ラッキーナンバー7 (監督:ポール・マクギガン 2006年 アメリカ映画)

冒頭、何処とも知れぬ空港の待合室でただ一人待つ男の元に車椅子の男(ブルース・ウィリス)が現れる。どことなく謎めいた雰囲気のこの男は、競馬のノミ行為にまつわるある悲惨な事件のことを語り始め…。舞台は変わってNY。一人の青年(ジョシュ・ハートネット)が友人のアパートに訪れるが友人は不在。そしてそこに現れたチンピラに友人と間違われ、暴行を受けた後ギャングのボスの下へと連れ出される。そのボスが青年に命令した事とは…。

緻密なパズルを解いていくような手堅い脚本が興奮を呼ぶクライム・サスペンス。友人と間違われたまま犯罪を命令されるジョシュ・ハートネット演じる青年のちょっととぼけた味わいがコミカルさを生み、物語が軽快に語られていく所が楽しい。ジョシュ・ハートネット、それほど意識した事はなかったがこの作品では好感度の高い俳優ぶりを見せる。これと絡むのがアパートの前の部屋に住んでいる女役のルーシー・リュー。これまでの作品でクールな女を演じてきた彼女は今回はどこか人懐こい愛らしい女の役柄で、いつも変な洋服を着て現れてはぺちゃくちゃまくし立てて主人公をやきもきさせる。「ルーシー・リューってこんなに可愛かったっけ?」と見方が変わること必至。ちょっと萌えました。そして悪玉の二人のボスをモーガン・フリーマンベン・キングズレーが演じるが、この二人がそんなに凶悪に見えないところがちょっと難だったか。さらに合間合間で現れる謎の男、ブルース・ウィリス。カツラしてます。いつものように存在感はあるけれども、ちょっとデクノボウっぽかったかな?彼はすましているよりもワアワア活劇をやっているほうが似合っているような気が。

物語のことはどこをどう書いてもネタバレになりそうで触れられないのが残念!オープニングに挿入される殺人事件のシークエンスや、ブルース・ウィリスの語った事件などが物語の本筋にどう関わってくるのか推理しながら見るのがこの映画のキモとなるが、半ばぐらいでだいたい物語の真相が予想できて来るかな?それでも、軽快なテンポと登場人物達の魅力、そして伏線の最後のピースがどこに当てはまるのかが気になって最後まで見せる映画になっています。前半はジョシュ・ハートネットルーシー・リューのロマンチックな掛け合い、そしてなんだか間抜けなギャングたちの行動でサクサクと見せていきます。事件の核心へと触れてゆく後半では流れが変わって人間のダークな側面と悲痛な運命が描かれます。このいろんなカラーを見せる構成が映画に広がりを持たせ、楽しめる作品として仕上がっていると思います。

時代設定が1970年代ということらしいけれど、部屋の内装や調度がどこかハイパーレトロなくどいデザインで、それが逆にお洒落にさえ感じさせてしまうところがまた目に楽しかったです。ただ、ブルース・ウィリス演じる男の”そもそもの動機”が希薄で説得力がなかったのが残念かな。それを除けば脚本は実によく練られていて、「品行方正なタランティーノ」といった味わいさえありました。推理小説などが好きな方は楽しめるんじゃないでしょうか。

■ラッキーナンバー7(原題:lucky number slevin)トレイラー