最近読んだコミックなどなど

小犬のこいぬ (2)/うかうか

「あわて者でちょっとドン臭くて思い込みが激しくて食い意地はさらに激しい」小犬が主人公となったコミック第2巻である。主人公の小犬君、ボーッとしているようで変な所でわあわあ騒ぎまくるという非常にムラのある性格で、なんだかいろんな目に遭うが最終的にはなし崩しに「ま、いっか」で終わってしまう、というこの脱力感が良い。しかしこの小犬のキャラがどことなく自分と被っているような気もしないでもなく、そんな部分に共感というか癒しを覚えるのである。コミックは全ページカラー、ネット公開済みの1ページ完結の作品が3分の2と書下ろしが3分の1で、そしてこの書下ろしがちょっと長めのストーリー仕立てになっており、ほんわかした雰囲気がまた読ませるのだ。

雨と君と(2)/二階堂幸

タヌキと主人公女性との静かで気の置けない交流を描くコミック第2巻。1巻目では主人公の奇妙に孤独を愛する性向や、飼われているのが犬でも猫でもなくタヌキ(しかも人語を理解する)、という不思議さから、楽しいながらもどこか謎めいた雰囲気のある物語だった。しかしこの巻では主人公の職業が明らかになり、さらに初めて「友人」が登場し、主人公のキャラクターに少しづつ輪郭が与えられてきている。それでも、こういった「動物モノ」のコミックには珍しい「孤独を愛する者の密やかな生活」が中心となった物語は、特異であると同時に非常に新鮮に感じる。ただ、孤独というのはどこまでも自分自身と向き合わざるを得ない閉塞感を生み出してしまいがちだ。だからこそ、そこにどうにもお茶目なタヌキが「弁」として差し挟まれる。そしてそれは「安らぎ」と名付けられるものなのだろう。「孤独」と「安らぎ」、これらがテーマとなったこの作品は、単なる「動物モノコミック」の域に止まらない、非常に繊細でたおやかな情感に満ちた作品として完成しているのだ。

GIGANT(9)/奥浩哉

この『GIGANT』というコミックはな、「AV女優が巨大化し素っ裸のまま地球を襲うモンスターと熾烈な戦いを繰り広げる」というストーリーになっていてな、しかもギャグじゃなくてシリアスなんだ、なんだかもう訳が分からないだろ、もう画面いっぱいに巨大おっぱいがユッサユッサと揺れ血飛沫は飛び腕はもげ首は飛び巨大オケツがプリプリと弾むんだ、なんかもうカオスだよな、どこに軸があるんだ、というか全部軸なんだよな、そしてこの巻をクライマックスとして次巻で完結だという、もう読者を呆然とさせたまま始まって呆然とさせたまま終わる、ある意味スゲエお話だよ、作者ちょっと天才かもしれない。

アオイホノオ (25)/島本和彦

ホノオ君遂に漫画家デビュー!大阪から上京し東京の街を駆け抜けるホノオ君の初々しい姿に読んでいるこちらも甘酸っぱい気持ちでいっぱいだ。新人漫画家ということであれこれ苦労はあっても臆することなく飛び込んでゆくホノオ君が眩しい。これって青春だよなー同じく北海道から上京しながらなんだかいつもヒネクレていた自分のことを思い出すとなんだか気恥ずかしくなっちゃうよなー、こんな青春を歩みたかった、こんな真っ直ぐな気持ちが欲しかった。

ヴィンランド・サガ (25)/幸村誠

なんとこの25巻目にしてやっと!やっと!希望の土地「ヴィンランド」に出航・到着である。いやー今まで長かった、長すぎた、そしてこれからも長いんだろうなあ。ある意味この巻から始まってもいいぐらいじゃないのか?

川尻こだまのただれた生活第三集:『仮眠ライフハックの話 他』/川尻こだま

例によって健康に悪そうなジャンクフードと終わりなき惰眠で塗り固められた「ただれた生活」を送る主人公の日々を描く実録風漫画第3巻である。一見露悪的なまでにだらしない生活を送る主人公ではあるが、これは生活のある一ページを面白おかしく脚色したものであろうことはすぐわかるし、そういった脚色のセンスと適当に描いたように見えてしっかりした絵、全体に漂う勢いの良さがこの漫画の面白さに繋がっている。これまでWEB上で発表された作品をまとめたものだが、1,2巻同様アマゾンでは無料で購入できる。

神の獣/巴啓祐

「巨大怪獣が日本を襲う!」というコミック『神の獣』は、1992年にコミックモーニング連載・単行本された作品だ。発刊された当時は、大友克洋フォロワーと思われる細かな描線や、東宝怪獣ゴジラを換骨奪胎し非常にモダンなSFストーリーとして生き返らせたセンスに非常に魅せられ、思い出深い作品だった。その後、作者が特に他の作品で活躍したという話も聞かず、半ば忘れかけていたし、コミック自体も見かけなくなっていたのだが、電子書籍で復刊していた知り早速購入してみた。するとこれが現在でも十分通用する面白さを兼ね備えているばかりか、かの『シン・ゴジラ』の異母兄弟の如き変奏曲としても読めてしまい、今だからこその価値すら覚えるのだ。今読むと物語的な飛躍が過剰に思える部分もあるが、衝撃的なラストの味わいは少しも衰えていない。