「 海 に 行 け ば よ か っ た … 」〜映画『処刑山 デッド卍スノウ』

処刑山 デッド卍スノウ (監督:トミー・ウィルコラ 2007年ノルウェー映画


海に行けばよかった…浜辺でキャッキャと騒げるし!
海に行けばよかった…水着のネーチャンを拝めるし!
海に行けばよかった…海パン一丁でなんとかなるし!
海に行けばよかった…雪山みたいに寒くねーし!
海に行けばよかった…ナチスのゾンビに齧り殺されたりしねーし!

処刑山 デッド卍スノウ』である。雪山にウィンター・スポーツなどというクソ小じゃれた遊びをコマしに行ったボンクラ男女の皆さんが雪山に眠るナチスのゾンビにハラワタ掻き出され齧り殺されるという愉快痛快大爆笑ムービーである。ナチスもたまには粋なことやるじゃん?と認識を新たにした作品だ。以前『イングロリアス・バスターズ』を鑑賞した時「いいナチスは死んだナチスだ」としみじみ思ったオレであるが、この『処刑山 デッド卍スノウ』においては「死んだナチスは死んでもオモロ」ということが出来るかもしれない。死んでなおジークハイル魂を忘れてないんだね!でも銃撃つことは忘れてるところが流石にマヌケだ!

物語はゾンビ映画の基本を踏襲しつつも、この映画ならではのゾンビ演出が成されていて楽しめる。登場するゾンビはかつてこのノルウェーの地で悪逆非道の限りを尽くし住民から金品を巻き上げ逃走したドイツ軍兵士であり、死してなお奪った金品を守り続ける、という設定だ。なんでゾンビになっちゃったのかは一言も説明されて無いけどね!まあいわゆる貧欲の悪霊ってことなんだろうな。全員ドイツ軍服のゾンビっていうのは悪辣さがいや増して楽しいし、指揮官の命令で一丸となって襲ってくるゾンビ、ちゅうのも目新しいわな。それにこいつら最近のゾンビ映画みたく走って追いかけてくるだけじゃなくなんとぶん殴ってきたりするんだ!肩で息したりとかどんだけやる気満々なゾンビやねん!

さらにこの作品を愉快にしているのが中盤からの徹底的なブラック・ユーモア演出だ。恐怖(ないし暴力)と笑いは紙一重である、ということをよく分かっている人が書いたシナリオだなあ、と頷かせる。血と臓物と切り株にまみれつつもアホアホなシチュエーションに持っていく馬鹿馬鹿しさはかつてのライミ映画を髣髴させるだろう。この演出の冴え一本をとってもこの映画はホラーファンにとって"買い"であると思う。例えば登場人物の一人の「俺、ユダヤ系だからナチのゾンビは俺を齧って仲間にしようとは思わないんじゃね?」なんて台詞が実に楽しかったりする。東京でもレイトショー公開のみでもう上映も終わっちゃうけど、DVDとか出たら要チェックっすよ。

それにしても雪山を惨劇の舞台にしたこの映画、キャッチ・コピーが「海に行けばよかった…」だなんて全くどんだけ無駄にセンスいいんだオイ、と腹抱えて笑わせてくれる作品でもある。実は劇中でもゾンビに取り囲まれた主演者の一人がこの台詞を呟いており(字幕段階での意訳なのかもしれないが)、ここで劇場のあちこちで笑いが起こったことも御報告しておきたい。この「海に行けばよかった」というあまりにネタ過ぎるコピーに関してはトップダラー禍津さんの所の「『処刑山/デッド卍スノウ』のキャッチコピーが凄すぎる件」でとっても秀逸なエントリが読めるので皆さん是非御覧になってください。ちなみにこの映画、バンクーバー・オリンピックには協賛していません。