アーティゾン美術館『生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 展』を観に行った

アーティゾン美術館に行ってきた

先日は京橋にあるアーティゾン美術館に『生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 展』を観に行きました。

アーティゾン美術館は東京駅を降りて10分ほど歩いた場所にあるのですが、以前はブリヂストン美術館と呼ばれていたものを、ビル改築に伴って2020年にリニューアル・オープンしたんですね。ブリヂストン美術館はずいぶん昔に行ったことがあるのですが、リニューアル後は初めてなんですよ。といったわけで、今回は展覧会それ自体とリニューアル後の美術館を観たくて足を運んでみました。

この美術展で作品が展示される青木繁(1882-1911)と坂本繁二郎(1882-1969)はともに現在の福岡県久留米市に生まれ、同じ高等小学校で学び、同じ洋画塾で画家を志した、ということなんですね。実はそれほど詳しく知らなかったんですが、青木繁は代表作『海の幸』を観たら「ああこの人か!」とすぐ分かりました。一方、坂本繁二郎も不勉強ながらやはりよく知らない画家で、いわば今回初体験となります。今回の美術展は二人の画家の生誕140周年を記念し、250点余りの作品で構成されています。

青木繁

青木は東京美術学校(現東京藝術大学)在学中に画壇にデビューし、美術と文学において浪漫主義的風潮が高まる時代のなか、《海の幸》(1904 年)で注目を集め、若くして評価されます。しかし、華々しいデビューとは対照的に、晩年は九州各地を放浪し、中央画壇への復帰も叶わず短い生涯を終えました。《公式サイト》より

青木繁と言えばやはり《海の幸》、《わだつみのいろこの宮》でしょう。どちらも重要文化財に指定されています。美術の教科書にもよく載っているのでご存じの方も多いんじゃないかな。青木は日本の神話を題材に幻想的でドラマティックな作品を得意としていたようです。筆致は力強くどこかプリミティブで、色彩は当時の「日本の洋画家」の典型だったのでしょうか、脂色に暗く、光を感じさせません。肺炎により39歳の若さで夭折した伝説の画家という事ができるでしょう。

《海の幸》1904年

《わだつみのいろこの宮》1907年 

《大穴牟知命》1905年

天平時代》 1904年
坂本繁二郎

坂本は青木に触発されて上京し、数年遅れてデビューします。パリ留学後は、福岡へ戻り、87歳で亡くなるまで長きにわたって、馬、静物、月などを題材にこつこつと制作に励み、静謐な世界観を築きました。《公式サイト》より

一方、坂本の作品は年代ごとに様々にテーマとするところが移り変わってゆきます。初期の頃は当時の日本の日常風景を切り取ったある意味牧歌的なものですが、渡仏後は蒼褪めた色合いに統一された、空気のように「もやっ」とした作風に変化してゆきます。中期は牛や馬の動物、能面などの静物画を描き、晩年には月をテーマにした作品を描いています。なにかどれも涅槃の向こうの光景のような、静謐で非現実的な作品が並びます。

《夏野》1898年

《貼り物》 1910年

《熟稲》 1927年

《放牧三馬》1932年
石橋財団コレクション展

常設展も充実していました。基本的に1フロアのみの展示でしたが、その時によって展示を変えているのでしょう。ピカソポロック、モネやクレーなどの作品、デュシャンやフォンタナなどの現代美術とは別に、エジプトやギリシャの古代遺物が展示されていたのが非常に印象的でした。それと、今回は特集コーナーとして「田園・家族・都市」をテーマにした作品が展示されていましたが、その中の細微を極めたエッチング作品には目を見張りました。

アーティゾン美術館はアプリを利用した音声ガイドを行っており、また過去の美術展に容易にアクセスできる端末を用意しているなど、画期的な試みが成されている部分が面白かったですね。新築の美術館という事で美術空間としてもなかなかに新鮮でした。

《女の顔》パブロ・ピカソ 1923年

《ディエゴの胸像》アルベルト・ジャコメッティ 1954-55年

ヘラクレスケロベロス図》ギリシア・紀元前520-510年頃

《神牛》エジプト・紀元前1279-1213年頃

《雪の発電所岡鹿之助 1956年

《クイリナーレ広場のディオスクーリ像》ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ

勝利の女神》クリスチャン・ダニエル・ラウホ