というわけで遅ればせながらワッシュさんの「音楽映画ベストテン」に参加したいと思います。
いやー、今回の記事、書きあげるのに相当時間を擁しました。文章を練りに練った挙句…というのでは全く無く、セレクトした映画の音源を引っ張り出して聴いていたらこれがノリにノッてしまい、一緒に歌ったり踊ったり絶叫したりと、もはや文章書くどころではなくなってしまったんですよ。さらに記事を仕上げるのにYouTubeの動画を探して眺めてたら「やっぱりサイコーだよなこの曲!!」と聴き惚れてしまって、しかもそれをセレクトした10曲(+1曲)全部でやってたもんですから、全くはかどらないんです。オレこの記事書きあげるまでに貼り付けたYouTube動画、少なくとも10回は繰り返して観たなあ…。こうして書いている間にももう一回観ちゃいましたよ…。
とまあそれだけ思い入れにまみれた映画と音楽の数々、この記事を読んでくれている方も時間に余裕があったら是非一緒に観て・聴いて欲しいですね!では行ってみよう!!
第1位:トミー (監督:ケン・ラッセル 1975年イギリス映画)
第1位はもうこれしかない、ザ・フーが1969年に発表した史上初のロック・オペラ・アルバム『トミー』を映像化した『トミー』でしょう!物語は聾唖盲目という三重苦の青年トミーがピンボールを通じて伝道師となり熱狂的な信者を集めるが…というもの。ザ・フーの面々だけでなくエリク・クラプトン、エルトン・ジョン、ティナ・ターナーが出演し、さらにジャック・ニコルソンが歌を披露したりしてるんです。そして何故この映画が「第1位はもうこれしかない」のかというと、エルトン・ジョンが歌う「ピンボールの魔術師」、これ、オレがロックを聴き始めるきっかけとなった記念すべき曲だったからなんですよ。シングル・リリースされたこの曲を初めて聴いて「ロックってスゲエ!!」と興奮しまくり毎日ヘッドホンで最大音量で何度も何度も聴きまくっていた思い出があります。映画自体は非常に癖が強くなんともいえない味わいなんですが、少なくとも「音楽映画」という言葉を聞いたら真っ先に思い浮かべた映画、それがこの『トミー』だったんですよ。
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第2位:ダウンタウン物語 (監督:アラン・パーカー 1976年イギリス映画)
この『ダウンタウン物語』は禁酒法時代のニューヨークで対立するギャング同士の抗争を描いた、鬼才アラン・パーカー監督によるミュージカル映画なんですが、実は全員子役だけで演じられており、マシンガンから発射されるのは弾丸ではなくパイ・クリームである、というちょっと変わった映画なんですね。なんでこの映画が第2位なのかというと、当時オレがメチャクチャファンだったジョディ・フォスターが出演していたからなんですよ。オレ、映画『タクシー・ドライバー』を観て当時14歳だったジョディちゃんの大ファンになっちゃったんですが(ちなみにオレはジョディちゃんと同じ年なのでロリコンとかじゃないからね!)、その『タクシー・ドライバー』の直後に公開されたのがこの『ダウンタウン物語』で、オレはサントラ買って毎日飽きるほど聴いていました。↓のビデオでバック・コーラスで歌ってるショートヘアで化粧の濃い女の子、これがジョディちゃんです。サントラ自体は子役ではなくプロの歌手が吹き替えしているので、ジョディちゃんが歌ってる声って訳じゃないんですが。さらにこの映画のサントラ、なんとみんな大好き『ファントム・オブ・パラダイス』で出演&音楽担当したポール・ウィリアムスが音楽担当しており、音楽のクオリティもばっちりなんですね。ビデオでは黒人のピアノ弾きの子の歌ってる声、これポール・ウィリアムスさんです。
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第3位:ファントム・オブ・パラダイス (監督:ブライアン・デ・パルマ 1974年アメリカ映画)
そして惜しくも第3位となったのが『ファントム・オブ・パラダイス』です。もうこの映画についてはなにも言うことが無いでしょう。観始めて最初は「面白いけどなんて安っぽい展開と安っぽいヴィジュアルなんだろう」と思わせといて次第にグイグイと惹き付けてゆく、異様な運命と凄惨な悲恋の物語として結実してゆく、そしてその物語を飾る音楽の数々があまりにも素晴らしい、こんな歪でチープな美しさに溢れた映画は今でも観たことがなく、ある意味奇跡のような作品だと言うことができるでしょう。↓のビデオで紹介しているロック・オペラ・シーンも相当頭の悪い楽しさに溢れ、これをはじめ見所満載でいちいち挙げていったらきりがない作品なんですが、オレが一番気にいっているのは、声を潰されダミ声となってしまった主人公が、シンセサイザーに声を通すことで次第にもとあった美しい声に戻ってゆく、という部分ですね。当時シンセサイザーはまだ珍しいものだったので、この描写は驚かされたのと同時に、その後シンセサイザー・ミュージックにハマルきっかけとなった作品でもありました。
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第4位:ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ (監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル 2001年アメリカ映画)
