■ストリート・オブ・ファイヤー (監督:ウォルター・ヒル 1984年アメリカ映画)
『ストリート・オブ・ファイヤー』である。バイカー軍団にさらわれたロックンロール・クイーンを救うため、かつての恋人が町にやってくる。そしてその時、ストリートはファイヤーしまくるだッ!!
1984年公開、監督はあのウォルター・ヒル、配役はマイケル・パレ、ダイアン・レイン、ウィレム・デフォー、リック・モラニス、エイミー・マディガン。
公開当時映画館で観て大いに盛り上がった記憶がある。オレはまだ20代最初の頃だった。血沸き肉躍るストーリー展開はもとより最初と最後のコンサート・シーンが圧巻だった。サントラ盤も買った。当時はLPレコードだった。
その『ストリート・オブ・ファイヤー』がデジタル・リマスターされこの2018年夏、リバイバル上映されるというではないか!うおおおう!これ観なきゃあ平成最後の夏は終わらない!オレのセーシュンをもう一度!今夜は青春!(ラストの曲のタイトルが『今夜は青春』だったのだ)
映画『ストリート・オブ・ファイヤー』はその冒頭に「ロックンロールの寓話」というキャプションが付けられる。しかしこの映画は「寓話」というより「漫画」に近い。即ち「ロックンロール・コミック」である。登場人物たちの性格はどれも類型化され記号的で、物語は「騎士がドラゴンからお姫様を救出する」お話の現代版でしかない。
しかもこの物語ははっきりとした時代や場所を巧妙にぼかしている。音楽にしてもファッションにしても生活様式にしても60年代と70年代と80年代がごっちゃにされており、舞台はアメリカなのだろうがどこというでもない、どこでもない町なのだ。しかしだからこそ、『ストリート・オブ・ファイヤー』は魅力溢れる物語となったのだ。
いつか、どこかで繰り広げられる、祖型的な登場人物たちによる祖型的な物語。これとよく似た名作映画がひとつある。それは『スター・ウォーズ』である。「遠い昔、遥か彼方の銀河系で」という言葉から始まる『スター・ウォーズ』は、時間と空間を超越した強大なる善と悪の戦いであると同時に、父子の葛藤の超克の物語でもあった。それは物語の祖型性により「神話」へと通じていたが、それよりも「ファンタジー」と表現したほうが言葉が柔らかく感じる。
即ちロックンロール・コミックである『ストリート・オブ・ファイヤー』は、ロックンロール・ファンタジーと言い換えることもできるだろう。そしてこのような様式で製作されたからこそ、心を惹き付けてやまない、強烈な映画として完成したのだ。
とはいえ、年代が「ごっちゃ」にされているせいで、見方によっては「ちぐはぐ」にも見えてしまう映画でもある。公開当時も、リーゼントのバックバンドと産業ロックみたいな歌姫がちぐはぐに見えたし、そこに黒人ソウルグループがバックヴォーカルを務めるなんて、インチキもいい音楽性に思えたのだ。
にもかかわらず、そんな「ちぐはぐ」なはずのコンサートシーンが、なぜあれだけ興奮を生んだのかというと、これはもう監督であるウォルター・ヒルの力技としか言いようがない。コンサートシーンにおける照明の在り方、シーンそれぞれのカットとアングル、どれもこれもキマッているのである。ウォルター・ヒル自身は「音楽映画なんてやったことねえし」などと言いつつ、ベテラン映画監督による百戦錬磨のスキルがこの素晴らしいコンサートシーンを可能にしたのだ。
あとまあチマチマした事を言うなら、ダイアン・レインはこれっぽっちもロックンロールな女に見えないし、なにしろ衣装がダサすぎるし、ウィレム・デフォーはそんな彼女をさらいつつなんにもしてないとか単なるインポ野郎にしか思えなかったし、実際戦わせると『SW』の銀河皇帝並みに弱っちかったし、元カノを救うのに「いや金の為だけだから!」といちいち言い訳するマイケル・パレはホントはイジけた性格なんじゃないかと思ったし、ダイアン・レインの恋人役のリック・モラニスは全く彼女の恋人になんか見えない。
そんな憎まれ口を叩きつつも、それでもこの物語を愛して止まないのは、やはりこの映画が胸のすく痛快なコミックであり現実を遥か彼方に放り出したファンタジーだからだろう。元カノを救ったヒーローはあたかも『シェーン』のようにまたどこかへと旅立ってゆく。ひと所に留まらないヒーローである彼がまたどこかで新たな物語を紡ぐであろうことを予感させながら。そんな終わらない「永遠性」がこの物語には存在しているのだ。
(しかし一緒に観に行った相方は「古臭い映画……」と一蹴してたのでオレの思い出補正も多分にあるとは思うから要注意だ!)
(もうこのミュージック・クリップがカッコよくてカッコよくて涙が出てくるよ……)
Tonight Is What It Means To Be Young [Official Music Video] (Fire Inc.)
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