最近ダラ観したDVDだのなんだの

ダーク・スター (監督:ジョー・カーペンター 1974年アメリカ映画)

ダーク・スター [DVD]

ダーク・スター [DVD]

ジョー・カーペンターの処女作でありカルトSFの誉れも高いSF作品、『ダーク・スター』を初めて観た。DVDなんか出てないんだろうなあ、と思ってたら普通に出ててレンタルで借りられた。ちなみに4月にはリマスターBlu-rayも発売されるらしい。内容はというと、人類の宇宙進出に向けて邪魔な惑星を破壊する任務のために航行する光速探査船ダーク・スター号を舞台に、その中の乗務員たちのダルい日常を描くというもの。この作品のいいところは低予算の中で精一杯工夫を凝らした手作り感覚の特撮が楽しいSF作品として仕上がっている部分だ。特にエレベーターシャフトでのシーンはこうやって撮ってるのか?というのが分かると俄然面白くなってしまったりする。前半はまるで緊張感の無いダラダラした雰囲気がSF作品とは思えないふざけた感じがしていい。そもそも、中盤でダラダラする、というのはこの頃からカーペンターのお家芸なんだな、と思わせる。しかし物語の真のテーマは後半に開花する。誤作動を起こした惑星破壊爆弾のAIを説得するために乗組員が決死の会話を繰り広げるのだ。ここでの「自意識とは何か?」を巡る怪しげなロジカル展開はSF好きならニマニマさせられることだろう。場面によっては実に『2001年宇宙の旅』を意識しているのを感じさせるし、ダン・オバノンが脚本・主演しているという部分から後の『エイリアン』を彷彿させるシーンまで登場して、SF映画ファンには見所満載の作品といえるかもしれない。そしてこの作品での手作り感覚は後のカーペンター作品でも受け継がれ、『遊星からの物体X』を始めとする数々の名作が生み出されてゆくのだ。話は逸れるが、カーペンターの『要塞警察』、はやくどこかでソフト化してくれよ…。

ダウントン・アビー Season:1 (TVシリーズ)(製作:ジュリアン・フェロウズ 2010年イギリス)

20世紀初頭のイギリス貴族一家を描くTVドラマシリーズ、第1シーズン。この第1シーズンはタイタニック号沈没の報せから始まり、第1次世界大戦勃発の報せで終わる、という部分が実に心憎い。「いまどきイギリス貴族のオハナシなんざファックだぜ!」と言えないこともないのだが、実の所これはこれで面白く出来ている。物語はイングランド郊外にたたずむ大邸宅“ダウントン・アビー“で暮らす貴族グランサム伯爵一家を中心をしつつ、彼らにかしずく執事やメイドらの物語でもあり、これら「当時の貴族邸宅は誰によってどのようにしてきりまわされていたのか」という文化的側面を見る・知ることができる部分がたまらなく面白いのだ。合わせて当時の人たちの服装、そして貴族邸宅の調度・内装を眺められるのがまた楽しくあったりする。そして俳優たちがいい。主要人物の殆どがイギリス人俳優で占められ(伯爵夫人のみアメリカ人俳優)、そのイギリスらしい無骨な顔つきを眺められるのがまたよかったりする。特に執事カーソンの激シブなオッサンぶりは、その職務も合わせオヤジマニアの男性女性には堪えられないものがあるのではないだろうか。一方物語はというと、こういった群像劇ならではの策謀や対立、諍いは描かれるものの、アメリカの同様なTVドラマと比べると暴力性やエゲツなさが無く、貴族側にあっては実に紳士的かつ鷹揚尊大に対処するし、また使用人側にあってはドロドロした思惑があったとしても所詮「イジメ」の範囲内なのだ。即ちこういった部分での「キツさ」が皆無といった部分でも安心して観ることができ、逆に過激な描写を求める方には退屈かもしれない。また、全体を覆うテーマはやはり「変わりゆく時代」ということを描いており、時代の波の中で変化を余儀なくされる貴族社会、といったものがその根底になるのだろう。このドラマは現在シーズン4まで放映され、本年度はシーズン5が放送予定であるという。

■ママはレスリング・クイーン (監督:ジャン=マルク・ルドニツキ 2013年フランス映画)

ママはレスリング・クイーン [DVD]

ママはレスリング・クイーン [DVD]

スーパーマーケットでレジ係やってるおばちゃんたちが一念発起して女子プロレスラーを志しちゃう!?というコメディである。しかもアメリカでもイギリスでもなくフランス作品である、といった部分で独特の雰囲気を醸し出している。レジ係のおばちゃんたちが女子レスラーになった大きな理由は、主人公であるシングルマザーの新米女子店員がみんなに声をかけたからだ。彼女は実は貧困を理由に犯してしまった犯罪により服役し、出所したばかりであり、里親に出していたプロレスファンの息子の気を引きたいばかりに女子レスラーを目指すのだ。そんな彼女に同調した中年女性たちもどこかで自らの人生に閉塞感を感じていたからこそ女レスラーになろうとしたのだ。主人公の抱える問題も、仲間たちの閉塞感も、それらはフランスの長引く不況による生活不安が根底にあるのだろう。女子レスラーになったからといって不況は変わらないのだけれども、しかし自らの閉塞感を打破し、リフレッシュすることはできる。つまりこれは「負けていられない」ということを宣言する女たちの物語だ、そして女子レスラーとして贅肉や老体に鞭打ちながらファイトする中年女たちの姿が実に頼もしくそして眩しい、そんな物語なのだ。

■マクナイーマ (監督:ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ 1969年ブラジル映画)

マクナイーマ 【デジタルリマスター版】 [DVD]

マクナイーマ 【デジタルリマスター版】 [DVD]

映画『マクナイーマ』は1969年ブラジル製作のいわゆる"カルト映画"のひとつである。原作はサンパウロ出身の作家マリオヂ・アンドラーヂによる『マクナイーマ つかみどころのない英雄』。いわゆるラテン・アメリカ文学/マジック・リアリズムの文脈にある作品だがオレは読んでいない。原作小説の紹介文は「ジャングルに生まれた英雄マクナイーマの、自由奔放で予想のつかない物語。インディオに伝わるおとぎ話の数々を組み合わせ、インディオの言語から取り込んだ単語を各所に散りばめた、ブラジル文学の極点的小説」となっていて、映画作品のほうも主人公マクナイーマとその家族がジャングルと都会を行き来しながら出会う、どうにもつかみどころのない逸話の数々が中心として描かれてゆく。で、これが面白いのかというと「???」としか言いようがない。ホドロフスキーばりのシュールさはあるものの、寓意が明確でなく映像自体に深みや凄み、あるいは楽しさがあるという訳でもない。すっとぼけた雰囲気は伝わるが、それだけなのである。なにより全体的にばばっちいのが個人的にいただけない。まあ「なんか変な映画観た…」ということでここはお茶を濁しておくことにしよう。
マクナイーマ―つかみどころのない英雄 (創造するラテンアメリカ)

マクナイーマ―つかみどころのない英雄 (創造するラテンアメリカ)