さあさあきました第4位は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』です!これも絶対外せない音楽映画ですね。性転換したはずなのに股間に「怒りの1インチ(アングリー・インチ)」が残されたという主人公の愛と怒りの物語、というのも物凄いですが、ある意味ジョン・アーヴィングを思わせる複雑で現代的な文学性も兼ね備えているんですね。なにしろヘドウィグさん、怒ってます、いつもメチャクチャ怒ってます。世界も自分も歪であり、なにもかもどうしようもない、その中でヘドウィグさんは完璧な自分と完璧な愛、という完璧な世界を夢見るのですが、それはいつだって手が届かないんです、だからヘドウィグさんはどこまでも怒りそしてどこまでも悲しむんですよ。そしてその怒りと悲しみが激しいパンク・ロックとなって昇華される、この凄まじいエネルギーのほとばしりこそがまさにロックなんですよ。もう聴いていて観ていて、いろんなものが心に刺さりまくってくる、という物凄い映画でしたね。そういった意味でこれこそが最も正しいロック映画なんじゃないかと思います。
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第5位:ロッカーズ (監督:セオドロス・バファルコス 1978年ジャマイカ映画)
さて第5位となったのはジャマイカ製作のレゲエ映画『ロッカーズ』。以前はオレも相当のレゲエ好きだったので、この映画のサントラも非常にお気に入りでした。レゲエ・スターが本人役で総出演し、歌と演奏を聴かせてくれるというのも嬉しいんですが、映画に登場するジャマイカンたちのどこまでも素なライフ・スタイルを眺められるのがまた楽しいんですね。ライフ・スタイルとか言っても単にみんな貧乏なだけで、だいたい誰も彼もお金に困ってるんですが、ただのジャージとか古着とか着ててもなんだかお洒落に見えちゃうから不思議なんですよ。そして全体的に作りも演技も相当ユルイ、というのがこれまたレゲエぽくていいんですね。お話はバイクをかっぱわれた主人公が盗んだマフィアに仕返しする、というものなんですが、まあなにしろユルイ、だからお話がどうとかよりもリアルなジャマイカのゲットー・ライフを覗き見するよな感覚で観るのが正しいかもですね。そしてこの映画、誰も彼もがぶっといガンジャ(マリファナ)をキメて「ガンジャサイコー!」とか言ってる素晴らしい麻薬映画でもあるんですね!
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第6位:コントロール (監督:アントン・コービン 2007年イギリス/アメリカ/オーストラリア/日本映画)
オレのしょうもないロック史の中で最高に暗く陰々滅々と鳴り響く、まるで墓場の鬼火みたいなポスト・パンク・ロック・バンド、それがジョイ・ディビジョンなんですよ。いやーオレ、ジョイ・ディビジョン聴き過ぎて人生踏み外したというか、人生踏み外したオレのテーマ・ソング・バンドがジョイ・ディビジョンだったというか、当時は毎日このバンドのアルバム聴いて「オレは既に死んでいる」と思ってたもんだなあ。なにしろあんまり暗い音楽すぎてヴォーカルが自殺しちゃった、というぐらいなんですが、そのヴォーカリスト、イアン・カーチスの半生を描いたのがこの映画『コントロール』なんです。映画公開当時はオレもジョイ・ディビジョンの呪縛からなんとか解放されまあまあまともな一般人として生きていましたが、公開されちゃあやっぱり観ちゃって、そしてどんよりしてましたよ!死に魅せられる、というと中二病臭いかもしれませんが、そういった部分でロック・ミュージック映画であると同時に鮮烈な青春映画として観ることもできるんですよ。
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第7位:オーケストラ! (監督:ラデュ・ミヘイレアニュ 2009年フランス映画)
さあここに来てなんとクラシックを題材にしたフランス映画の登場です。物語は落ちぶれた元一流オーケストラの天才指揮者が、ある切っ掛けて仲間を集め別のオーケストラに成り済まして演奏旅行に出掛けてしまう!というもの。しかし最初はコミカルに始まったこの物語は、中盤から登場する若い女性ソリストの出生の秘密を巡る、胸を締め付ける様な悲痛な物語へと変化してゆくんです!そして全てが明らかにされるラストのコンサート・シーンはもう感動の嵐ですよ!ここで演奏されるのは「チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35」、非常に美しくかつドラマチックな曲で、この物語の展開をそのまま表し、その場にいる主要人物たちの心の裡さえ表現しているかのような素晴らしい曲でした。これはクラシックなんてまるで聴かない自分ですらこの曲の入ったCDを買って聴いたぐらいなんですよ。ちなみに↓のビデオがその曲なんですが、なにしろラスト・シーンなんでネタバレ含みますからまだ観て無い方は目を閉じて聴いてください!
