テキサス・チェーンソー・ビギニング

伝説のホラームービー『悪魔のいけにえ』をリメイクした『テキサス・チェーンソー』の、その前日譚である。レザーフェイスの誕生と彼の基地外家族の成り立ち、”あの”ホイト保安官がどのように保安官になったのか、などが描かれ、例によって虐殺行為てんこ盛りの内容になっている。だがしかしそれ以外の部分で1作目『テキサス・チェーンソー』と何か違うのかというと、殆ど同じ内容だ!『テキサス・チェーンソー』をもう1回観直すのと何が違うのか判らないぐらい新鮮味が無い出来だ!
レザーフェイスの誕生も、出産シーンは描かれるが少年時代とかがある訳でもなくいきなりデカイ成りになって生肉工場で肉きり包丁振り回してるしな。確かに初めて電ノコに触れるシーンはぞくぞくきたし、ホイトに”そいつをうならせろ!つっこんでやれ!”とガナられて「初めての電ノコ殺し(はあと)」を行うシーンは「来た来た来た!」と盛り上がったけどね。それ以外はなんだか”前日譚”としての説明的な描写が続くだけで、そこに至るおぞましい原因だとか動機が明らかにされる訳では全然無いんだよね。要するに基地外家族は最初っから基地外だったというだけだ!一応物語の背景にはベトナム戦争をしてた時代だったというのと、それに先立つ朝鮮戦争の影が見え隠れはするが、そんな社会派の映画なんかじゃ全く無いです、ハイ。
そして今回の犠牲者の皆さんはベトナム戦争に召集されたワカモノ達とその恋人ということになるが、みんな今風のルックスなワカモノな為に時代の雰囲気が伝わってこないのも難在りだな。しかしホイト保安官役のリー・アーメイが”前日譚”だというのに前作よりも老け込んでいるのがなんだか笑ってしまったが、それは別としてもこのリメイク版の本当の主役ってレザーフェイスじゃなくてホイト保安官なんだよな。これって観た人は皆思ってるんじゃないかな。今回のレザーフェイスって単に図体のデカイ馬鹿ガキって感じで狂気や禍々しさが薄いの。
だからいっそのことレザーフェイスで続編を作るんじゃなくて、ホイト保安官を主人公にしてダラダラと続編作り続けるというのもいいかもね。そういうわけで次作はあいつの朝鮮戦争時代の血塗れの日々を描いた『ホイト保安官ビギニング』『ホイトたちの沈黙』『ハンニバルホイト』『ホイト・ドラゴン』というタイトルで企画を練るというのはどうだろう。なんか聞いた事のあるタイトルばかりだが、ホラー映画に二番煎じは付き物だ!
前作『テキサス・チェーンソー』については凡作という意見が多いがオレとしてはこれはこれで好きだったな。ホイト大活躍!というのもあったが、廃物感覚溢れる美術と撮影はとても見所があったのではないかと思う。それとやっぱりあのしつこさね。この『ビギニング』に足りなかったのは案外あのしつこさだったのかもしれないな。