最近読んだコミックあれこれ:その1『ダンジョン飯 (13)(14)』『雨と君と(6)』

ダンジョン飯 (13)(14) (完結)/九井 諒子 

九井諒子のファンタジー&モンスターグルメコミック『ダンジョン飯』、13巻&14巻同時発売でこれにて完結、きっちりと大団円を迎えてくれてメデタシメデタシ。なによりもともとファンタジー設定が強固かつ抜群であったが、最終決戦のまとめ方やそもそも「魔」はどうしてどのように発生しこの世界に根付いてしまったのか?という説明とその解決編までしっかりしており、もうこのジャンルの第一人者と言ってもいいぐらい惚れ惚れとするストーリーテリングの冴えを見せつけていた。

さらに最終決戦のその後の世界の行方、冒険の真の目的である主人公ライオスの妹復活の結末までも余すところなく克明に描いており、それら全てを【ダンジョンで倒したモンスターを料理する】という作品本来のテーマときっちりリンクさせていて、この一切の手抜きの無さに舌を巻いてしまった。そもそもファンタジーとはその世界観の在り方、異世界の構築のあるのだが、作者は見事にそれを遣り遂げたと言えるだろう。

それをただファンタジー世界の探求ではなく、「メシ食わせろ!」とばかりにモンスター料理という変化球を盛り込みながら、にもかかわらず決してキワモノではなくファンタジーストーリーの新たな面白さを提供した部分に於いてもこの作品の魅力と価値は十分に存在する。その「ダンジョンで飯を食う」から始まった物語がいつしか世界の命運を賭けた戦いに発展するという物語の転がし方までが秀逸であり、正直ここまで壮大な物語になるとは思ってもみなかった。いやあ圧巻でした。

雨と君と(6)/二階堂幸

雨の日にタヌキを拾い、共同生活を始めることになった一人暮らしの女性の物語。タヌキは十分に可愛らしく描かれているが、それよりも小説家だという主人公の、どことなく孤独の陰が染みついたキャラクターが独特で、その彼女の「孤独な生活の豊かさ」がこの物語のメインテーマなのだろうと思う。そしてこういったテーマで一つのコミックが成立し、きちんと面白く描かれている部分が優れている。

とはいえタヌキと一人暮らしの女性の独白だけでは物語も行き詰まるだろうから、たまに他のキャラクターもぽつぽつと登場するが、今作では主人公の描いた小説をコミカライズする漫画家女性が登場することになる。で、この漫画家女性がこれまでの登場したキャラクターの中で一番しっくりきて、主人公ともイイ具合に噛み合っており、これはこれで新たな展開が生まれるといいな。

そしてタヌキはこういった人間関係の中でひとつの接着剤として機能しているのだ。タヌキというのは実は飼育が大変厄介な野生動物で、このコミックのように簡単に人に慣れることは無いのだけれども、とはいえそこをあくまでファンタジーとして、さらに登場するタヌキ自体もある意味ファンタジックな存在として描いている部分にも、一人のタヌキ好きとして大いに好感が持てる。犬でも猫でもなくタヌキであるというのは、ある種の非日常=ファンタジーを演出する為なのだと思うのだよね。