見た目はチャラいがやるときゃやるぜ!〜映画『R...Rajkumar』

■R...Rajkumar (監督:プラブーデーヴァー 2013年インド映画)


モクモクと赤く燃え立つ爆煙を背後に、泥だらけのヒゲ男とそれによりそう眉目麗しき美女が並び立つDVDジャケを見て、「おおこれはなにがしかの人的自然的災害の中で決死のサバイバルを敢行する男女のアクションとロマンを描く作品なのだろうか」とオレは思ったわけである。ところがDVDを観始めるとこれがビックリ、どこまでもC調でティッシュペーパーのように薄く軽いチンピラ男がマフィアの娘に禁じられた恋をして、危機また危機の大アクションを繰り広げる、というお話だったのである。ええと赤く燃え立つ爆煙は…映画には表れなかったような気がするが…多分これは恋に燃え立つチンピラ男の心象を表したものなのだろうな…。
お話はシヴラージとバルマルという男がそれぞれ率いる二つのマフィアが争い合うインドのどこかの町が舞台である。そこにふらりとやってきたのが今作の主人公ラージクマール(シャーヒド・カプール)。ラージクマールはその鉄腕ぶりを認められてシヴラージに雇われ、バルマル暗殺を命じられるが、そこでバルマルの娘チャンダー(ソーナークシー・シンハー)に恋をしてしまうのである。一方バルマルは娘チャンダーをシヴラージに嫁がせることで両組織の合併を目論む。黙っていられないのがラージクマール。彼は組織を抜け出し、チャンダーとの愛の為にシヴラージと対決することを誓うのである。
とまあ粗筋は十分シリアスなのだが、なにしろ主人公ラージクマールがお調子者のチャラ男なのである。チャラチャラヘラヘラしながら嫌がるチャンダーにストーカーのように付きまとい、「どうよ俺?凄いっしょ?イケてるっしょ?俺とコーサイしない理由なんてないっしょ?」としつこくしつこく口説きまくるのである。まあ、今まで観てきたインド映画も、しょーもない男が身持ちの固い女子にストーカーのようにくっついて口説きまくり、情にほだされたか根負けしたかで女子が交際を認める、というパターンがあまりにも多いのであるが、「しつこくすればなんとかなる」というほぼゴネ勝ちみたいな芸の無い口説き方にはそろそろ食傷してきたのも確かである。
そしてなんとかチャンダーを口説き落したラージクマールであったが、なんとそのチャンダーが政略結婚の餌としてマフィアのドンに差し出されてしまったからさあ大変、ラージクマールさん、マフィアの軍勢を敵に回して大立ち回りを演じるのだが、これがもう強い強い、見た目も性格もフニャ男くせに腕力だけは天下一品、寄せ来る敵を次から次へとあたかも鬼神の如く叩きのめしていくんである。個人的には遊園地の遊具で相手をぶちのめす描写がお気に入りだ。そしてたちまち辺りは屍累々、ここまでが実は中盤で、敵を倒したラージクマールさんがチャンダーさんと手に手をとって逃避行か、と思ったのだがさにあらず。チャンダーさんを恋敵シヴラージの元に残したまま、「チャンダーと結婚するのは俺だから。お前とは結婚できないから」とかなんとか言い残して去っちゃうのである。
いやいやいや!ここまでやったらあとは女の手を引いて新世界目指すだろ!?と思ったのだがそういう展開ではないのだ。結局中盤からはシヴラージの結婚準備をあの手この手で邪魔をして嫌がらせをし、「どう?あんたより俺のほうが一枚上手っしょ?」と見せつけるシーンがしばらく続くだけなのだ。まあ確かに一枚上手ではあるが、女にもしつこいが嫌がらせもしつこいラージクマールさんに段々うんざりしてくるのも確かなのである。そしてやっぱり最後にラージクマールさんはシヴラージと対決することになるんだが、だったら中盤の乱闘でメンチ切ってた時にやっときゃよかったじゃん?と思えてしまった。…でも英語字幕で観たのだけれど、英語の不自由なオレが肝心な部分の内容を把握できていなかっただけのような気もしてきた…。もしそうだったらゴメンよラージクマール!