半年でジャズCDを130枚余り購入して聴き狂っていた

去年の暮れ、突然ジャズに目覚めた

去年の暮れだろうか、オレは突然ジャズに目覚め、6月の今日この日になるまでずっとジャズばかり聴いている。というか、ジャズしか聴けない耳になってしまった。この間、ネットに出回っている「ジャズ・ベスト100」「お勧めジャズアルバム」「ジャズ名作」などといった類のアルバム紹介サイトを片っ端から調べ、全てを試聴し、気に入ったアルバムをことごとくCDで買いまくった。その枚数は100枚を超え、おそらく130枚程度になるだろうと思われる。試聴した枚数ならその倍はあるだろう(今はサブスクがあるから簡単に検索して試聴できるのだ)。

オレは定期的にある一種類の音楽ジャンルなり音楽アーチストに突発的に熱狂し、そればかり集中して聴く癖がある。これまでもプリンスのアルバムを全部揃えてみたりリー・”スクラッチ”・ペリーの有名かつレアなアルバムをことごとく揃えてみたりヒップホップブルースレゲエの有名アルバムを徹底的に揃えてみたりと、いろんなことをやっていた。多分コレクター気質なのだろうと思う。そしてだいたい揃えたあたりで適当に飽きて止めてしまうので、熱しやすく冷めやすいタイプでもある。それが今回はジャズになったという訳なのだが、これもいつか飽きるのかもしれないが、今のところとても楽しく聴きまくっている最中だ。

そしてジャズCDをガンガン購入しはじめた

ジャズCDの値段は結構こなれており(古い音源の再発アルバムなら1500円以下)、さらに中古CDも豊富に出回っていて、懐具合を気にすることなくガンガン購入した(実はちょっとは懐具合が気になった)。今現在は評価の高いアルバムは殆ど揃え、あとはちょっと気になったアルバムをちょろちょろと購入する程度である。ただしジャズを追い掛けていった過程で今度はマイルス・デイヴィスの物凄さを改めて発見し、最近はマイルスのアルバムばかり購入している状態である。CDで購入しているのは、やはり圧縮音源ではなくCDの音質で聴きたいからだ。ちなみに再生機がないのでレコードは論外。

今までジャズを聴いたことがなかったわけではないが、別段好みのジャンルではなかった。ジャズを聴いて初めてショックを受けたのは30年以上前、(誰かが言っていたように)御多分に漏れずマイルス・デイヴィスのアルバム『Kind of Blue』だったが、実のところそこからジャズを聴き始めることはなかった。『Kind of Blue』が飛びぬけて素晴らしい(そして今考えれば特異な)アルバムであったばかりに、『Kind of Blue』と同等のジャズアルバムを探しても、そんなものは存在しなったからである。その後、いわゆる「音楽学習」として名作ジャズアルバムを10数枚購入して聴いたこともあったが、その時もそこ止まりで、追い掛けてみようという気にはならなかった。

KIND OF BLUE

KIND OF BLUE

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なぜ今ジャズに熱中してしまったのだろう?

それが今、なぜこれまで以上にジャズに熱狂してしまったのかというと、心当たりが一つある。それは去年の暮れに割と品物が良く音も良いCDプレイヤーとスピーカーを購入したからだ。これらのオーディオ機器を導入したことで、これまで聴いていた音が別物になったのだ。そしてこの時、新しいオーディオ機器で様々に試してみた音楽ジャンルの中で、ジャズの音が最も素晴らしく鳴り響いていたのだ。この時まさにオレはジャズが”分かった”ような気がした。ジャズとはこういうものなのかと理解できた。

オレは音楽理論に無知だし、楽器も弾けないし音符も読めない人間で、だからジャズのコード進行がどうとか、ビーバップとかハードバップとかモードとかいった話はまるで分からない。オレがジャズを聴いて「素晴らしい、楽しい」と思えたのは、その楽器の響きそのものが心地よい、と感じたからだ。もちろんトランペットの音もギターの音もどんなジャンルで演奏されようがそれはトランペットでありギターの音なのだが、上手く言えないのだがジャズの音構成の中で響くそれらの音が心地よいのだ。あえて言うならジャズ独特の音の空間性、緊張感ということだろうか。

オレは今50年代とか60年代辺りの古いジャズばかり聴いているが、この時代のジャズの音は風通しが良い。これが最近のになると録音技術が発達しているせいなのか逆に音に厚みを感じて、その厚みが好みではないのでそれほど面白く感じない。これ、昔レゲエばかり聴いていた頃に、好んでよく聴いていたのが音構成のスカスカした古いレゲエアルバムばかりで、電子音の多い音が分厚い新しめなのはあまり聴かなかったのと似ている。

というわけでジャズは面白い

ジャズに目覚めて最初に驚いたのが、ジャズでノレる、ジャズで踊れるということだった。いや昔はみんなジャズで踊ってましたよ、ということではあろうが、その、ジャズならではのリズム感覚が今まで掴めていなかったということなのだろう。とかく最近はジャズというとある種のリラクゼーションミュージックやイージーリスニングのように扱われることが多いのだが、ジャズでリラックスすることはたまさかあるにせよ、やはりあの弾けるような音が楽しいんですよ、と思えるのだ。

それとマイルス・デイヴィスにもちょっと触れておこう。マイルスはエレクトリック化前後という扱いがあり、エレクトリック化以前も最高に素晴らしいアルバムを山のように発表していたが、エレクトリック・マイルスも実は嫌いではなく、結構な枚数のアルバムを揃えた。エレクトリック・マイルスに関してはあれはジャズというよりも、マイルス自身が語っていたように「マイルス・ミュージック」というジャンルなのだ。オレはロックも聴いていた人間なので、あれはロックとの境界にある音でもあるのだな、と理解できる。そもそも最初にエレクトリック・マイルスを聴いた時は、キング・クリムゾンみたいな音だな、と思ったぐらいだ。やはり何をやってもマイルスは別格なのだ。

というわけで最近ジャズばかり聴いていることを長々と書いてしまった。今まで半年あまり、ジャズに関して思っていたこと感じていたことを書いたらやはり長くなってしまった。ただしどのアルバムが素晴らしいとか、どのミュージシャンが好きかとか、最近どんなCDを買ったとか、些末なことは書かないことにした。ジャズに関しての情報はネットに山のように溢れており、今更オレが付け加えることなどないように思えたからだ。とりあえず今のところジャズは楽しい。そして60歳を過ぎても新しい音楽ジャンルに目覚めて熱狂できるってちょっとイケてんじゃね?と自画自賛する自分がいる。そんなところです。