■映像研には手を出すな!(1)~(4)/大童澄瞳
アニメーション制作に打ち込む3人の女子高生を主人公としたコミック、ついこの間4巻が出たのを期に今回意を決してまとめ読みしたのだが、いやあ評判にたがわず実に楽しい作品だった。
3人の主人公はそれぞれ「設定厨」「キャラデザ」「マネージャー」と役割分担されその性格も実に鮮やかに区分けされている。彼女らが目指すのは「所謂アニメ」ではなく、「絵の動きに命をもたらす行為=アニメーション」であり、その理想は遥かに高い。現実の情景の中に主人公少女の創作物の妄想が入り込みそれが混然一体となってゆくという描写も「想像力」というものの在り方を実に巧みにグラフィック化していて画期的だ。そこには「創造すること」の喜びと労苦があり、それにひたむきに突き進んでゆく主人公らの姿がある。そしてこの作品自体も現実とはどこか違う架空の現実世界を舞台にしておりそれ自体が設定の中の設定とでもいうようなメタな趣がある。
あとひとつ面白いのは「女子高生が主人公」とはいえ3人ともどこか中性的であり、男性性や女性性が予め省かれていると言った部分だ。これは「高校生」という年代のドラマにありがちな思春期なアレコレを持ち込むことを排除しているという事だ。要するに性的な生臭さや生活感などのつまらないリアリティを持ち込まず、「創造することの喜び」と「想像力の発露」のみを純粋に描こうとしている。だから、「創作行為」というものに少しでも触れたことのある者なら、実にすんなり主人公の心情に共感できてしまう。そこが素晴らしい。
次第にドロドロと面白くなってゆく『プリニウス』、側近たちの姦計により皇帝ネロが狂い始め悲嘆と虚無の中で煩悶する。この辺りの史実知らなかったのでフムフム言いつつ読んでた。一方プリニウス様一行はクレタ島でミノタウロスと出遭い大騒ぎ。クライマックスではいよいよ大きな転換点が訪れそう。「世界七不思議」を盛り込みながら展開する物語がまた楽しい。
■ダンジョン飯(7)/久井諒子
新キャラ猫娘が物語を引っ掻き回しているが、このキャラ、ダンジョンRPG「ウィザードリィ」で言うところの「職業:忍者」なんだよな。こういう形で盛り込む部分が面白い。相変わらずファンタジィ設定は細かいしこなれているなこの作者。で、「飯」要素もおざなりになっていない。
戦国時代を舞台に影武者となった少女を描く『レイリ』第6巻、なんだかいつもより構成が淡白な上に話の流れが妙に早いなあと思ってたらこの巻が最終巻だったのかよ。ちょっと打ち切り臭いなあ。このクライマックスもホントはもっと話詰め込まれてたんじゃないかなあ。実は岩明の『ヒストリエ』よりも好きだったので少々残念。