この間Twitterで『アフターマン』のことを呟いていた方がいて、「うおお~~懐かしい!」と盛り上がってしまい、関連書籍と併せて古本を逆上気味に購入してしまった。
『アフターマン――人類滅亡後の地球を支配する動物世界』は「人類が滅亡し5000万年が経った世界で動物たちはどのように進化しているのか」を考察した科学ドキュメンタリー本である。進化とは何かとか5000万年後の動物たちがなぜこのように進化すると仮定できるかとか、結構な分量の説明文も付くが、やはり注目すべきは科学的考察と想像力と(あとはハッタリ?)で作り上げられた「5000万年後の生物」の多数のグラフィックだろう。
これが、いくら理詰めで説明されてみても、結構に、グロい。環境に適合し進化した生物というのは今現在栄えている生物を見ると分かるように美しいものだと思うのだが、この『アフターマン』で描かれる生物というのはなんだか微妙に気持ちの悪いものばかりだ。まあこれは製作者のセンスとかビジュアル的に奇を衒ったとかもあるのだろうが、逆にグロいからこそ、「なんだこれは?」と見入ってしまう魅力もある。そしてこのグロさがまた、『アフターマン』の魅力の一つだという事も出来るかもしれない。
『アフターマン』日本語版は最初1982年に旺文社から大型本として刊行され、オレが持っていたのもその判であった。その後手放してしまい、今回入手したのはダイヤモンド社から刊行されたものなのだが、これは単行本の版型になっている。1982年版の刊行時には日本でもちょっとしたブームになり、デパートで「アフターマン展」なんかがやっていて見に行った覚えがあるし、TV番組ができたり歌(!)まで製作されたのらしい。あと旺文社版にはポスターが付いていて、これは書籍内のグロい生物たちが勢揃いとなったものなのだが、なんだか気に入って「グロいなあグロいなあ」と言いつつ部屋に貼っていたのを覚えている。
- 作者: ドゥーガル・ディクソン,ジョン・アダムス,松井孝典,土屋晶子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2004/01/08
- メディア: 単行本
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「5000万年どころじゃない!今度は2億年だ!」とさらにブチ上げてみせた続編がこの『フューチャー・イズ・ワイルドーー驚異の進化を遂げた2億年後の生命世界』である。前作で「1億年後の事は予測不可能」とか書いておいて2億年後の話を書いちゃうとか作者も商魂逞しい。とはいえ実際は2003年にイギリスで製作されたTV番組に付随する形で刊行された書籍なのらしい。
内容はいきなり「2億年後!」となっているわけではなく、500万年後の氷河期到来における大量絶滅と生態の変化から始まり、氷河期終了後に温暖湿潤化し海洋面積が莫大に増えた1億年後の世界を描き、大規模な火山活動と地殻変動により再び大量絶滅を迎えた生態系がまたしても大きく変貌する2億年後の世界へと続いてゆく。そういえば『アフターマン』では氷河期については言及されていなかった気がするので、この『フューチャー・イズ・ワイルド』は続編というよりもまた別の時間軸の生態系を考察したものだと言えるかもしれない。
著者の想像する2億年後の世界では、プレートテクトニクスの活動が全ての大陸を再びひとつに集合させ、「第2パンゲア」と呼ばれる巨大大陸を生成している未来である。しかもこの未来において哺乳類を始めとする脊椎動物は全て絶滅しており(!)では何の生物が世界の覇者になっているのかというと、なんとそれは頭足類、即ちタコとイカ!?陸に上がったタコが8トンの巨大生物となって地上を跋扈している姿はまさに2億年後の世界だ!?
『アフターマン』『フューチャー・イズ・ワイルド』と同じ著者ドゥーガル・ディクソンの『新恐竜ーー進化し続けた恐竜たちの世界』は、「6500万年前に絶滅した恐竜たちが絶滅すること無く現代まで進化し続けていたらどのような形になっていたのか?」を考察した図説である。ここに登場する新恐竜たちは殆ど姿を変えていないものもあるが、現実の哺乳類生物とよく似た形態に進化した新恐竜の姿も幾つかある。いわゆる収斂進化ということなのだが、その分突拍子もない形態の新恐竜があまり見当たらない部分がちょっと面白みに欠けるかもしれない。ちなみに本書では恐竜が知性を獲得した「恐竜人類」みたいなのは出てこないのだが、それについて「知性は進化の究極形態ではない」と説明する所に作者の独特さがあるような気がする。
- 作者: ドゥーガルディクソン,Dougal Dixon,城田安幸
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 1993/12
- メディア: 大型本
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さてここまでは「人類滅亡後の世界」と「人類が発生しなかった世界」を扱った科学ドキュメントとなるが、この『マンアフターマン―未来の人類学』は「このまま人類が滅亡せず進化し続けたらどういった形態へと変化してゆくのか?」を考察した書籍となる。内容説明によると「遺伝子工学の発達は、生き残りを模索する人類の未来に新たな選択肢を加えた。最新理論を駆使し、ユニークな文章とカラーイラストで驚くべき進化を遂げた未来の人類の姿を描き出す可能性の人類学図鑑」となっている。
とはいえ、絶版したままで古本は高額で取引されており、オレは入手していない。昔書店で立ち読みしたのを覚えているが、これが『アフターマン』並にグロテスクに進化した人類の姿ばかりで面白かった。ドゥーガル・ディクソンって基本的にグロの人なんじゃないかとすら思えた。この「進化し続けてオリジナルの形態を殆ど捨て去ってしまった未来人類」というのは、ブルース・スターリングの長編SF小説『スキズマトリックス』でも描かれていて、ちょっと思い出してしまった。