国立科学博物館に特別展『毒』を観に行った

先週の木曜日は会社にお休みをもらっていたので上野の国立科学博物館で開催されていいる《特別展『毒』》を観に行きました。毒、そうあの毒です。蛇の毒、河豚の毒、蜂の毒、キノコの毒、薬物の毒、そしてお酒の毒!この世界にはあらゆる毒が充満しているではないですか!それらコワイコワイ毒の世界を徹底的に掘り下げ展示して見せたのがこの《特別展『毒』》なんですね。

『毒』というとても分かり易く身近で好奇心を抱きやすいテーマのせいでしょうか、展覧会自体は結構な人気を集めているらしく、土日のチケットは取りにくかったのですが、平日にポンと休みができたので行けてよかったですね。この日の上野は修学旅行生でしょうか、学生服姿の中高生がたくさん歩いていて、展覧会場にも研究授業と思しき小学生の団体もおり、大変賑やかでしたね。 

《展覧会概要》本展では動物、植物、菌類、そして鉱物や人工毒など、自然界のあらゆるところに存在する毒について、動物学、植物学、地学、人類学、理工学の各研究分野のスペシャリストが徹底的に掘り下げ、国立科学博物館ならではの視点で解説していきます。毒をテーマにした特別展は、国立科学博物館では初めての開催となります。自然界、そして人間の社会にはさまざまな毒が存在します。毒とそれに関わる生物との関係を知ることは、自然界の神秘と驚きに満ちた一面を知ると共に、現代社会を生きるうえで大きな助けとなると考えています。

特別展「毒」 <オフィシャルHP>

会場に入るといきなり巨大なスズメバチと毒ヘビのお出迎え!

さらに毒々しい巨大ケムシ!もうここから大いに『毒』の世界を盛り上げてくれます!

さて会場は「第1章:毒の世界へようこそ」「第2章:毒の博物館」「第3章:毒と進化」「第4章:毒と人間」「終章:毒とはうまくつきあおう」という5章立てで展示が成されています。まず「第1章:毒の世界へようこそ」では「そもそも毒とはなにか?」が説明され、身近に当たり前のようにありながら「毒」を持つものが挙げられるんですね。

展示にはありませんでしたが、例えば我々が一般的に食べているキャベツには実は毒があります。ただしこれは人間には全くと言っていいぐらい作用せず、では何かというとキャベツを食べる虫に対しての毒なんですね。じゃあキャベツを食べる青虫はなんなの?というとキャベツのその毒を無効化する形に進化した結果なんですね。毒を持つものとそれが用いられるものとの間には進化による競争が存在しているんです。

そして「第2章:毒の博物館」からいよいよ多数の標本を展示しながら「毒のあるもの」を紹介してゆきます。いやこれがもう結構気持ち悪い生き物や怖い生き物が次から次へと登場し、観ていたオレはいちいち「ウゲッ!」「グワッ!」などと変な声を出していたので会場係員の方からは「危険人物」と認定されいたかもしれません!

「第3章:毒と進化」では「毒」がどのように生物の進化に影響を与えてきたかが説明されてゆきます。ここではまず「生物の呼吸に必要な《酸素》それ自体が実は毒である」という部分から始まります。呼吸された酸素のうち使われなかった余剰酸素は活性酸素に変化し、これは生体を傷つける物質なんですね。

そもそも、太古の地球には酸素は存在せず、光合成をおこなうバクテリアの大量発生が長い時間をかけて海中と大気に多量の酸素を放出していったんです。酸素は全てのものを酸化させる毒素であり、全環境を覆い尽くしたその毒素に打ち勝った生物だけが生き残りこうして進化を遂げてきた、という歴史があるんですね。空気中の酸素濃度の急増は22億年前から19億年前のあたりに始まったという事ですが、つまり「毒と生物」の戦いは20億年近く前から始まっていたという事なんですね。一口に「毒」といっても、こういった地質学的な歴史を持ったものであるということなんです。

「第4章:毒と人間」では「人間の歴史において毒はどのように使用されてきたか」が説明されます。それは先史時代の毒矢から始まり、ソクラテスを死に至らしめたドクニンジンや、チェーザレ・ボルジアが政敵を抹殺するために使用した毒薬カンタレッラ、第1次世界大戦における毒ガスの発明・使用など、毒と人間の歴史が語られるわけです。

「終章:毒とはうまくつきあおう」は生活の中に存在する様々な毒を紹介しながら、それら毒は使いようによっては薬になるものであることを説明してゆきます。例えば青カビは毒ですが、この青カビからペニシリンが生み出されたことは誰もが知ることでしょう。というわけでキモくて怖くて楽しくて同時にとても勉強になった《特別展『毒』》、来年の2月19日まで開催されておりますので興味の湧いた方は是非足を運んでみてください。

博物館を出ると上野公園の紅葉がとても綺麗でしたよ。