- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2004/08/27
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ただそんな物語よりも目を惹いたのは、映画全体の陰気さだろう。登場人物たちは既にもう死せる運命が決まっているかのように暗く貧相な顔をしているし、舞台のアパートメントも老朽化に加えて改築工事中の殺伐とし雑然とした雰囲気が漂っていて気を滅入らせる。しかしよく考えると、この”貧相な人々”が”辛気臭い場所”で”不幸な目にあう”という、負のスパイラルとでも言いたくなるようなシチュエーションって、実はこの現実というものの惨めさそのものなのではないか。勿論現実には工具箱を持った殺人鬼はそうそう現れないが、それを事故や揉め事や疾病などの嫌らしいメタファーだと見るのなら、それは常に日常の中に偏在する姿なのだと言えなくはないか。
だいたい主人公の夫婦は新婚だっていうのにあんなボロアパート住んでるし、隣の住人でギターで騒音出してるパンク娘はDVに遭ってるし、ネットカメラで「美しくなった私を見て」とかやってるネーチャンとかいるし、そのネーチャンのカメラをハッキングして覗きをやってるエロ少年までいるし、この映画の登場人物はどうにもしみったれた日常をしこしこと生きている人たちばかりなのだ。
でもそんなこと言ってるこのオレのしょーもない日常も、実の所あれらのしみったれ具合と大差無いのである。まあ要するに、この現実世界も日常も、トビー・フーパーのグダグダなホラー映画と大して違わないじゃねえか、殺人鬼なんかはいないけれど、得体の知れない不安や欲求不満に苛まれながら生きてる所は一緒じゃねえか、なあんてことを思いながらこの映画を観ていたオレであった。