■ザ・スピリット (監督:フランク・ミラー 2008年 アメリカ映画)
ロバート・ロドリゲスにより映画化されたハードボイルド・バイオレンス・グラフィック・ノベル、『シン・シティ』の原作者であるフランク・ミラーがメガホンを取ったのがこの『ザ・スピリット』である。一応『シン・シティ』同様、グラフィック・ノベル作品が原作になっているらしい。初っ端から漂うバイオレンスな臭いと白黒の強烈なコントラストで描写されるその映像からは「おお!?『シン・シティ』の再来か!?」と一瞬胸ときめかされることだろう。ああ大好きだったなあ『シン・シティ』!やっぱジェシカ・アルバたん(ハァハァ)の腰ヘコヘコなダンス・シーン最高だったねハァハァ!他にもぶっ殺しまくりシーンがいっぱいあったしね!ぶっ殺しまくりバンザイ!やっぱ映画は暴力とエロだね!…しかし映画が始まってしばらくすると、そんな期待を裏切るかのような妙に不穏な空気を感じること必至である。「うーん…なんか変な映画…大丈夫なのかコレ?」
だいたいヒーローのコスチュームってのがさあ、目の周りを覆う黒いマスクだけで、あと帽子にスーツ、ちょっぴりここだけピンポイントでオシャレした真っ赤なネクタイ、というだけの井出たちで、芸が無いっていうかそれって大昔TVでやってた『グリーン・ホーネット』じゃね?と思ってしまう簡素さなんである。というか手ェ抜いてないかお前?さらにこの主人公、大昔街を出て行った元カノに未だに未練たらたら、湿っぽく回想してはグチグチブチブチと悔恨したり哀愁したりしているのである。もー!あんたヒーローなんだからもうちょっと男らしくしなさいよ!あたしあんたみたいなウジウジタイプが一番嫌いなの!…などとオネエ言葉で主人公を糾弾したくなるオレなのである。しかし激高するとオネエ言葉を使うというネタはこの間もやったが、こうもネタにするという事は実はネタではなくフモさん本当にウッキーッとなるとオネエ言葉を使うらしい。困ったものである。
そんな主人公と相対する敵のオクトパスもなんだかよくわかんないヤツで、悪の秘密結社のボスらしいのだけれども、これがまた狙ってるだろお前と言いたくなるようなどこまでもマンガ的な秘密結社であり、部下であるアホアホ・クローン兄弟がショッカーの戦闘員並みにポコポコと現れては死に、また現れては死ぬさまなんかはきっちりギャグとして作られている。さらにその首領たるオクトパスも、白装束の羽織袴を着ては刀を振り回したり、ナチス・ドイツの軍服に身を包んでは世界征服の野望に燃えてたりするコスプレマニアなのだ。いったいなんなんだこれは。こんな腰抜けヒーローとズッコケ悪党の戦いだから、世界の平和の為というよりはジャイアンとのび太がじゃれあっているようにしか見えなかったりするのである。だいたい便器で殴りあうってあんたたち…。全くこの映画、マジなのかコメディなのか分からなくなってくる。
しかしそんなトホホな主要人物達を囲む女性陣が、VFXの特殊効果もあってか誰もがエロエロな美女!やんややんや!こんな分かりやすいぐらい美人しか出てこない映画も無いね!そして主人公はこれら美女にモテモテなわけなんだね!監督のミラーさんあんた正直なヤツだよ!好みもあるだろうがこの美女美女美女のオンパレードを眺めるだけでも価値のある映画かもしれんぞこれは!?映画としてみるならばコミックを映画的に撮ったというよりは映画の画面でコミックを再現しようとしたっていう感じかな。だから世界観がかなり破綻してるんだけど、マンガと思えば納得できるんだよ。これってアニメ作家の押井守が撮った実写映画と似ているとちょっと思ったな。押井守の実写映画は詰まらんが、よく観ると実写にアニメの動きをさせようという試みをしてたりするんだよな。この『ザ・スピリット』は怪作だけどその辺の見せ方はユニークだったと思う。
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