ヘリックスの孤児 (ハヤカワ文庫 SF シ 12-9) (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ダン・シモンズ,加藤直之,酒井昭伸,嶋田洋一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/12/30
- メディア: 文庫
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永住の地を求めて旅をするヘリックスの民は、400年後にアウスターからの救難信号を受け取ったが……現代SFの頂点を極める《ハイペリオン》シリーズの後日談を描いてローカス賞を受賞した表題作をはじめ、古典的人類の最後の日々を描く《イリアム》シリーズ前日譚「アヴの月、九日」、傑作異次元SF「ケリー・ダールを探して」など、本邦初訳を含む5篇を収録し、当代随一のオールジャンル作家の魅力を凝縮した傑作集 (Amazon紹介文)
ダン・シモンズ、『ハイペリオン』シリーズ完結後であり、そして『イリアム』『オリュンポス』刊行前である2002年に発表された短編集です。5編の短篇が収められていますが、それぞれの作品前にそれら作品に関するエッセイが書き加えられています。で、このエッセイが巨匠っぽい実にもったいぶった筆致で、少々鼻に付くのが難。このもったいぶりは『イリアム』以降の作品にも垣間見え、『ハイペリオン』シリーズはとっても面白く読んでいたのに、『イリアム』以降はなんだか読んでいてかったるいものがあるのを否応無く思い出させてくれました!でも『ハイペリオン』『イリアム』シリーズに関連する短篇も収められているので、そういった部分さえ気にしなければファンとしては嬉しい作品集となっています。では作品を紹介。
・「ケリー・ダールを探して」…元教師とその教え子の少女が異次元世界で殺しあうというお話。相当突飛な設定なんですが、殺しあう理由って要するに愛憎相半ばしてってことなんですね。現実世界では不幸な身の上の少女とそれを気にかけていた教師、という関係だったんですが、実はロリ入ってるわけですね。でもこういうロリは嫌いじゃありません。というか好きです。ところでこの短篇、日本オリジナルの短編集『夜明けのエントロピー』にも収録されていて、既にそっちで読んでいたんですが、再読してみたところすっかり筋忘れていました。
・「ヘリックスの孤児」…『ハイペリオン』シリーズのスピン・オフ作品で、ちょろちょろ懐かしい人が出てきます。冒頭が映画『エイリアン』で、到着した星系は植物で出来た『リングワールド』で、そこにF・セイバーヘーゲンの『バーサーカー』みたいなヤツが襲ってくる、というお話ですね。『ハイペリオン』読んで無いと意味不明の箇所もありますが、大筋は理解できるのではないかと。
・「アヴの月、九日」…30世紀の未来、大災厄により1万人以下に減った人類がポスト・ヒューマンの都合で全員データ化され世界から消されるというお話。これはその後『イリアム』『オリュンポス』シリーズに膨らんだ作品でしょう。ただ『オリュンポス』も設定がガチャガチャしていて読み難い長編だったようにこの短篇もやっぱり設定がガチャガチャして読み難かったなあ。
・「カナカレデスとK2に登る」…人間とカマキリ型宇宙人がカラコルム山脈にある山、K2に登るというお話。なんでそんなことを?という経緯は置いといて、もうこのシチュエーションだけで面白いんですよね。K2は世界で最も登ることが難しい山と言われていて、その山を人類・宇宙人混成チームが絶えず命の危機に晒されながら登ってゆく様子が、とっても読ませるんですよ。
・「重力の終わり」…ソ連の宇宙基地にやってきたアメリカ人作家のお話ですが、非SFです。例によって相当もったいぶった書き方をしていて、非SFということもあってか退屈だったな。