■スター・トレック イントゥ・ダークネス (監督:J・J・エイブラムス 2013年アメリカ映画)
時は西暦2259年、ロンドンを突然の爆破テロが襲う。その事件の首謀者と目されるジョン・ハリソン中佐を追って、カーク船長以下お馴染みのクルーが乗り込む惑星連邦宇宙艦隊所属船U.S.S.エンタープライズがクリンゴン帝国本星クロノスへ飛び立つ。しかしそれはある巨大な陰謀の幕開けに過ぎなかった…新生シリーズ第2弾『スター・トレック イントゥ・ダークネス』の始まり始まり、というわけです。
映画冒頭から「艦隊の誓い」なる規律を犯してまで大活躍しちゃう熱血無鉄砲男カーク船長、前作から若気の至りは全く正されていないようです。なんか『バトルシップ』の主人公と被っているような気がするのは気のせいでしょうか。その相方ミスター・スポックは相変わらず論理論理と小うるさく、安定のウザさを突き進みます。でもなんだかスポックちょっと太ったような気がしますが、ウフーラとデキちゃったので幸せ太りというやつでしょうか。スコット機関主任を演じるサイモン・ペグ、コミックリリーフ役の彼は今回も従来的な『スター・トレック』のテイストを破壊し物語を「オレ色」に染めようとしています。ペグが出てくるとどんな宇宙の彼方であろうとイギリスのパブが近所にあるような気がしてきてなりません。
そしてやっぱりカンバーバッチですな。低い声、酷薄な表情、冷徹な思考と、目いっぱい悪役を演じておりましたが、「おーカンバーバッチやっぱええ男やあ」と見惚れてしまって、地球を破滅に導こうとする悪い奴の筈なんだけどあんまり憎々しく感じません。カンバーバッチ演じるハリソン中佐も悪逆非道というよりも、ある止むに止まれぬ事情から破壊行為に手を出していたりするんです。まあ結局は「人類なんか滅びてしまえ!」とやっちゃうんですが、どこか同情できる部分もある。んー、その辺がちょっと物語の悪役としては煮え切らない中途半端なものを感じたなあ。だいたいこのハリソン中佐、あたかも映画『セブン』のサイコパス犯人みたいな、完璧なシナリオに基づく計算づくの行動をするような男に仕立てたかったのかもしれないけど、観ていると意外とこいつその場しのぎなんじゃないのかと思えてくるんだが…。
一番不憫なのはスタトレ世界における因縁の敵役クリンゴン人の皆さんで、領土勝手に侵犯されて「なんだコラ」とやったら返り討ちに遭い全滅した挙句物語後半では忘れ去られているという…。残虐無比で知られるクリンゴンもこの物語ではショッカー戦闘員並みの雑魚キャラ扱い…。
そもそも大宇宙を股に掛けて冒険する筈の『スター・トレック』が、地球のテロ事件を発端として物語を展開していくって、まあテロも大変なことではありますが、ちょっと肩透かしと言いましょうか。なんかこうもっと気宇壮大で奇想天外で大風呂敷でハッタリかましまくったセンスオブワンダーな物語に出来なかったんでしょうか。そしてこの物語の鍵となる「訳あり光子魚雷」ですが、なんか随分強引な「訳あり」なんだよなあ。なんかやってることがややこしくて無理矢理な感じがするんだよなあ。そういえばJ・J・エイブラムスって考えてみると意外と強引で無理矢理な展開の作品製作してねえか…。大丈夫か『EP7』…。
ただし【覚醒ビースト・モードのスポックvs象が踏んでも壊れないハリソン中佐のガチンコバトル】は観ていて燃えたね。「気宇壮大で奇想天外なお話を…」とか知った顔でブツクサ言ってたオレも結局殴りあいで興奮して溜飲を下げた、と。やっぱりどんなに宇宙が広大だろうが神秘だろうが男同士の決着は拳で決める、そういう物語でありましたよ『イントゥ・ダークネス』。(そうなのか?)
http://www.youtube.com/watch?v=xpNFJv6Cxaw:movie:W620
- アーティスト: マイケル・ジアッチーノ,サントラ
- 出版社/メーカー: Rambling Records
- 発売日: 2013/05/15
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: アラン・ディーン・フォスター,尾之上浩司
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2013/08/15
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- 発売日: 2013/07/19
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (29件) を見る