滅亡した世界でバットマンとジョーカーの最後の旅が始まる/『バットマン:ラストナイト・オン・アース』

バットマン:ラストナイト・オン・アース / スコット・スナイダー (著), グレッグ・カプロ (イラスト), 高木 亮 (翻訳)

バットマン:ラストナイト・オン・アース (ShoPro Books DC BLACK LABEL)

「これがバットマンの最後の旅になるかもしれない……」 突如ゴッサムシティに出現した、自身の遺体をなぞるかの如く描かれたチョークラインの謎を追い、クライム・アリーへたどり着いたバットマン。そこで見つけた少年に銃を突き付けられた瞬間――彼はアーカムアサイラムで拘束されていた。一瞬のうちに月日が流れ、荒廃した世界に困惑するバットマン。彼は失った自身の過去、そして変わり果てた世界の謎を探るために世界を旅することになる。この奇妙な旅路の果てには、いったいどんな結末が待ち受けているのか――。

バットマン:ラストナイト・オン・アース』は滅亡に瀕した未来の地球で、バットマンとジョーカーが共闘し最後の戦いへ赴くという物語である。 バットマンとジョーカーが共闘!?という事自体びっくりさせられるが、なんとこのジョーカー、表紙を見ていただくと分かる通り、首だけの存在として生き永らえているのだ。いったいジョーカーに何が、というより地球はなぜ、誰が滅亡の危機へと追いやったのか?

アーカムアサイラムで目覚めるブルース・ウェインバットマン、というミステリアスなオープニングに始まり、破滅した世界を彷徨うバットマン&ジョーカー(首だけ)という展開がまたいい。首だけのくせにジョーカーは笑えないジョークを延々くっちゃベリ、あろうことか「俺のことロビンって呼んでくれよ!」としつこくバットマンにせがむのがまた可笑しい。というかこの二人、ファンの誰もが気付いているがもともとがコインの裏表、切っても切れないコンビであり腐れ縁同士であり、遂に世界の終わりの日にこうして二人行脚に出るとは「ああやっと二人はお互いの気持ちに気が付いたのか」と思わないでもない(ジョークだよ)。

ところでバットマンは破滅した世界で目覚める直前の記憶を失っており、なぜ世界がこのような状態になってしまったのか思い出すことができない。彼は世界を旅する中、まだ生き残っていたヒーローたちと出会い、彼らがバットマンの旅を助けることになる。だが生き残った彼らですら破滅の原因となった恐るべき存在と対決する意思を既に失っていた。奇妙なのはバットマンは若いままなのに彼らヒーローは一様に年を取っているということだ。それはなぜなのか?という展開だがこの辺り、なぜかエヴァンゲリオンぽくもあり個人的にニヤリとしたりとか。

とまあ結局、地球の滅亡が関係あるにしろ関係ないにしろバットマンとDCヒーローたちが結託して謎に満ちた究極の敵を倒しに行く、という定番の展開になるのだが、究極の敵の正体が早い段階で予想ついてしまうのはちょっと惜しかったかな。それはそれとしてジョーカーが要所要所で美味しいところを持っていくのが可笑しくて、やっぱジョーカーサイコー、と思わせてくれる作品でもあった。

バットマン:ラストナイト・オン・アース (ShoPro Books DC BLACK LABEL)

バットマン:ラストナイト・オン・アース (ShoPro Books DC BLACK LABEL)