風邪っぱやりの今日この頃、このオレ様もちと風邪気味で頭が重いんである。それで悪くすると堪らんとマスクを買ってきたのだ。しかしこのマスクというヤツ、オレは実はあまり好きではない。なにしろあの白い色が嫌いだ。別に何色だっていいんだろうし、赤や黒や迷彩柄のマスクがあったっていいような気がするが、その辺のコンビニで買えるのはどれも真っ白いマスクばかりなのである。
このオレ様のように常にワイルドで危険な男の香りがする伊達ワルレジェンド始まりまくりなファッションを一分の隙もなく着こなす男にとって、このような真っ白いマスクはこのオレ様の刃のように妖しく輝くウルトラミラクルスペシャルファッションセンスを真っ向から否定するろくでもないアイテムなのである。
しかしそんなことを言っても風邪には勝てぬ。だから仕方なくマスクをすることにした。これによりオレ様の全ての女の心を溶かす溶鉱炉の様にたぎる熱い男のほとばしりは勢いを弱め、ブリリアントな夜を切り裂くシュールでクレイジーなギターチューン程度にまでトーンダウンしたが、それですらオレ様に宿命のように付きまとう【頂点】の2文字を貶めることは決して出来はしないのだ。
だがもう一つ、オレがマスクを好きになれない理由がある。それはマスクをすると、呼吸が困難になってしまうということである。そもそもこのオレ様は鼻の穴が一般人と比べて1.5倍の大きさがあり、皇帝と呼ばれる男の定めとして平民よりもより多くの空気を吸う栄誉を神から授かっているのだ。
そんなこのオレがマスクをするとその布地のせいで通常よりも低く空気を吸わねばならなくなってしまう。それでは困る。このオレ様が平民と同じような空気の吸入量で生きていかねばならぬのはある種の辱めに近いものがあるのである。言ってしまえばこの世界の空気は全てオレのものであり、平民どもはオレのおこぼれを吸っているだけなのが真実だからである。
そして空気吸入量が低くなるとオレ様は剃刀の刃のように切れ味の冴え渡る溢れんばかりの知性を発揮することが難しくなってしまい、俗物どもと同じような胡乱で蒙昧な存在へと堕してしまうのだ。即ちマスクをするということはこのオレ様の土石流のように全てを押し流し火砕流のように全てを焼き尽くす悪魔的で奔放なモテ力を封印してしまうという恐るべきデメリットを持っているというわけなのである。
しかしオレは負けない。たとえそれがローソンで一番安い¥157のマスクであったとしても、世に存在する全てのファッションの野獣、ファッションの魑魅魍魎どもを恐れ戦かせひれ伏せさせ、悔恨の涙を海にもなれよとばかり流させる為、綺羅星のような輝きでコーディネートしてみせるのだ。さあ見るがいい、感じるがいい、このオレ様のマスクマン・レジェンドが今始まる瞬間を!