変なヴォイスが入っている所で「ああ、ペリーさんだ」としみじみ感動できる。同じアルバムだがいろんなジャケットで出ているので注意が必要。
■14 Dub Blackboard Jungle / Upsetters
そう、これが「史上最初のダブ・アルバム」とも呼ばれる(諸説あり)歴史的記念盤であり名盤『14 Dub Blackboard Jungle』である。リー・ペリー・アルバムも数あるがその中でも筆頭で聴かねばならないアルバムの一つである。古いダブ作品とはいえここで展開するアイディアは決して古びておらず、曲調はタフでストロング、そのスリリングで高いテンションの曲の数々は聴き応え十分だ。音質の悪いクロックタワー盤もリリースされているが今回紹介しているヴァージョンこそが正解だろう。また今作はもう一人のダブ・ミュージックの雄、キング・タビーとのコラボ作でもある。曲調の分厚いドープさはタビーのものではないかと若干推測する。ブラックアーク期と前後する音源なので例のペリー節はまだ片鱗しかないが、それでも妙な雄叫びは存分にフィーチャーされており、「ああ、ペリーさんだなあ」とこれもしみじみ堪能できる。必聴。