悪魔のいけにえ2(完全版)

もういちいち説明したくない極悪ホラーの金字塔『悪魔のいけにえ』の正統なる続編がこの『2』である。『テキサス・チェーンソー』も『(同)ビギニング』もリメイク&焼き直しなので、本当の”いけにえスピリッツ”を受け継いでいるのはトビー・フーパーが監督したこの『2』である、ということで皆さんよろしいであろうか。そしてこの『2』、以前¥1000という超廉価版で発売されていたのだが、今回特別完全版ということで¥4000ぐらいの値段で再発なんである。即ち完全マニア向けだ。そして¥1000の『2』を持っているにも拘わらずこの完全版も買っちゃったというのは誰あろうこのオレ様である。ちなみにロメロの『死霊のえじき』もDVD2枚持ってるよ!

なにしろ”1”がああいう作品だったから、この『2』はそれほど評判は高くない。というか、この『2』、殆どコメディなのだ。だが個別の作品としてみると見るべき所が多い上に、”1”と同じものを作りたくなかったという監督トビー・フーパーの心意気というかヒネクレた性格がなかなかに伝わってくる意欲作なのである。フーパーはあまりにも話題になってしまった”1”を壊したかったに違いない。そして出来上がった映画は実に壊れていて楽しい出来になっている。

なにしろ登場人物がみんなキチガイなのは前作と同じとしても、この『2』の狂気はコミックブックのようなスラップスティックな狂気なのである。まずはレザーフェイス、”1”では意思疎通不能の危険な猛獣であり化物であったが、今作では単なる力馬鹿の知恵遅れだ。おまけにチェーンソーを高々と頭上に振り上げるアクションの時はなぜかヘコヘコと腰を振るのである。ヒロインの股間にチェーンソーの歯を突き立てて興奮するシーンなどがあるのを見ればわかるように、チェーンソー=男根という、あからさまにフロイト的メタファーが描かれている。しかも今回はスーツ姿で登場だ!おまけにヘアスタイルが寝癖なのかなんなのか爆発している!この姿が実にもうコミカルだ!

これに対するはレザーフェイス一家に復讐を誓う連邦保安官デニス・ホッパーだが、これも映画が進んでいくうちに、単なる危ないオッサンでしかないことがバレてゆく。だいたいデニス・ホッパーで、危なくない訳が無いのだ。もうキチガイにはキチガイを、というやつである。何しろ今作いちの爆笑ポイント、それはデニス・ホッパーの腰に下げた二挺拳銃ならぬ二挺チェーンソー!これでレザーフェイスとチェーンソーのチャンバラを演じるのだ!それ以外の見せ場は「ウガーッ!」とか言いながらレザーフェイス一家の地下秘密基地の梁をチェーンソーでぶった切りしまくったりとかな!要するに破壊行為以外何にもしていないのだ!おっさん、あんたこの戦いが終わったらポケットから出した青いベルベットに頬ずりして「ママーッ!ママーッ!」とか喚くんじゃないだろうな!

あと特筆すべきはレザーフェイス一家チップチョップだかチュッパチャプスだかいうキチガイ!こいつはベトナム戦争だかの怪我で頭の一部がスチールプレートになったサイコ野郎だ!で、いつも鉤爪を持ち歩いていて、それを使ってスチールプレートと本物の肉の境目に出来るカサブタだか肉芽だかをこそげとってはペロペロと食っちゃうのだ!ぐっはぁ!メチャキモー!(嬉しい悲鳴)よくもまあこんな気色悪いキャラを考えたもんだ!(賞賛)もう一人レザーフェイス一家のミートソース親父はルックスこそ普通だが、レザーフェイスが屠った犠牲者をミートソースにして売り出し、死体を見ると「いい肉だ!いい肉だ!」「わしにはいい肉を提供する義務がある!」などと喚くという、やっぱりナイスなガイキチオジサンだ!そしてそんな彼等が根城にしている”レザーフェイス秘密基地”の地下納骨堂を遊園地にしちゃったような悪夢的な美術がまた秀逸!この美術だけでも見る価値があるだろう。

惜しいのは主人公であるヒロインがいまひとつ魅力が無かったという所かな。しかしそんな彼女にもラストとんでもない見せ場があり、その唖然とするほどの馬鹿馬鹿しさには拍手喝采せざるを得ない!あれは笑うところなんだろうな!トム・サビーニの今見ると実にちゃちい特殊効果も味があっていいね。という訳でホラーファン必見の作品だからスプラッタ好きの皆は是非観てね!

■LEATHERFACE :Texas chainsaw massacre 2 Music Video