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第8位:ダンサー・イン・ザ・ダーク (監督:ラース・フォン・トリアー 2000年ドイツ/デンマーク映画)
いやー、この作品入れようかどうか迷いましたけどね、やっぱり入れちゃいました『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。オレは当時ビョークの歌うサントラ・アルバムを最初に聴いてたいそう感銘を受け、相当期待して映画館に足を運びましたが、いざ観てみるとなにがなんでも主人公を不幸のどん底に落とそうとする監督の性根の腐ったいやらしさに感想は最悪でしたね。しかし、考えたら当然ですよね、だって監督ラース・フォン・トリアーなんだもん。もう楽曲は素晴らしいし、↓のビデオで観られるようにミュージカル・シーンも完璧なんですが、なにしろ物語がいやらしい。逆に言うと、一般的に美しく楽しく思われているミュージカル作品というものを、わざと不幸にまみれたどこまでも救いのない話でやってみよう、という確信犯的な構成の物語だということもできるでしょう。もう2度と観たくない映画のひとつではありますが、そういったショッキングさから、なぜか記憶から離れない作品でもあるんですよね。
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第9位:プリシラ (監督:ステファン・エリオット 1994年オーストラリア映画)
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の厄払いということで第9位は『プリシラ』。これ、ドラァグ・クイーンの皆様が訳あってオーストラリアの荒野をバスで横断しちゃう!というロード・ムービーなんですが、なにしろドラァグ・クイーンの皆様なんで宇宙人感覚のド派手な衣装とメイクがとにかく楽しい作品なんですよ。荒野とドラァグ・クイーン、この組み合わせがえもいわれぬ効果を生み出しているんですね。そして流れるのはオールドスタイルのソウル/ディスコ・ミュージックが中心で、この選曲がまたいいんだな!しかもドラァグ・クイーンを演じるのはなんとテレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィング、ガイ・ピアースという名優、人気俳優!テレンス・スタンプがお婆ちゃんみたいな扮装で出てきて、いざダンスとなるとブラックデビルみたいな格好してとんでもない厚化粧で踊りまくる!なんて部分に役者魂を感じましたね。そしてテレンス・スタンプ、全然踊れてない、という部分がなんだかいい!
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第10位:ダバング 大胆不敵 (監督:アビナフ・シン・カシュヤップ 2010年インド映画)
そして最後はインド映画。やっぱり音楽といえばインド映画を置いて他にないでしょう!実際の所どれでもよかったんですが、日本で公開されていて有名作品でDVDも出ていて誰が観ても面白くてさらに思いっきり音楽が楽しい、ということになるとやっぱりこれ、超絶暴力警官映画『ダバング 大胆不敵』!ベルトくいくい!!
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選外:ジギー・スターダスト (監督:D・A・ペネベイカー 1973年イギリス映画)
デヴィッド・ボウイ好きのオレとしては本当はこの映画がベスト1でもよかったんですが、「コンサート・ドキュメンタリー」という性格上あえて「音楽映画」の範疇から外して選外ということにしました。日本初公開はコンサート形式で渋谷公会堂でたった1回切り、料金も2000円くらい取られてコンサートみたいなバカ高いパンフレットも売られてましたね。そしてこの日本初公開時、映画が終わってから「アンコール!」と叫んで拍手したバカはなにを隠そうこのオレです。
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という訳で以上のようになります。ではワッシュさんよろしく〜。
1位:トミー (監督:ケン・ラッセル 1975年イギリス映画)
2位:ダウンタウン物語 (監督:アラン・パーカー 1976年イギリス映画)
3位:ファントム・オブ・パラダイス (監督:ブライアン・デ・パルマ 1974年アメリカ映画)
4位:ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ (監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル 2001年アメリカ映画)
5位:ロッカーズ (監督:セオドロス・バファルコス 1978年ジャマイカ映画)
6位:コントロール (監督:アントン・コービン 2007年イギリス/アメリカ/オーストラリア/日本映画)
7位:オーケストラ! (監督:ラデュ・ミヘイレアニュ 2009年フランス映画)
8位:ダンサー・イン・ザ・ダーク (監督:ラース・フォン・トリアー 2000年ドイツ/デンマーク映画)
9位:プリシラ (監督:ステファン・エリオット 1994年オーストラリア映画)
10位:ダバング 大胆不敵 (監督:アビナフ・シン・カシュヤップ 2010年インド映画)
選外:ジギー・スターダスト (監督:D・A・ペネベイカー 1973年イギリス映画)