最近読んだコミック:その2 『ROCA:吉川ロカ ストーリーライブ』その他

ROCA:吉川ロカ ストーリーライブ/いしいひさいち

ポルトガルの国民歌謡「ファド」歌手を目指す天然女子高生と、その親友である乱暴者の同級生との友情を描く物語で、いしいひさいち氏が4コマ/8コマで展開するストーリー漫画となっている。非常に評価が高い作品で、よく読むブログのブログ主さんも大絶賛していたのだが、どうもオレはいしい氏の絵が苦手で今まで手が出なかった。しかしKindle Unlimitedに入っていたで読んでみたら、ギャグも含めたその圧倒的なストーリー展開と、優れたグラフィックに恐れ戦いてしまった。

いしい氏の絵が苦手だったのはその線の硬質さで、漫画として読める極限まで削ぎ取ったその線は、作画に秀でた者だけにできる簡略化なのだけれど、逆に強力な緊張感があって心情移入し難かったというのがあったのだ。しかしこうしてしみじみと見ると、コミカルなデフォルメこそあるがやはり笑っちゃうぐらい絵が上手い。くそう苦手だ(笑)。

作話がまた身震いしてしまうぐらい上手い。基本はギャグでありコメディタッチで進み、これは大いに笑わせてくれるのだけれども、会話や感情の遣り取りの中で浮き上がってくる登場人物の心情やキャラクターは、どれも細心かつ確固たる演出力で描かれており、その事細かさには鬼気迫るものがある。そしてなんと、思いもよらない怒涛のクライマックスを迎えて読んでいて呆然としてしまった。やはりいしい氏は怖い人なんだと思う。くそう苦手だ(笑)。

花の雨が降る ROCAエピソード集/いしいひさいち

『花の雨が降る ROCAエピソード集』は続編ではなく、『ROCA:吉川ロカ ストーリーライブ』の物語の合間合間を埋める形の追加エピソードを挿入した作品。いわば追補版とでもいうか。それでも、『ストーリーライブ』のラストがなぜああだったのかが説明されていてちょっとだけ溜飲が下った。主人公のその後がどうなったのかも読んでみたい気もするが、『ストーリーライブ』は実はあの終わり方が最も美しいという見方もできるし、その辺りは痛し痒し。

ミラーマン2D(4)/久正人, 円谷プロダクション

1971~72年に放送された円谷アクションヒーローTV番組『ミラーマン』を、久正人円谷プロダクションが50年の時を経てリブートさせたコミック。実はTV放送時には観ていなかったのだが(裏番組の『シルバー仮面』を観ていた!)、これはこれで十分懐かしい上に、久正人の手によってきちんと現代的にアレンジしている部分がとても素晴らしい。2次元世界の侵略者(インベーダー)とか魔法陣とかバディアクションである部分も楽しいが、なにより舞台が横浜を中心に展開しており、よく知った風景やモニュメントがちょくちょく登場する部分が実にイイ。

戦車椅子‐TANK CHAIR‐(5)/やしろ学

殺し屋養成学園最強の少年・凪が戦闘により植物状態となるが、殺意を感じた時だけ覚醒し兵器と化した車椅子で戦いを繰り広げるというSFバイオレンスアクション。この第5巻では殺し屋養成学園最凶の”先生”との戦いにより意識が戻らなくなった凪を、その妹が助けようと奔走するというもの。主人公・凪があまりにも強力なので例によって物語的に力のインフレーションを起こしていたが、その主人公を一旦退場させて物語を展開させた部分になかなかの技を感じた。

アオイホノオ (29) /島本 和彦

ホノオ君は念願の漫画家になれたわけだし、あとのドラマとしては憧れのプロ漫画家とご対面して大変興奮する様が描かれるぐらい。そこでテコ入れなのか謎の女性アシスタントを導入して物語を進行させているけれど特に興味をそそられないし、この漫画はもういいかな。

還暦子育て日記8 スマホを奪うな!の巻、還暦子育て日記9 お別れと子育ての夏の巻/渡辺電機(株)

『父娘ぐらし 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』の渡辺電機㈱先生が、その後の子育ての様子を綴ったコミック。現在Twitter(X)に掲載中で、それぞれが一コマずつ、一ヶ月分ほどの分量になったらAmazonの電書にひとまとめにして、100円で販売している(Kindle Unlimitedなら無料)。ただし発刊時には巻頭に数ページの漫画が描き下ろされている。渡辺先生の子育ても応援したいので今回も読んでみた。相変わらず楽しいし、子育ての厳しさを笑いに持ってゆく姿勢もとても素敵だし素晴らしい。