ゲーム・コミカライズ『ウィッチャー』シリーズ第3弾『ウィッチャー 3: CURSE OF CROWS』発売

■ウィッチャー 3: CURSE OF CROWS/ ポール・トビン (著)、ピオトル・コワルスキー (イラスト)

ウィッチャー 3:CURSE OF CROWS (G-NOVELS)

「累計販売本数3300万本突破」という化け物級のRPG、『ウィッチャー』シリーズのコミカライズ作品第3弾である。『ウィッチャー』の魅力はその徹底的に作りこまれた世界観とアウトローとして生きるヒーローの造形だろう。まあこういった書き方は紋切型にしかならないのだが、『ウィッチャー』には同工のRPGより頭一つ抜き出た完成度を感じる。

(と、ここまで書いておいてなんなんだが、ゲームのほうは途中までやって詰んじゃってるんだけどな……最近全くゲームやる暇が……)

その『ウィッチャー』のコミカライズ作品第3弾『CURSE OF CROWS』である。このコミカライズ・シリーズは、そもそもゲームそれ自体の作り込まれた世界観を元にしているため、コミックのみでも実に魅力的な物語を創出している。ある意味ゲーム『ウィッチャー』を知らなくとも楽しめるのではないか。

そしてこの『CURSE OF CROWS』、これまでの2作があくまでアナザー・ストーリーだったのに対し、ゲーム『ウィッチャー3 ワイルドハント』後の世界であることを明確に打ち出している。なにしろきちんとゲームの方はやりこめていないオレだが、主人公ゲラルトの養子である銀髪の少女シリ、ゲラルドのかつての恋人だった女大魔術師イェネファーが登場した時は大いに盛り上がった。

今作も例によってモンスター討伐に明け暮れるゲラルトを描くこととなるが、これまでと趣向が違うのは、「非常にRPGぽい物語展開を見せる」ということだろう。

RPGのコミカライズだからRPGぽいのは当たり前ではあるが、そうではなく、「住民からのモンスター討伐依頼」「探索」「撃破」のパターンが何度も繰り返されることになるのが本作なのだ。そしてこの展開も、最強モンスター・ストリガ討伐がまずメイン・クエストであり、それに付随して様々な「依頼」がサブ・クエストとして物語に差し挟まれることになるのである。この展開こそがまさに実際にRPGをプレイしているような感覚を読む者に与えることになる。そしてサブ・クエストそれ自体もメインと微妙に絡み合っていたり、物語世界を膨らませる効果を上げているのだ。

それと併せ面白いのは、この世界に登場するモンスターがどれもこれも凶悪残虐なのではなく、アプローチによっては大人しかったり友好的であったりする部分だろう。また、狂気に囚われた悪霊でさえも、その魂を鎮めることで調伏する場合もあるのだ。即ち例え相手がモンスターであっても処し方が人間的なのである。

こういった世界観設定、物語性だけではなく、グラフィックがなにしろ素晴らしい。微細に描き込まれた登場人物、背景、カラーリング、どれも美しい。主人公ゲラルトは強靭にして鷹揚であり、シリ、イェネファーは凛として気高く力強く、脇役たちも個性的に描き分けられ、さらにその全てが表情豊かで物語を生き生きとしたものにしている。ここまで細やかに感情の機微を表情に表わすことのできる技量の高さには唸らされる。

そしてその物語は、幾つかの、呪われた悲しい運命の物語なのだ。これら呪われた者に対峙する主人公ゲラルトの、慈悲と非情さのない交ぜになった戦いがなにより素晴らしい。今作『ウィッチャー 3: CURSE OF CROWS』は『ウィッチャー』コミカライズ作の最高傑作なのではないか。惜しむらくは巻末のあとがきでコミカライズ作がこれで終了である事が匂わされていることだ。ここまで素晴らしい作品を終了させるのはとても残念なので、機会があるならまた新作を紹介していただきたいと切に思う。

 

ウィッチャー 3:CURSE OF CROWS (G-NOVELS)

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ウィッチャー 1: HOUSE OF GLASS (G-NOVELS)

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ウィッチャー 2: FOX CHILDREN (G-NOVELS)

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