■Yes Boss (監督:アズィーズ・ミルザー 1997年インド映画)
シャー・ルク・カーン演じるサラリーマンが、出世を狙って上司の腰巾着となり、あの手この手でゴマスリまくるという、クレイジーキャッツの『日本一のゴマスリ男』をボリウッド・リメイクした作品です(もちろん大嘘です)。しかし天下のシャールクがゴマスリ男とは、なんとも世知辛いですなあ…(シクシク)。ヒロインはジュヒー・チャーウラー。監督であるアズィーズ・ミルザーはシャールク・カーンのデビュー作『ラジュー出世する』(1992)も監督していますが、ジュヒー・チャーウラーもこれに出演しており、いわば「ラジュー・カップル再び」ということでしょうか。とかいいいつつ実はオレ「ラジュー」観てないんですけどね(ヲイ)!
物語の主人公は広告代理店に勤めるラーフル(シャー・ルク・カーン)。彼は上司であるシッダールタ(アディティヤ・パンチョーリ)の命令になんでも「イエス、ボス!」と答えるイエスマンでしたが、そんなシッダールタの今度の頼みは美人モデルのシーマ(ジュヒー)との仲を取り持ってくれ、というものでした。今度も「イエス、ボス!」と快諾するラーフルですが、実はシッダールタは妻帯者、シーマを騙して我がものにしようとしていたのです。そんな罪悪感もあってかラーフルはシーマに嘘をつき続けることがだんだん辛くなり、さらに、そんなシーマを愛し始めている自分に気付くのです。
それにしてもこの物語、よく考えると結構エグイ話なんですよね。妻帯者のはずの広告代理店のボスが自分の所の広告で使ったモデルを部下を使って口説きに入るとか、妻帯者であることがバレたら今度は「女房は浮気しているひどい女で、自分は離婚するつもりなんだ!」とか嘘ぶっこいちゃったりとか、さらにモデルとの交際が妻にばれると「いやあれは部下の女房なんだ!」とまたも嘘をつき、部下であるラーフルとシーマに結婚生活しているふりをしろ!と強要したりしてるんですよ。全くどこまでも自己中な犬畜生野郎ですよね。
ラーフルもラーフルでボスの言うことにはモラルも考えずにハイハイ従って、あれやこれやと段取り組んじゃったり、ボスの命じるがまま偽の結婚生活を演じるため、シーマを家に呼び母まで騙してしまうんです。なんだよみんな鬼畜かよ!可哀想なのがモデルのシーマで、シッダールタには騙されるわラーフルには騙されるわ、なんだか知らないけどラーフルと偽の結婚生活始めちゃうわで翻弄されまくりなんですよ。シーマはいつもおろおろしながら「こんなことやっててホントにいいの?」と自問しているんですが、周囲に流されて言うなりになってるんですよ。しかしそれも彼女なりに本当の愛が欲しいと思っているからで、決して意志が弱いとかいうことでもないんですよね。
こんな具合に本当はヒドイ話ではあるんですが、それをあくまでコメディとして描くところにこの作品の面白さがあるんですね。実の所ボスであるシッダールタは一人で空回りしているだけで傍から見るとバカみたいだし、ラーフルも一見ボスの言いなりになっているふりをしながら段々とシーマを守ろうとし始めるし、この辺の化かし合いの様子がいい具合に笑いへと繋がってゆくんですよ。結局ラーフルにも葛藤があって、ボスの言うことも聞かなきゃならない、でもシーマを渡したくない、という部分であの手この手の策を練ることになるんですね。まあ全体的に男目線の作品で、女性が観たらなんだかなあ、と思われるかもしれませんが、ラーフルとシーマのロマンス展開は結構盛り上がるし、シャールクとジュヒーの嫌味の無い演技が好感なので、割と悪くないんじゃないかな。
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