エラゴン 遺志を継ぐ者 (監督:シュテフェン・ファンマイアー 2006年 アメリカ)

最初てっきり「エラゴン」とはそういう名前のドラゴンなのかと思ってたが、これは主人公の名前なのらしい。あと決してエラの張った人が主人公だというわけではないので念のため。で、最初に言っちゃいますが、これ、《スター・ウォーズ》のパクリでしょうなあ。オマージュでもインスパイアでもいいんですけど。でもここまでプロットを臆面も無く剽窃できるのって、やっぱり原作者がお子ちゃまだけありますなあ。

まあ《スター・ウォーズ》のプロット自体が古今の神話や伝説に影響されたものであり、決してオリジナルであるとはいいません。実は《スター・ウォーズ》自体があのSF界の巨匠、スタニスワフ・レムに「自分の作品のパクリだ!」なんて言われた経緯だってあるのです。松本零士氏なんてのも、ちょっとお株を落とした感もあると思いますが、《スター・ウォーズ》にはいろいろ言ってたようですねえ。でも所謂”英雄冒険譚”が何処か似て来るのは致し方ないのかもしれない。そこを《スター・ウォーズ》なんかは集合的無意識の集積とでもいうような伝説・伝承のエトスをいい具合に抽出していたと思うんですよ。それは《ロード・オブ・ザ・リング》でもいっしょだと思う。しかしこの《エラゴン》の拙い所は、要するに「バレバレやん」っていう所だと思う。じゃあばれなければそれでいいのか?というとそれでいいんだと思います。要するにもうちょっと巧くかっぱらって欲しかった。

どのぐらい似ているかというと、
・ワルモノから逃げるお姫様!結局捕まってしまうが捕まる前に”あるもの”を辺境の地に託す!
・田舎の若者が”あるもの”を手に入れる!「おおスゲエ」とか言っている間にワルモノの帝国軍が若者の家族を殺しちゃう!
・若者が頼るのは怪しげなおっさん!しかしオッサンはフォース魔法が使えるじゃないか!
・君が新しい希望だ!ええええええ!
・おっさんはかつてワルモノに滅ぼされたジェダイドラゴンライダー騎士のただ一人の生き残りだったんだ!
・当然ワルモノの親玉も元ジェダイドラゴンライダー騎士なのさ!
・若者はおっさんに師事してフォース魔法を覚えていく!
・無謀にもお姫様を助けに行く若者!しかしワルモノには歯が立たない!あわや!というところでおっさんが助けに入るが、ワルモノにやられて死んじゃう!
…いやあ、『エラゴン EPISODE Ⅳ 新たなる希望』と改題したほうが良くないっすか。

最後はクリーチャーどうしのドッグファイト(空中戦だぜ!)となるが、オレはいつ死んだおっさんの「フォースを使うのだ!」の声が聞こえてくるのかとわくわくしておりましたが、それはさすがになかった!まあこのドッグファイトシーンはとてもよいです。あとはというとLOTR劣化コピーを見せられているような映像で新鮮味がまるでなかったなあ。主人公がもともとはその辺のお子ちゃまだったくせに物語が進むうちに増長して偉そうな事言うのが癇に障りまくりました。人物描写は紋切り型で深みは全くないです。それとワルモンのルックスがLOTRの『”蛇の舌”グリマ』にそっくりなのも笑いを誘ってくれました。考えようによっちゃドラゴンは『ネバーエンディングストーリー』のファルコだしな!基本的にどのシークエンスでも「どこかで観たような」という感じがしまくりです。ゲーム世代のお子ちゃまが趣味で書いたライトノベルが間違って売れて映画化された程度に受け止めたほうが良いんだろうなあ。