バットマン新章突入!/『バットマン:ダーク・デザイン』

バットマン:ダーク・デザイン/ジェームズ・タイノンIV他 (著)、ギレム・マーク他 (イラスト)、中沢 俊介 (訳)

バットマン:ダーク・デザイン (ShoPro Books)

何者かに雇われ、デスストロークをはじめとする世界最高の暗殺者が5名、ゴッサムシティに現れた。彼らを捕らえるために奔走するバットマンは、その背後に潜むゴッサムの伝説的犯罪者“デザイナー"の存在にたどり着く。 デザイナーとはいったい何者なのか。その謎の鍵はジョーカー、リドラー、ペンギン、そしてキャットウーマンの4人が持つ暗い過去の中に隠されていた……。 大型イベント『ジョーカー・ウォー』につながるバットマンの新章がここから始まる。ジョーカーの新たなパートナー“パンチライン"も登場し、物語は波乱の幕開けを迎える!

バットマンが新章に突入だという。オレはバットマン・コミックは好きだが、特に熱心なアメコミ・ファンでもないのでなにがなにやらではあるが、巻末の解説によると「2020年1月発売のDCコミック「バットマン」から担当作家が交代して新しい章が始まるよー」ということなのらしい。まあ新しく始まるってェのは景気がいいじゃないか。じゃあ読んでみようぜ!とページを繰ったわけである。

バットマンにデスストロークを始めとする5人の暗殺者が送り込まれ、その背後に謎のヴィラン”デザイナー”の存在を嗅ぎ付けたバットマン。デザイナーへと辿り着く鍵はジョーカー、リドラー、ペンギン、キャットウーマンの過去に隠されていた。真相に迫るバットマンに訪れる最大の危機!果たしてデザイナーとは誰なのか、そしてゴッサムの未来は!?というのがこの『バットマン:ダーク・デザイン』である。

新章という事で幾つか従来的なバットマンとは違っている部分がある。まずアルフレッドは既に死亡し、代わりにルシアス・フォックスがバットマンのサポートを務めている。ゴードン本部長はヴィランコミッショナーと化してしまったらしく、この作品には登場せず、ハービー・ブロックという警察官が本部長の座についている。バットマンの新しいメカが登場するのも本作の魅力だろう。

キャット・ウーマンはこの作品においてバットマンとすっかり恋仲になっており、彼と強力しあう。ハーレイ・クインはジョーカーと別れ、ピンで行動するが、この作品ではバットマンの協力者となる。キャット・ウーマンとハーレイ・クインが共闘しながら敵を倒すシーンはなかなかの見どころだ。そしてジョーカーの新しいパートナーとして新キャラ、パンチラインが登場する。他にもアンダーブローカーという新キャラも登場している。

とまあこんな具合に始まった新章『ダーク・デザイン』なんだが、んー、率直に言って以前読んだ『バットマン:ハッシュ』と物語が被っているように思えて、それほど目新しさを感じなかったなあ。『ハッシュ』の物語は「次々とバットマンを襲う歴代ヴィラン!そして彼らを操る謎の存在!」というのだったが、この『ダーク・デザイン』では「次々とバットマンを襲う最強の殺し屋!そして彼らを操る謎の存在!あと歴代ヴィラン!」という具合になっていて、なんだかそんなに違わないんだよ。

しかも物語のテンポが悪い。冒頭で「5人の世界最高の暗殺者」と鳴り物入りで登場した連中がバットマンとの最初の戦闘にあっさり敗れて捕まってしまうんだよ。その後脱獄してまた戦い始めるって流れなんだが、今度はバットマンが苦戦するんだ。これだと最初の敗北シーンが余計だし、実際強いんだか弱いんだか分からなくなってしまうじゃないか。

悪の存在デザイナーに呼ばれてジョーカーを始めとする4人のヴィランが面談するんだが、面談ってェのもなんだか可笑しいし、そもそもジョーカーみたいな一匹狼がそんな場所にのこのこ行くわけないじゃん、と思えてしまうんだよな。そして新キャラ・パンチライン、たいした強そうに見えないのに容易くバットマンの協力者を窮地に陥れすぎだし協力者も簡単に陥れられすぎ。物語はデザイナーの正体を始めあれこれどんでん返しを仕掛けているが、これらがどうにも狙い過ぎていて「はあ」としか思えなかったりする。それとか、今作でバットスーツ、破れすぎ。バットマン、怪我しすぎ。

そんな具合にいまいちノレない「新章」だったんだよなあ。そしてこの『ダーク・デザイン』、この後に続く 「ジョーカー・ウォー全3巻」に続く序章という位置付けになっており、きっちり物語が終わっているわけじゃないんだ。だけどこの完成度だと「ジョーカー・ウォー」に手を出すかどうかちょっと微妙だなあ。グラフィックも今一つのアーチストが目について、これもちょっといただけなかった。うーむ。

バットマン:ダーク・デザイン (ShoPro Books)

バットマン:ダーク・デザイン (ShoPro Books)