ゾンビは反政府主義者だ!珍しいキューバ産ゾンビ映画〜『ゾンビ革命-ファン・オブ・ザ・デッド-』

■ゾンビ革命-ファン・オブ・ザ・デッド- (監督:アレハンドロ・ブルゲス 2011年スペイン/キューバ映画)


♪ツンチャンツンチャカツンチャカ(サルサのリズムで登場)…皆さんコンバンワ、本日ご紹介致しますのはなんとキューバ初のゾンビ映画、『ゾンビ革命-ファン・オブ・ザ・デッド-』でございます。そう、あのカリブ海に浮かぶキューバ共産国キューバキューバ危機のキューバ、みんな大好き革命家チェ・ゲバラキューバでございます。タコの足のポチポチ、それはキューバンでございます。
この『ゾンビ革命-ファン・オブ・ザ・デッド-』、主人公は40歳にもなってニートこじらせてるバカ男、ファンでございます。だから「ファン・オブ・ザ・デッド」というタイトルなんでございますな。決して「死人のお楽しみ」ってェ意味ではございません。まあ死人の皆さんは生きてる人間かじって楽しんでたけどね!さてこのファン、いつものようにぐうたらな一日を愉快に過ごしておりましたが、なんと街にゾンビが大量発生、人々を次々にかじり殺し始めたのでございます。しかしそこは共産国キューバ、最初はゾンビなんぞとは誰も思わず、「また革命が始まって反政府主義者が暴れてるんだ!」なんて言っているのが可笑しいんです。そりゃあゾンビだろうが何だろうが共産国にとっちゃあ国家を揺るがす不遜な連中はみんな「反政府主義者」に違いない!
しかしさすがに大ボケ野郎の主人公も命の危険を感じ、同じニート仲間やオカマの知り合いなんぞというどこからどう見ても頼りなさそうな連中と結託し、共にゾンビどもを成敗しようとケツ掻きながら立ち上がるわけなのでございます。しかしそこは南国キューバ、動く死体がうじゃうじゃいるのになんだか倒し方も能天気、やることなすことドタバタの連続、仕舞いにゃゾンビとダンスを踊っちゃう始末でありまして、どうにもこうにも緊張感がありません。そうこの映画『ゾンビ革命-ファン・オブ・ザ・デッド-』、陽光降り注ぐ南の島で明るく楽しくゾンビを叩き殺すというコメディ映画なんでありますな。
そもそもゾンビを倒す武器なんて船のオールや魚を獲る銛やパチンコなんでございますよ。共産国だからモノがねーんだよ!さらに仲間がゾンビになってしまってさあ大変!というゾンビ映画のお決まりパターンに至っても、「ま、しゃーねーから」と言ってさっさとぶっ殺しちゃう、おまけにゾンビ倒すついでに嫌いだった奴までサクッとぶっ殺してノホホンとしている、そういうあまりにイージーかつ深く考える事の無いアホさ適当さが、このテのゾンビ映画ではあんまり見られない展開で面白いんですな。そして残酷描写がこれがまた、ギャグ交じりながらきちんと撮ってあるのですよ。そしてそれらの背景にあるキューバという国のライフスタイルを垣間見るのがまた興味深かったりします。
監督のアレハンドロ・ブルゲスはキューバ人ですが、やはりゾンビ映画が好きすぎて、ゾンビ映画どころかホラー映画すら珍しいというキューバ映画界でこんな映画を撮っちゃった、という所に並々ならぬ意欲を感じさせ、そしてそれはこの映画の完成度にもしっかり繋がっておりましたな。

ゾンビ革命-フアン・オブ・ザ・デッド- [DVD]

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