エルトン・ジョンとウイングスを聴いていた (前編)

■キャプテン・ファンタスティック / エルトン・ジョン

キャプテン・ファンタスティック+3
「2月に引っ越してから、なぜかエルトン・ジョンポール・マッカートニー&ウイングスばかり家で聴いていた」というお話である。
まあ、別に好きなもの聴いてりゃいいだろ、って事ではあるが、このエルトン・ジョンポール・マッカートニー&ウイングスというのは、実はオレがまだ中学生の頃によく聴いていて、その後全く聴かなくなっていたアーチストだったのだ。今じゃ聴くのはエレクトリック・ミュージックばかりだし、好きなロック・アーチストと言えばデヴィッド・ボウイの名前を挙げるオレではあるが、意識的にロックを聴くようになる前によく聴いていたのはエルトン・ジョンやウイングスやキッスだった。オレにとっていわば「懐かしの」アーチストなのだ。それをなんで今更聴き出したのだろう。
そもそもエルトン・ジョンはオレが初めてロックのシングルやアルバムを買ったアーチストだった。中学の頃から映画好きだったオレは、映画のサントラレコードのシングル盤を買うのを趣味としていたが、ケン・ラッセル監督のロック・オペラ映画『トミー』のサントラとしてエルトン・ジョンのシングル『ピンボールの魔術師』を買って聴いた時は、その凄まじくもまた煌びやかなキーボード・プレイに文字通り"ノックアウト"された。このシングルがオレにとってロックの入り口だった。
まあ、エルトン・ジョンは現在ではロックというよりはポップ・アーチストとして認識されているようだが、とりあえず当時のオレにとってあれがギンギンにロックだった。その後エルトン・ジョンの有名なアルバムとしてこの『キャプテン・ファンタスティク』や『グッバイ・イエロー・ブリック・ロード』なんかを購入してよく聴いていた。『キャプテン・ファンタスティク』はその微妙に暗いファンタスティック風味のジャケット画が好きで、レコードに封入されていたポスターを部屋に貼ったりしていた。
まあしかし、アルバム『キャプテン・ファンタスティク』は、「ギンギンにロック」というものでもなく、ピアノをメインとした、非常にセンチメンタルでノスタルジックな味わいのポップ・アルバムではあった。しかし完成度は異様に高かった。中学生には最初ちょっぴり静かすぎたが、そのうちずっぽりとハマっていった。そういう年代でもあったのだ。
まあそれはそれとして、何故この今、昔よく聴いていた、エルトン・ジョンだったのか。これはひとえに、引っ越し先のアパートではあまり大きな音で音楽をかけることが出来ず、とりあえずエレクトリック・ミュージックは部屋でかけなくなっていたことがある。それと、荷物の整理が済み新しい家具が揃えられた部屋がとても落ち着けたものだから、なんだかその平和な環境が、長閑だった中学生の頃を思い出させたことがあるのかもしれない。まあ、それまで住んでいた部屋があまりに殺伐としていたからな。オレもすっかり歳だし、新しいものよりは、懐かしいものに囲まれたかったからなのかもしれない。この辺はちゃんと分析できないな。
整理の終わった新居では、数週間ぼけっとばかりしていた。引っ越し疲れもあったが、今までみたいに、時間に追われながらあれやこれやをやるのが嫌だった。あの頃、ブログの原稿もまるで書かなかったし映画館にも行かなかった。もうブログも映画も止めていいかな、とまで思っていた。そのエアポケットみたいな環境に、昔懐かしい音楽はよく馴染んだ。
とはいえ、今は以前のように時間に追われながら映画を観てブログ原稿を書いている。エレクトリック・ミュージックも、小さい音ながら、部屋でしょっちゅう流している。結局前の生活と変わらない。でも、このエルトン・ジョンのアルバムは(『グッバイ・イエロー・ブリック・ロード』も含め)、やっぱり今でも素敵だと思っているし、前より頻度は減ったがたまに引っ張り出して聴く。そういやジャズのアルバムもよく聴くようになったな。やっぱりリラックスしたいんだろうな。
(後編へ続く)

キャプテン・ファンタスティック+3

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