サイレントヒル (クリストフ・ガンズ監督 カナダ・フランス映画)

ゲームの映画化ですが、監督が「ジェヴォーダンの獣」のフランス人監督クリストフ・ガンズ。「ジェヴォーダン〜」では非常にスタイリッシュかつ鮮烈な映像美を見せていた監督だけに、どんな映画になるか楽しみにしていました。監督自身もこのゲームのファンとかで、全作クリア済みとか。ええとオレは「1」で挫折し「2」を攻略本と首っ引きで何とかクリアし、3,4作目はやっておりません…。謎解きが苦手なんだよっ!
物語は見知らぬはずの町「サイレントヒル」の名をうわ言のように呟く娘を案じた母が「サイレントヒル」が実在する事を発見し、謎を解くため娘と共にその町へと訪れますが、そこは灰の降りしきるゴーストタウンだった…というところから始まります。どこかへと消え去ってしまう娘、ひたひたと忍び寄る怪しい影、不気味な化け物たち。次第に判ってゆく町の呪われた過去。
言ってしまえば町全体がお化け屋敷みたいなもんなんですが、現代美術の悪夢みたいなクリーチャーの造形や町並みのセットが、おぞましくもまた美しいのです。そのどれもが爛れた腐肉、乾いた白骨、錆び付き腐食した廃物のイメージで満たされ、死と腐敗の巨大なページェントを見せられているかのよう。映画「サイレントヒル」の見所はこの奇怪で幻想的なアートワークにあると思います。
物語はかなりゲームに忠実のようですが、そのせいか物語進行も、ヒントがある→その場所へ行く→探索→ボスキャラと遭遇イベント→次のヒントを貰う…といった感じが繰り返され、ゲーム的なのはご愛嬌といったところか。ただその探索もサイレントヒルと現実世界で二重に行われる為、物語に厚みを持たせています。
そしてなによりクライマックスが素晴らしい!ホラームービーの面目躍如たる、大量の血飛沫と飛び散る肉片に彩られた殺戮の嵐!肉体破壊の祝祭!クリストフ・ガンズ監督は日本文化通としても知られているようですが、このシーンでは大友克洋の「AKIRA」を念頭に置いたとのこと。なるほど、あの思い切りのよい破壊ぶりはここにあったか。
天才子役と騒がれている娘役のジョデル・フェルランドは、テリー・ギリアム監督最新作「ローズ・イン・タイドランド」の主役もつとめていますが、これ以前にTVシリーズ「スティーブン・キングキングダム・ホスピタル」にも出演していたとか。ううむ、これも見なきゃだな。
ゲームの映画化作品としては最も成功している映画だと思います。もともとゲーム自体が映画的な映像や演出を目指していたものだからでしょう。