『セーヌ川の水面の下に』『マダム・ウェブ』など最近ダラ観した配信あれこれ

セーヌ川の水面の下に』

セーヌ川の水面の下に(Netflix映画)(監督:ザビエ・ジャン 2024年フランス映画)

パリのセーヌ川に人食い鮫が出現しお洒落なパリっ子たちを貪り食っちゃうよ!というトンデモ系鮫映画である。人食い鮫がなんでわざわざフランスの河川にやってくるのかという以前に、そもそも海水魚である鮫が淡水の河川に住み着くという部分で訳が分からない。ところがちゃんと調べたらある種の鮫は淡水でも長期間生息できるのらしい。トンデモ系鮫映画だと思って観ていたら気付きを得てしまったという希有な体験である。

トンデモ系とは書いたが、実はこの映画結構出来がいい。冒頭のゴミに塗れたの海で鮫を探索するという異様なビジュアルがまずいい。人食い鮫がセーヌ川にいるらしいことが発覚する中盤までは割と地味に進行して退屈だが、「鮫の命を守ろう!」などとのたまう環境保護女が登場してから俄然面白くなる。こういうヤツが最初に餌食になるんだよな!と思ってたらその通りで、映画『インディペンデンス・デイ』で「宇宙人さんようこそ!」とかいうメッセージボードを掲げていた能天気な連中が真っ先にUFOの破壊光線で灰にされた時の小気味よさを思い出した。

物語はその後一気呵成、これでもかとばかりに殺戮とパニックが大爆発、鮫の存在を知りながらセーヌ川で強引にトライアスロン大会を開催するパリ市長の大馬鹿ぶりにより頂点を迎える。遂に軍隊まで登場し観ているこちらが蒼褪めてしまう驚愕のクライマックスまで、やりたい放題の素晴らしい鮫映画であった。

マダム・ウェブ(監督:S・J・クラークソン 2024年アメリカ映画)

つまんないとかおもんないとか散々言われた挙句興行成績が全く振るわずスーパーヒーロー映画の終わりの始まりとすら思わせた『マダム・ウェブ』だが、実際観てみたらそこそこに楽しめる映画で、言われるほど酷いものではなかったな。

物語はある理由によりスーパーヴィランに命を狙われた主人公キャシーと3人の少女が様々な危機を経てスーパーヒーロー能力に目覚めるまでを描いたもので、特に主人公キャシーの未来予知能力により、様々な危機を寸止めで切り抜けてゆくさまはなかなかにスリリングだった。未来予知とはいっても決して万能ではなく、危機の寸前でなければ気付けないという微妙に使い勝手が悪い部分が物語を面白くしているのだ。3人の少女もそれぞれに個性的であり、彼女たちが巻き起こしてしまうドタバタもまた楽しい。

とはいえこの作品、あくまで「3人の少女がスーパーヒーロー能力に目覚める”まで”」を描いたものでしかなく、「スーパーヒーロー映画」と呼び難い扱いの悪さがある。将来的にスーパーヒーローとなった少女たちのコスチューム姿はちらりとは描かれるにせよ、これがちょっと今一つのセンスで、これで映画1本とったとしてもヒットしなかったかもなあと思わなくもない。なにしろ面白く観られたことは間違いない作品だったので、いろいろと残念な気がしてしまう。