バム・ファイト Vol.2

バム・ファイト vol.2 [DVD]

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「BUM=バム」とは乞食、ホームレスをさすスラングである。つまりこの夏を席巻する「スター・ウォーズ」「宇宙戦争」「妖怪大戦争」に続くSFX戦争もの、「ホームレス大戦争」なのである。(冗談)
一言で言うと「鬼畜ムービー」。アメリカの人気鬼畜TVプログラム、「ジャッカスJACKASS=まぬけ)」をあやかった、どこまでも荒涼としたサイテーのおフザケがこれでもかと展開される。路上のホームレスを拉致って川やゴミ箱に棄てたり、ヤク中がヘロイン打つ所を克明に写したり、クラック(コカインを加工し吸入度を強めたもの)を袋に詰めプールへ投げ込んで、クラック中毒の連中に競争でプールの中から探させたり、「オレは前歯を抜きたいんだああ」とか言ってる方に糸とブロックを渡してリアル前歯抜き映像を写したり、路上でウ○コさせたり、フルチンでレストランに乱入し拡声器でわあわあ喚いてトンズラしたり、もちろん路上のリアルガチンコバトルを撮影したり、その鬼畜ぶりは枚挙にいとまない。そして、全て、笑えない。ただただ壮絶に荒涼としているだけなのである。
直視などする必要なんか無いけれど、この糞みたいな現実はしかし、のほほんと暮らしているこの日常の裏に下水道の様に存在する。靴底の石のように違和感を残す。はっきり言って下劣な映像ではあるけれど、なぜか魅入ってしまう危険な暴力性と破壊性と暗い自滅願望に満ちているように思う。
ラスト、「ホームレスをこのような映像として写すのは正しいのですか?」という質問が製作者に投げかけられる。「ホームレスを写す事が間違っているんじゃ無い、ホームレスを生み出すこんな社会が間違っているんじゃないか」と製作者は反論する。言い訳にしか聴こえないけれど、ある部分は正しい。自分がいつホームレスになってもおかしくはないという社会情勢への不安はあるのだと思う。ホームレスという存在に臭い物として蓋をして忘れる事の危険性もあると思う。社会の階級化が広がり、貧富の差が間違いなく生まれている中で、下層階級として虐げられ差別される恐怖がここにはある。そして差別された者はより差別しやすい者を迫害するのだ。共闘などはしない。ここには差別の救いがたい連鎖があるだけで、だから全ては荒んでいるのだ。
例えば日本で何故ホームレス殺人などがあるかといえば、それは子供達が生命の尊厳を教育されずに云々という言い方は間違っている。ホームレスを殺す子供達は実は肌で感じているのだ、彼等が受ける教育の中にある密かな選民意識と階級制度を、貧富というものが何を得られ何を得られなくするかを。幸福の基準は既に定められ、その基準を満たさないものは幸福では無い、という『制度』を。そして、そこから落ちこぼれる事の恐怖を。落ちこぼれる恐怖が既に落ちこぼれた者へと向けられる、即ちそれがホームレス殺人なのだ。ここにも階級化とその差別の救いがたい連鎖が存在しているのだと思う。