フロンティア (監督:サヴィエ・ジャン 2007年フランス映画)


この間“ホラー映画を観なくなった”とか言っといて『デイ・オブ・ザ・デッド』とかこの映画とかフツーにホラー映画観に行っているオレである。このホラ吹きめ(ホラーだけに)!いかさま野郎めが!などと誹謗中傷され焼き討ちに合い額に《下層階級》と書かれた紙を貼り付けられ高く吊るされてもいたし方あるまい。いや、ちょっとそれはいたし方ありすぎだ!

っつーかねー、情報誌の映画欄眺めてて愛とか心の機微とか人生がドータラいった映画ばかり並んでるのを見てるとついついヒネクレモノの血が騒ぎ「ウダウダうっぜーんだよやっぱ血だよ臓物だよ虐殺だよッ!」などと勘違いな方向に結論付けて、激高しながらホラー映画上映館へと駆け込んでしまうのである。つくづく因業な性格である。

というわけでフランスのスプラッターホラー映画『フロンティア』である。フランスのスプラッターホラーといえばアレクサンドル・アジャの『ハイテンション』が記憶に新しい(ジュリアン・モーリーの『屋敷女』というのもあるがこっちは未見 )が、フランス産スプラッターの特徴はとにかくねちっこくしつっこいということが挙げられるだろう。ダリオ・アルジェントのいるイタリアや最近日本でも『レック(REC)』の公開されたスペインのホラーも相当ねちっこいが、要するにラテン系の連中というのはホラーに限らずこういうしつっこくねちっこい気質をした連中なんだと勝手に決め付けているオレである。

さて映画は大統領選で起こった暴動に乗じて強盗を働いた連中が、逃亡の途中田舎宿に泊まるが、ぬぁんとそこはナチ・シンパで食人大好きな一家の経営する宿だった…というもの。宿泊客を料理しちまう宿、なんていう都市伝説めいたお話はいろんな短編小説や映画『デリカテッセン』なんかでも描かれてるし、田舎町で食人一家とご対面、というのはあの『悪魔のいけにえ』なんかが有名だったりするが、その食人一家がナチだった!?というのが新しいか。なんでナチが食人してるのかはよくわかんなかったけど!

というわけで主人公ご一行様は基地外食人一家により阿鼻叫喚の拉致監禁拷問虐殺三昧という憂き目を見ることになるわけだが、映画の紹介だと主人公らが凶悪強盗犯みたいな扱いで、これは犯罪者集団と基地外一家というカス同士のガチ対決みたいな映画になるのか!?と思って見てたら、主人公の皆さんはワルっちゃあワルだがせいぜいチンピラ止まりで、犯罪者だっていう設定はあんまり関係ないのね。大統領選で起こった暴動っていうのも本編とはそれほど深く関わってないし。まあ移民問題と右傾化とナチを絡めたんだろうけど、本筋に大きな影響与えているとは思えなかったなあ。

なにしろナチ一家の首謀者が、単に世迷いごとほざいているヨボヨボの変態ジジイでしかなくて、こんな棺桶に片足突っ込んでるジジイの言う事になんでご家族の皆さんは甘んじて服従しているのか今ひとつ伝わんないのよ。やはり同じ変態ならリー・アーメイぐらいの完璧あっち逝っちゃってる凄みが欲しかったよな。それにハイル・ヒトラー!とかいつ連呼してくれるのかワクワクして観てたけどそれも無くて、ナチ関係のレーティングの問題なんだろうが、これもちょっと淋しかった。ナチの残党みたいな爺さんなのに田舎で養豚しながら「純血だあぁッ!」とか言っててもボケ老人にしか見えんだろ。

ヒロインが妊娠してるっていう設定もその他の人間関係も特に必要だと思えないものばかりで、結局それぞれの設定が物語に上手く反映されてない映画だったな。まあグヂャグヂャゲロゲロスプラッターは堪能できたからノープロブレムだけどね!どんだけ鬼畜なのよオレ!あとヒロインのカリーナ・テスタたんはモデル出身でヒスパニック系の美形で、彼女が豚の糞尿や泥や血糊でドロドロになりながらギャアギャア絶叫しつつ地獄の逃走劇を演じる様は頑張ってるなあ、と思った!

■フロンティア 予告編

■フロンティア・オリジナル・ポスター(グロにつき見たい方は《続きを読む》をクリックされてくださいやし)