スタローンの新作アクション『バレット』は殺し屋と刑事のバディムービーだ

■バレット (監督:ウォルター・ヒル 2013年アメリカ映画)


新旧ハリウッド・アクション・スターたちを集めて製作された映画『エクスペンダブルズ』は快挙だった。知名度こそ高いとはいえ、寄る年波に肉体も容色も衰え、人気にも翳りが出始めたアクション・スターが奮起一点、「俺だってはまだまだやれるんだぜ?」という姿を見せたこの映画は、どこか自嘲交じりのセルフ・パロディ的要素を込めながらも、だからこその「アクション馬鹿一代」な痛快さを醸し出していた。そしてその立役者となり監督・脚本を務めたのがシルヴェスター・スタローンだったというわけだ。
そして『エクスペンダブルズ』以外でスタローンが主演を張った映画を、自分が最後に劇場で観たのはいつだったろう?と思ったのである。記憶を遡ると2008年公開の『ランボー/最後の戦場』が一番最近劇場で観たスタローン映画ということになる。しかしあれは人気シリーズものだから、それ以外でとなると今度は1996年の『デイライト』あたりまで遡る。もはや15年以上前の映画である。実はスタローンという俳優がそれほど好きではなかった時代があり、それで観ていなかったというのもあるが、それでもフィルモグラフィーを調べてみると、ロッキーやランボーのシリーズ作以外では、それほどパッとした映画に出演していない。やはりスタローンにとっての『エクスペンダブルズ』は、本人にとっても起死回生の1作だったのだろう。
そんな『エクスペンダブルズ』に出演していた人気アクション・スターの一人にアーノルド・シュワルツェネッガーがいる。シュワルツェネッガーの場合はカリフォルニア州知事就任というブランクもあったにせよ、やはりスタローン同様「もはやアナクロな肉体派のアクション・スター」というイメージがあった。しかしほんのちょっとではあるが『エクスペンダブルズ』への出演を果たし、さらに『2』ではスタローンとタッグを組んだ大活躍、その返り咲き振りにしみじみ「アナクロかもしれないけど一周回ってこれはこれで悪くないなあ」と思わしめたのだ。そんなシュワルツェネッガーのついこの間公開された復帰第1作『ラストスタンド』は、まさにそんなアナクロぶりが逆に抜群の安定感を感じさせる快作として仕上がっていた。
というわけで『バレット』である。この映画、スタローン久々のシリーズ物ではないアクション映画であり、『エクスペンダブルズ』で自らのキャリアにもう一度手応えを感じて作られたアクション映画だという気がする。正直に言ってしまうと、予告編を観てそれほどそそられるものは感じなかったのだが、シュワルツェネッガーの『ラストスタンド』を映画復帰のご祝儀代わりに観たように、『エクスペンダブルズ』で充分楽しませてくれたスタローンへの、ご祝儀代わりにこの映画を観ようかと思ったのだ。
物語は雇い主に裏切られた殺し屋スタローンと、それに関わる事件を追う刑事サン・カンとのバディ・ムービーとなっており、まずその組み合わせの面白さに惹かれた。原作はもともとフランスのグラフィック・ノベルなのらしく、そのせいか程よいノワール・テイストを醸し出す。監督はウォルター・ヒル、際立った派手さはないものの、堅実で外れのないバイオレンスとアクションを見せる。そういった緊張感とは裏腹に、主人公二人の奇妙にユルいボケ突っ込みのようなやり取りが楽しい。この辺、映画『ラストスタンド』で感じたのと同じような、「80年代90年代を思わせるどことなくアナクロでもっさり、しかして質実剛健で安心して観られるアクション・ムービー」として仕上がっているのだ。特筆すべき映画でもないが、履いて捨てるような映画でもない。サクッと観られて御代分楽しめて映画館を出られる映画。年を取ったせいなのか、なんだかこの位の映画が丁度よく感じてしまう今日この頃である。

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