NYブロンクスのヤンチャな高校生たちを描く青春ドラマ〜映画『ウィ・アンド・アイ』

■ウィ・アンド・アイ (監督:ミシェル・ゴンドリー 2012年アメリカ映画)


この映画、ニューヨーク・ブロンクスの高校生たちが、バスに乗って下校する、ただそれだけの様子をじっくりと追ってゆく青春ドラマなんですね。監督は『エターナル・サンシャイン』『ムード・インディゴ/うたかたの日々』のミシェル・ゴンドリーなんですが、ゴンドリー監督のいつものポップでトリッキーな映像表現は押さえられ、なんだかドキュメンタリーでも見せられているようなリアルでブキッチョなアメリカ高校生の生態が描かれてるんですよ。キャストも実際の高校生を使っているようですね。
で、この高校生どもっていうのがヤンチャでねー、大人しい子もいることはいるんですが、やっぱりどうしても悪ガキ連中のほうが目立っちゃう。お前らちょっとガキ過ぎね?っていうぐらいDQNな奴らがわいわい騒いで級友や一般のお客さんにちょっかい出して迷惑がられてる。ここらが描写される冒頭は若干イラッとさせられたんですが、もちろんそんな子ばかり描いているわけじゃなくて、高校生によくあるような恋や友情や将来の夢や、それらに対する悩みなんかも並行して描かれる。そして時間が経ちバスから一人また一人と降りてゆき、人数が減ってくると、今度はちょっとしゅんとして、段々自分の本音を語りはじめる…みたいな感じで物語が構成されています。
実際の所、高校生ぐらいの年代の子の生態とか全然興味ないし、ましてやアメリカの高校生が何をどう感じて生きているかなんてオレにとって全くどうでもいいことなんですが、この映画が本当に面白いのは、これら有象無象の高校生たちのドラマ全てが、基本的に走っているバスの中だけに固定されて描かれている、ということなんですね。狭いバスの中で、多人数のキャラをそれぞれ描き分けながら実際の時間の流れと同じ90分のドラマを作る、これ、パッと見はなにげないながら、カメラやキャラクターの位置を気にしながら、お話や会話の繋がりを見失いように撮影してゆく、ということをやっているんですよ。
だからゴンドリー監督らしい見た目のトリッキーさはなくとも、ゴンドリー監督自身は、こういった形の変則的な撮影を凄く楽しんでやってたんじゃないのかなあ、と思わせるし、その楽しさも伝わってくるんです。そして、バスに乗っている高校生たちの、ちょっとした記憶やら妄想やらは、きちんとゴンドリー監督らしいキッチュな映像の仕掛けを入れており、この出し惜しみされた映像が、やっぱり楽しいんだよなあ。そしてラスト、最後に残った誰かさんと誰かさんに物語が収束してゆくんですが、これ、ここまでのいろんな高校生たちの出来事や会話がきちんと絡み合ったうえでのラストシーンなんですよね!こういった構成の巧さも光る、地味に見えてやっぱりゴンドリー監督らしい映画でした。

ウィ・アンド・アイ [DVD]

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