ロックよもやま話:オレとザ・フー

《目次》

オレとザ・フー

最近突然ザ・フーのことを思い出し、幾つかの主要アルバムを入手して聴き入っていた。ザ・フー、60年代半ばにイギリスでデビューしたロックバンドであり、当時ビートルズローリング・ストーンズと並んでイギリスのロック3大バンドとも言われていたという。デビュー時4名だったメンバーは既に2名が鬼籍に入り、現在残りの2名で活動を続けているのだが、最近リリースしたアルバムを聴いたら嘘だろってぐらい元気が良い上に、アルバムクオリティすら高い。その2名、ロジャー・ダルトリーピート・タウンゼントはそれぞれ79歳と78歳だっていうんだから、もう驚くしかない。

オレとザ・フーとの出会いは実は相当の昔、そもそもオレが生まれて初めてロック・ミュージックというものを聴き熱狂の渦に放り込まれた頃にまで遡る。いつかって言うと中学生の頃だから、もう45年以上も前じゃないか!なんたること!とはいえオレが生まれて初めて聴いたロック・ミュージックはザ・フーの曲ではあったが、演奏していたのはザ・フーではなかった。ややこしいので説明するとだな。オレは当時から映画が好きで映画のサントラレコードもよく買っていたのだ。で、その時映画雑誌で話題になっていたのがザ・フーロックオペラ・アルバム『トミー』を映画化した1975年のイギリス映画『トミー』だったのだ。

『トミー』と『四重人格

まずこれがザ・フーのオリジナルアルバム『トミー』。

トミー

トミー

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そしてこちらがサントラ盤『トミー』。

ついでにこれが映画『トミー』のBlu-ray

映画『トミー』のサントラはオリジナルアルバムをそのまま使ったものではなく、ザ・フーが映画用に新たに録音し直した曲の他、映画に出演したジャック・ニコルソンアン・マーグレットやオリバー・リードが実際歌っている曲、さらに客演したエリック・クラプトンティナ・ターナーの歌う曲が挿入されていた。その中でシングルカットされたのがエルトン・ジョンの歌う『ピンボールの魔術師』だったのだ。そしてオレはこのエルトン・ジョン版『ピンボールの魔術師』のシングルを聴き、そのあまりの楽しさ素晴らしさに狂喜乱舞し、ヘッドホンで最大ボリュームで何度も何度も聴き返していた。うおおおおロックってスゲエ!それがオレのロック初体験だった。

Pinball Wizard/Elton johnサウンドトラック『トミー』より)

映画『トミー』の破壊力は半端なく、8年前にブログで書いた『音楽映画ベストテン』というエントリでは、オレは並み居る名作を押さえてこの『トミー』を音楽映画ベストワンに挙げたほどである。

とはいえロックの楽しさを覚えたオレがそれから聴くことになったのはザ・フーのアルバムではなくエルトン・ジョンのアルバムだった。ザ・フー、残念!

続いてザ・フーとニアミスしたのはそれから随分経ってから、これもやはりザ・フーロックオペラ・アルバム『四重人格』を映画化した1979年のイギリス映画『さらば青春の光』だった。

さらば青春の光 [Blu-ray]

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映画は今一つだったが映画で使われていたザ・フーの曲はなかなかによかった。というわけでサントラとなっているオリジナルアルバム『四重人格』を購入したのだ。

四重人格(SHM-CD)1

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だが「The Real Me」や「Love, Reign O'er Me」といった曲はとても気に入ったのだが、”ロックオペラ”という形でストーリー仕立てになった全曲構成にハマれなかったのと、当時は既にポストパンク/ニューウェーブの曲ばかり聴いていたので、ザ・フーのような割とストレートなロックバンドの曲がそれほど響かなくなっていたことがあり、アルバム『四重人格』自体はそれほど聴き返すことはなかった。おおっとここでもザ・フー、ニアミスで終了!残念!

……とはいえ、『トミー』にしても『四重人格』にしてもこうして今きちんと聴くなら、青春期の混乱と孤独、渇求と希望を、ひたすらリリカルに、そしてそのラストにおいて絶対のポジティヴィティでもって、しかもシアトリカルに描き切るというこの熱量と才覚は、当時においても唯一無二であり他に類を見ない、ロック史に確かな刻印を刻む名盤だと言わざるを得ない。

See Me,Feel Me/Listeng to You (アルバム『トミー』より)

Love Reign Over Me (アルバム『四重人格』より)

『フーズ・ネクスト』と『ライヴ・アット・リーズ』

そんなこんなで年月は過ぎ、オレも還暦の狒々爺となって奇々怪々な毎日を過ごしていたある日である。こうして爺になるとここ数十年愛好していたEDM界隈の音も段々煩わしくなり、昔懐かしのロックバンドの音なんかはどうじゃ、と思ったのである。そこで音楽サブスクをだらだらと漁っていたらザ・フーの名前があるではないか。おお、ザ・フー、聴いたことのある名前じゃ、なんだか懐かしのう……とアルバム『フーズ・ネクスト』(1971)をちょいと聴いてみたのである。すると……おう……おう……

うおおおおおメッチャカッコイイじゃんかああ!!!

