『諸星大二郎展 異界への扉』を見に行った。

f:id:globalhead:20210911165844j:plain

今日は三鷹市美術ギャラリーで開催されている『諸星大二郎展 異界への扉』に行ってきました。

開催は前から知ってたんですが、三鷹まで行くのがなんだか億劫で今まで先伸ばしにしていたんですよ。しかしこの土曜日、いい具合に時間が空いたので、「こりゃ観念して行かなきゃ!」と自らに発破かけて出かけることにしたんですね。いやあそれにしても新宿から中央線乗って吉祥寺方面行くのなんて10年振りぐらいかもしれない……。

諸星大二郎とオレとの出会いと言えば、週間少年ジャンプで手塚賞を受賞した『生物都市』ですね。オレはあの作品、ジャンプでリアルタイムで読んだんですよ。相当の衝撃作でした。木星の衛星イオから持ち込まれた謎の細菌(?)により、生物と無生物とが融合してゆくというお話なんですが、人間も街並みもなにもかもが合体してチーズのようにドロドロととろけてしまった光景、というビジュアルのショッキングさ、意味の分からない怖さはトラウマ級でしたね。

その後の『妖怪ハンター』『暗黒神話』『孔子暗黒伝』『マッドメン』と、他の追従を許さない鬼気迫る作品を連発、長編のみならず短編においても鋭利極まりない作品が並び、もはや日本漫画界の至宝と呼ぶべき漫画家と上り詰めました。その題材は多くは中国・日本を中心とした神話、宗教、思想、民話伝承、古典文学から採られ、伝説として残された物語に諸星流の大胆な切り口でもって恐るべき世界を創り出していったのです。なにより諸星作品は抽象的に留められたそれら題材を生々しいほどに具体化し、そこから導き出される異界の光景をひたすら迫真的に描き切るという凄みがあったんですね。

今回の『諸星大二郎展 異界への扉』では、それら諸星の名作群の生原稿を惜しげもなく大量に展示し、「諸星ワールド」の深淵を見せつけます。「漫画で読んだから一緒でしょ?」と言うなかれ、コミックの判型より大きく描かれている生原稿はそれだけでも迫力満点、記憶に残るあのシーンやこのシーンが、作者の息づきまで感じさせるほどに圧倒的に迫ってきます。特に超ド級の問題作にして大名作『生命の木』の「おらといっしょにぱらいそさいくだ!!」のあのシーンの生原稿を見たときは震えました!

f:id:globalhead:20210911195741j:plain

そして展示はそれだけではなく、諸星作品の原典となった古今東西の貴重な書籍・図説、土器や古器、ロケーションとなった関連地域の写真なども同時に展示され、「諸星ワールド」を立体的に俯瞰するのを可能にしているんですね。逆に、よくもまあここまで集めたなあと、企画した美術員さんの意気込みに舌を巻くほどでした。それは「虚ろ舟」で知られる『漂流記集』であったり、妖怪好きにはお馴染みの『稲生物怪録絵巻』であったり、はたまたミルトン『失楽園』の挿画であるジョン・マーティンの版画であったりするんですよ。話には聞いたことがあるあの原本の「ホンモノ」が展示されているとはびっくりでしたよ。

f:id:globalhead:20210911200704j:plain

漂流記集

f:id:globalhead:20210911201113j:plain

稲生物怪録絵巻

f:id:globalhead:20210911201836j:plain

ジョン・マーティン 禁断の果実をすすめるエヴァ

そんなわけで大満足の展示会、それほど大きな規模ではないだろうと思っていたら、たっぷり2時間も眺め倒していました。なお、会場には「諸星グッズ」も多数販売されていて、諸星ファンなら入手したくなること必至でしょう。でもまあ、おどろおどろしい物の怪のプリントされたTシャツは少々難易度高いかとは思いますが……。

f:id:globalhead:20210911165905j:plain

f:id:globalhead:20210911165914j:plain

f:id:globalhead:20210911165924j:plain