双子姉妹の奇妙な恋の行方〜映画『Sharmeelee』

■Sharmeelee (監督:サミル・ガングリー 1971年インド映画)


瓜二つの双子の姉妹が一人の男性との結婚を巡って仲違いし……という1971年にインドで公開されたロマンス作品です。しかしこの物語、こんなよくあるような設定から始まるにもかかわらず、後半から荒唐無稽な乱調ぶりを見せるのです。主演に『Kabhie Kabhie』(1976)でも共演したシャシ・カプールとラーキー・グルザール。この作品ではラーキーが双子の姉妹を一人二役で演じているのが見所です。なお今回はネタバレ込みで書いておりますのでそういうのが苦手な方はご遠慮ください。

《物語》カミーニとカンチャンは双子の姉妹(ラーキー:二役)。瓜二つの二人だったが性格は正反対。姉のカミーニは引っ込み思案で妹のカンチャンは活発な娘だった。ある日カンチャンは雪山のロッジで軍人のアジット(シャシ)と出会い、お互いにほのかな恋が芽生えるものの、深く知りあう前にカンチャンは雪山を後にしてしまう。一方カミーニには結婚話が持ち上がり、相手の男性と会うことになるが、それは実はアジットだった。

アジットはカミーニをカンチャンと間違え結婚を快諾するが、そこにカンチャンが現れようやく双子であることに気付き、結局カンチャンとの結婚が決まってしまう。悲嘆に暮れるカミーニ。だが結婚式も近づいたある日カンチャンが暴漢に襲われ乗っていた車が大破、死体は発見されなかったが死亡扱いされる。姉妹の両親は一計を案じ、カミーニをカンチャンと偽らせアジットと結婚させてしまう。だが、カンチャンは実は生きていたのだ。

インド映画お馴染みのダブルロールものであります。この『Sharmeelee』、要するに双子の姉が妹の代わりに結婚させられちゃう、というお話なんですね。とはいえ、双子が幾らそっくりだからといって、相手の男に黙って違う相手と結婚させるって随分ヒドイお話だと思いません?これってインドじゃアリなのかあ?「まあ似たようなもんだし、そもそも似てるし」って、相当乱暴だよなあ。それに、妹の代わりになることで姉の存在は消えてしまう訳で、じゃあ姉の今までの人生はなんだったんだ、ということになっちゃうけど、親にとっちゃあ「娘なんて結婚させられればそれでいいんだよ!」ってことなんでしょうか。それと併せ、事故って死んだと思われていた妹は、生きていたんならなぜ「生きてました!」と言って親元に戻らなかったのでしょう。乱暴されて汚された身の自分はもう元の生活に戻れない!と考えちゃったのかなあ。

しかしこの物語の物凄い展開を見せるのがここからなんです。死んだと思われていた妹カンチャンは、闇社会に身を隠し、なんとスパイになっていたのです!いきなりの超展開ですね!よりにもよってなんでスパイに!?とは思いますが、以前からなんとなく怪しげな男と付き合いがあって、その流れってことらしい。で、監視カメラにカンチャンの姿が写ってしまい、それを見せられたアジットは「カンチャン(本当はカミーニ)がスパイの訳が無い!」と慌てふためきつつ、(カンチャンのふりをした)カミーニを問い詰めるんですね。一方本物のカンチャンはアジットとカミーニが同伴している姿を目にし、「あの女は私の幸せを奪った!」とブチ切れ、カミーニを亡き者にしてその後釜に収まろうと画策するわけです。いや、だーかーら、そんなこと思うぐらいならなんで最初から自分は生きていると名乗り出ないのかと……。

とまあ観ていてポカーンとしてしまうシナリオではありますが、ラーキーの一人二役演技がなかなかよくできていて、意外と退屈しないんですよ。それと、最初はカッコよく登場したくせに後半から豆腐メンタルの持ち主であることが発覚するシャシ・カプールのグダグダぶりが実に香ばしくてよいです。特に結婚式の時、相手がカンチャンではなくカミーニだと知った時の狂いっぷりは、『Satyam Shivam Sundaram』(1978)に出演した時に全く同じシチュエーションがあり、また『Kabhie Kabhie』でもやっぱり嫉妬でおかしくなってたりしていたので、イケメンのくせに精神崩壊キャラという実に美味しい役者じゃないかとしみじみ感嘆いたしました。