■MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間 (監督:ドン・チードル 2016年アメリカ映画)
- ジャズは門外漢でどの辺が面白いのかよく分からないオレではあるが、マイルス・デイヴィスのアルバム『カインド・オブ・ブルー』だけは好きで、昔よく聴いていた。
- 『カインド・オブ・ブルー』、昔ラジオを付けていたらなにやら凄まじく鬼気迫る音楽が流れてきて、「なんだこれは」と呆然としたことがあったが、それがマイルス・デイヴィスとオレの出会いであった。早速アルバムを買って聞き惚れていたが、かといってマイルスの他のアルバムを聴いてみてもピンと来なかった。そこがジャズ門外漢たる所以。
- ジャズとマイルスについてはその程度の知識と理解力しかないオレではあるが、しかしそのマイルスを題材にした映画『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間』は実に楽しく観ることが出来た。
- マイルス・デイヴィス、1926年5月26日生まれ、1991年9月28日没。しかし映画『MILES AHEAD』はマイルスの自伝映画って訳じゃなくて、音楽活動を休止していた"空白の5年間"を題材にしたのがこの映画。この「時代の一部だけを切り取った」という演出が逆にいい。
- まんま自伝だとやっぱり重厚長大になっちゃうじゃん?取っ付き難いじゃん?そこを"空白の5年間"だけにすることで、オレのようなマイルス一見さんにも十分楽しめる娯楽作になってるんだよ。
- まずこの映画、マイルスが銃撃戦やらカーチェイスやらとんでもないことを次々に起こすんだけど、実はコレ、ホントのことじゃないらしい。でもこれによりマイルスの「イカレたジャズ・ミュージシャン」って雰囲気を醸し出そうとしてるんだね。ホントのことではないけれど、この程度にはハチャメチャな男ではあったということなんだろう。
- なにかというとすぐ銃振り回すミュージシャンとかさあ、もう可笑し過ぎで、映画の途中で何回か吹いちゃったよ!ある意味これこそがファンキーだとも言えるよね!同時に黒人ミュージシャンが主人公のブラックスプロイテーション映画みたいな見方もできて面白いんだよね。
- そしてなによりよかったのは、全篇に渡って流れるマイルス・サウンド!いや、マイルスの曲全部知ってるわけじゃないけどさ、「映画の間中トランペットのカッコイイ音楽が流れまくる」ってだけでも、これ相当盛り上がるんだよ!もともと楽曲がいいってことなんだろうけど、マイルスの音楽をよく知らないオレですらこれだけ盛り上がったぐらいだよ。
- あとマイルスのデッカいグラサンやド派手な衣装とかも愉快だったね。まあ監督・主演のドン・チードルは一所懸命マイルスのモノマネしてたけど、やっぱりドン・チードルにしか見えないんだけどね!あと共演のユアン・マクレガーが相変わらずのヘタレ役で、事あるごとに殴られまくってこれはハマリ役だった!
- それと、同じ「偉大な黒人アーチストの自伝(的)映画」として『ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜』や『ストレイト・アウタ・コンプトン』があったけど、やっぱり見比べちゃうよね。作品アプローチは真逆だけど、とりあえず歴史に名を残すような黒人アーチストは親方風ふかしまくりで少々イカレていて破滅的という部分では共通していたかな。でも、どんだけハチャメチャでも、音楽にだけはどこまでも真摯である、という部分もまた一緒なんだよね。
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