■Main Tera Hero (監督:ダヴィド・ダワン 2014年インド映画)
やんちゃで能天気な若者が、ラブラブの彼女がいるにも関わらずマフィアの娘に見初められてさあタイヘン!?というお話であります。
主人公のシーヌー(ヴァルン・ダーワン)はちょいとお馬鹿だけれど腕っ節は滅法強く、持ち前の調子の良さから機転の利く大学生。そんな彼は学校一の美女スナイナー(イリヤーナー・デクルーズ)に一目惚れしたが、同じくスナイナーを追い掛け回す悪徳警官ネギ(アルノーダイ・シン)と対立する。しかし同じお馬鹿だけれどシーヌーはネギより一枚上手、徹底的にやり込め見事スナイナーの心を掴む。だがそんな幸せも束の間、スナイナーは何者かに誘拐されてしまう!?誘拐したのはタイのマフィア・シンガル、そしてその目的はシーヌーに一目ぼれした娘のアーイシャー(ナルギス・ファクリー)と彼を結婚させることだった!果たしてシーヌーはスナイナーを救い出せるのか、はたまた超美人のアーイシャーと結婚してしまうのか!?
ムキムキの半裸をさらした主人公が、薄物着た美女を両手に抱えにんまり笑っているという、真っ赤な夕日の沈む地平線の彼方までアホ丸出しの映画ポスターを見た時に、「あー、これはナシだな」と思っていたんですよ。だがあまりにも臆面の無いその軽さに、「いや、実はやっぱり何かあるのではないか」といらない深読みしてしまったんですよねえ。そして実際に観たこの作品、…いやー、「第一印象を信じるべきだった…」とうちひしがれ頭を抱え後悔の念に嗚咽が止まらない、真っ赤な朝日の昇る地平線の彼方までしょーもない展開を見せてくれるのでございますよ皆々様よ…。
なんかもうねぇ、ひたすら軽い演技を見せる主演のヴァルン君のしたり顔にイラッ…とさせられるのですよ。そのヴァルン君がなんだか知らないけどやたらめったら喧嘩に強く、いつでもどこでもちょちょいのちょいと相手をのして得意顔を見せるのにまたもやイライラッ…とさせられるのですよ。そんなバカアホマヌケ原始人のくせして意中の美人はコロッとあっけなくモノにしちゃうその芸の無い簡単さに再びイライライラッ!とさせられるのですよ!ヴァルン君が相手をやり込めるたびに「アイムバァーッド(オレってワルだぜ?)!」といちいち曲が流れるんですが、これがまた鬱陶しくて…。オレ程度のインド映画「にわか」でもすぐわかるインド映画ネタがあちこちに散りばめられているのも単に安易にしか見えないし、こんな具合に映画前半はどうにもイージー過ぎる物語展開でかなーり退屈だったんですが。
ところが後半、マフィアに恋人を誘拐され、マフィアの娘と無理矢理結婚させられそうになる、という展開を迎えてから、物語は結構面白くなっていきます。あまりに馬鹿馬鹿し過ぎて「ああこりゃマンガなんだな」と納得しちゃうんですね。観ているこっちも開き直れちゃうんですよ。ここからは一転ヴァルン君、腕っ節の強さは隠し通し、口八丁手八丁の悪知恵で、様々な難局を乗り越えてゆくんですね。こういったトーンの転換が「えっこれどうなっちゃうの」という興味を掻き立てさせ、面白さに繋がったのでしょう。まあ実際の所、このシチュエーション自体なんだかどこかで観たことがあるような気がしたんですが、タイでマヌケなマフィア相手に口八丁手八丁ってこれ、サルマン・カーン主演の映画『Ready』(レヴュー)そのまんまじゃないかとは思うんですけどね。サルマン・カーンといえばこの映画、物語に時々で出てくる喋る神像の声、これってサルマン・カーンさんがやってるらしいですね。