Who's Next (Dlx) (Dig)

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  • アーティスト:Who
  • Mca
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実のところここ数十年聴く音楽と言えばEDMばかりで、たまにボウイなんかも聴いたりはするのだけれども、ロック・ミュージックそれ自体は既に殆ど聴かなくなっていた。そこに名前こそ知っているがそれほど聴き込まなかったロックバンドの、しかも50年も前に録音されたそれまで全く聴いたことの無いアルバムを聴いて、素直に「カッコイイ!」と思わされたのだから、これは聴いた時期もあるのだろうがバンドの素晴らしさ、アルバム自体の完成度が相当に高かったというのがあったからなのだろう。確かにアルバム『フーズ・ネクスト』はザ・フーの最高傑作と言われているアルバムであり、これを聴いて興奮させられるのもむべなるかなと思わされるのある。

アルバム『フーズ・ネクスト』

という訳で続いてザ・フーの最高傑作ライブアルバムという評判の『ライヴ・アット・リーズ』もいそいそと聴いてみることにした。するとだ。

ぐはあああメッチャスゲエライブじゃんかああ!!!

ライヴ・アット・リーズ デラックス・エディション

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  • アーティスト:ザ・フー
  • ユニバーサル インターナショナル
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ゼイゼイハァハァ……。とはいえこの『ライヴ・アット・リーズ』、実はこれも大昔にその評価の高さからCD購入していたのだが、その時は良さが分からずに1度聴いたきり忘れていたアルバムでもあったのだ。しかしこうしてザ・フーの大波に乗っている時に聴くとその凄さ素晴らしさは如実に伝わってくる。やはり音楽というのは「聴く時期」というのがあるのだ。オレの場合はなぜか還暦過ぎてからやっとザ・フーの良さが分かったのではあるが。

アルバム『ライヴ・アット・リーズ』

そして伝説へ……

『フーズ・ネクスト』も『ライヴ・アット・リーズ』も良かったのでこれはもうちょっとザ・フーを聴いてみるしかない、そう思ったオレは引き続き『セル・アウト』(1967)とベストアルバム『ザ・フー・ヒット50!』を入手して聴いてみた。『セル・アウト』はそれまで聴いたアルバムとは違い当時流行だったサイケデリック路線なのだがこれはこれで聴き込むほどに味わいが出る。一方『ザ・フー・ヒット50!』は永きに渡るザ・フーのキャリアを飾るヒット曲が網羅されていてこりゃもうゴキゲン。特に初期のヒット曲のカッコよさには陶然とさせられること必至!

Who Sell Out (Dlx) (Dig)

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  • アーティスト:Who
  • Polydor
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I Can See For Miles (アルバム『セル・アウト』より)

Who Hits 50! [2Cd Deluxe Edition]

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  • アーティスト:Who
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The Who 初期の大ヒット曲『I Can't Explain』

ザ・フーピート・タウンゼントの強力なソングライティングの腕と確実なギターワークがいいし、彼のライヴでのアクションも楽しい。ロジャー・ダルトリーの張りのあるポジティヴな歌声もいいし、ジョン・エントウィッスルの重戦車のようなベースもいいし、キース・ムーンの野獣の如きドラムもいい。もう完璧なピースで構成されたバンドだったんだな。なにより、ザ・フーには熱狂的な演奏とは裏腹に研ぎ澄まされたインテリジェンスを感じるのだ。

それと、ロックオペラにこだわりまくって次々にアルバムを作っていった固有性や、シンセサイザーをいち早く導入して見せた先見性も見逃せない。やぱり凄いバンドだったんだな。オレは往時のブリティッシュ・ロックの歴史とかよく分からんので今までレッド・ツェッペリンぐらいしかちゃんと聴いていなかったが、ビートルズローリング・ストーンズのみならずレッド・ツェッペリンとも肩を並べる素晴らしいバンドじゃないか。なによりこんな年になってもロック・ミュージックに発見するものがあって、そして聴いていて楽しいというオレが一番凄いけどな!もうこれはアレだな、モッズコート着てベスパに乗って走り出すしかないな!(しない)

最後にザ・フーのライブアクトの動画載せとくから観るがいいよ!もう暴動みたいな暴風雨みたいな凄まじい演奏だよ!こんな演奏してたら早くにメンバー2人死ぬよな!

The Who - Live at the Isle of Wight Festival 1970