最近読んだコミック

西遊妖猿伝 西域篇 火焔山の章(2) / 諸星 大二郎

諸星大二郎のライフワーク的作品『西遊妖猿伝』の「西域篇」が「火焔山の章」として新たに判を変え、その第2巻が異例のスピードで刊行である(まあちょっと薄くなったしなあ)。しかも3巻は今年秋発売予定とか宣伝打ってるじゃないか。嬉しいけど大丈夫か講談社。諸星先生を座敷牢に幽閉して執筆以外のことをさせずに新刊出してるんじゃないのか。というか、そうでもしなけりゃ絶対完結しそうにない作品だしな。だいたい執筆開始が1984年で、もうじき40周年ってどういう漫画なんだ。まあ1976年から執筆されて未だ未完だという『ガラスの仮面』には負けるけどな、いや、勝ち負けじゃないだろ!?そういや久々に『西遊妖猿伝』の第1巻を読んだけど、メチャクチャ黒々とした絵と怨念に満ち溢れた鬼哭啾啾たる物語で、うわ最初はこんな作品だったか、と改めて思い出した。最近の枯れた画質と展開も好きだけどね。どちらにしても物凄く引き込まれる物語だもの。 

DEATH NOTE短編集 /小畑 健、大場 つぐみ

いや、やっぱり『デスノート』は日本の漫画史に残っちゃうようなエポックメイキングな漫画だったと思うよ。連載当時はオレですらハマったもの。オレの部屋にある数少ないジャンプコミックの一つだしな(他は諸星の初期単行本)。いわゆるミステリードラマとしてダントツに面白かったし、これ書いたヤツ頭イイな、と普通に頭悪い感想持ったもんな。あとジャンプコミックにしては緻密を極めたグラフィックがとてもいい。その短編集となるのが今作なんだが、落ち穂拾い的なものであるにせよ、ファンなら買いってことでOKじゃない? 

ダンジョン飯(10) / 九井 諒子

ダンジョン飯 10巻 (HARTA COMIX)

ダンジョン飯 10巻 (HARTA COMIX)

 

ダンジョン飯』もいよいよ佳境となるが、それにしても1巻目が出たときにこれほどきっちりした世界観とある種心を抉る様な展開の物語になるとは思っていなかったな。そもそも作者の九井諒子がファンタジーに対して圧倒的な造詣を持ちそれを100%活かしながら作者のほんわかしたテイストでまとめてある部分で面白い作品なんだが、話が進むにつれほんわかの陰に結構残酷な設定や展開が侵入してきて、なおさら侮れない漫画家だという気がしてきた。この10巻では遂にラスボスたる狂乱の魔術師と対峙することになる一行だが、この狂乱の魔術師自体究極の絶対悪というのものではなく脛に傷持つ悲しい存在であることが描かれなかなかに一筋縄にはいかないんだ。これまだまだ続くんじゃないかな?

ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル / 九井 諒子

とまあそんなわけで勢いで『ダンジョン飯』の設定資料集買っちゃったんだが、これが単なるファンブックに留まらない恐るべき充実ぶりで、想像以上に素晴らしい内容だった。確かに『ダンジョン飯』ガイドブックではあるが、その緻密な設定の在り方は本編の漫画知らなくても、これだけで一つのファンタジー本ということで楽しめちゃうんじゃないのか?と思わせるほどだ。単行本と同じ判型でカラーページが多いので若干価格が高いのだが、本来この内容なら大型サイズの美麗本として発売されてもおかしくないような内容じゃないか。というか、これは大型本で読みたかったとすら思えたぞ。なにより、それぞれの主要キャラの立ち姿や登場モンスターがカラーで味わえる。絵は丁寧だし十分オリジナリティを感じる。これは大きな判型で堪能したかったぞ。どちらにしても非常に優れた設定集だ。ファンなら迷わず買いだ。

■女子高生VS (1) (2) / 氷川へきる

女子高生VS(1) (電撃コミックスNEXT)

女子高生VS(1) (電撃コミックスNEXT)

 
女子高生VS(2) (電撃コミックスNEXT)

女子高生VS(2) (電撃コミックスNEXT)

 

 女子高生にもアイドルにも興味はないし(一応アイドル漫画ということになっている)、作者の氷川へきるという方も存じ上げていなかったが、Twitterでフォローしている「奇書が読みたいアライさん(@SF70687131)」さんが取り上げていたのに興味を抱いたのである。だってアナタ、可愛らしい女子高生に交じって殺人イルカとか出てるんだぜ(しかも相当雑な描線)?で、読んでみるとこれが只者ではない漫画であった。一応女子高生アイドルが主人公の4コマなんだが、なんというか、お話が、壊れている。アイドルものなのにひたすら壊れた方向に爆走している。さっきの殺人イルカ(なぜかこいつもアイドル)のみならず、ロボットだの宇宙人だのゾンビだの人喰い怪生物だの訳の分からない魔人教団が登場し、さらに時々単なる穴埋めとしか思えないどうでもいい4コマが挿入され、作話はどこまでも破綻し、作者の「女子高生もアイドルも編集がやれって言うからやっただけで本当はメチャクチャなものを適当に描いてグハハとか笑いたいだけなんだあああ」という意欲というかヤル気の無さというか狂った方向性が咲き乱れているのである。ふざけた絵やギャグの雰囲気としては平野耕太が暴走した時のギャグ展開と非常に似ている。というかこれ平野が描いたんじゃね?とたまに思わされる。しかしこの作品、女子高生とアイドルの好きな読者には理解の埒外だろうし狂った漫画の好きな人には見た目で引っ掛からないという不幸な側面もある。とはいえなにしろ崩壊感覚に満ち溢れた楽しい作品であった。