■古風 / 冥丁
最近注目しているエレクトロニック・ミュージックは広島在住のアーテイスト冥丁(メイテイ)による3rdアルバム『古風』。日本の古い文化をモチーフに、和楽器や民謡の断片、映像音声をサンプリングし、それにピアノのメロディを乗せることで、ノスタルジックなジャポネスク世界を表出させている作品だ。それは単に”和風”を気取ったものではなく、むしろそういった”和風”を解体した後で再構築した、コンテンポラリーな味わいのエレクトロニック・ミュージックとして完成しているのだ。だがそうしたアブストラクトなコラージュと化した音の中から、それでも聴こえてくる”日本の音”にたおやかな情緒を感じ、存在しないいにしえの日本を幻視してしまう。非常にコンセプチュアルでありながら、高い独創性も併せ持つ優れた作品として完成している。CDを購入したのだが、紙製のジャケットやブックレットの意匠がまた凝っており、こういった部分にも周到なセンスが伺われる。今回のベスト・アルバム。
■Decision Time / Charles Webster
UKの古参ハウス・プロデューサー、Charles Websterによる19年振りともなる新作アルバム。曲はハウスのみにとどまらずダウンテンポやアンビエント・テイストのものなど変幻自在の豊かさに満ち、1曲1曲に深い味わいのあるメロディとヴォーカルが聴ける非常に完成度の高いリスニング・アルバムとして完成している。お勧め。
■Inner Song / Kelly Lee Owens
看護士からミュージシャンに転職したというユニークなキャリアを持つ英ウェールズ出身のプロデューサー/シンガー、Kelly Lee Owensの2ndアルバム。柔らかな感触のミニマル・テクノとドリームポップが融合したサウンドに囁くようなヴォーカルがかぶさる非常にキュートな1枚。
■Maybe We Could / Kllo
オーストラリア・メルボルンのエレクトロ・デュオKlloによる2ndアルバム。バラエティに富んだ楽曲と親しみやすいメロディ、陰影のある女性ヴォーカルが聴かせるポップな1枚。
■Suddenly / Caribou
Calibouのアーティスト名で知られるカナダ人プロデューサー、Dan Snaitによる6年振りのアルバム。メリハリのあるエレクトロニック・サウンドにメロウなヴォーカルがかぶさり豊かな情緒性を感じさせる作品。
■Fading / Pole
ミニマル・ダブのベテラン・プロデューサーPoleの5年振りとなるアルバム。アンビエントなダブ・サウンドにジャズやミニマルのテイストが加わった作品。
■Sweet Company / Jabu
ブリストルを拠点に活動するダウンテンポ/トリップ・ホップ・トリオJabuの2ndアルバム。メランコリックなメロディの中に夢見る様な淡いヴォーカルが現れては消えてゆくサウンド。