最近観たインド映画2作~『Baadshaho』『Bhoomi』

■Baadshaho (監督:ミラン・ルトゥリヤー 2017年インド映画)

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1975年にインド政府により発令された「非常事態宣言」により財産没収と逮捕という憂き目にあったインド豪族王女がいた。王女の元ボディーガード・バワニは没収された財宝の奪還作戦を計画するが……というアクション映画。主演にアジャイ・デーブガン、王女役にイリヤーナー・デクルーズ。また、敵役となる陸軍将校にヴィドゥユト・ジャームワール。まず1975年の「非常事態宣言」というもの自体知らなかったが、これは時の大統領インディラ・ガーンディーによる独裁的強権政治の一端で、対立政党の弾圧、言論統制、主要銀行の国有化、強制断種、スラム撤去などの人権侵害が行われたという。現在でもその是非について論議の的となっているらしいが、この映画では王族の財産没収が描かれることになる。しかしインド民主化の為にはそれも致し方ないと思えるし、それを真っ向から否定するのはどうなんだろうな。まあ映画はそんな政治的な事よりも「財宝強奪」のサスペンスとアクションが中心の娯楽作として出来上がっている。全体的に非常に乱暴で矛盾の目立つストーリーなのだが、財宝を搬送する完全武装のモンスタートラックの強奪作戦と、それを強奪した後のモンスタートラックの爆走ぶりが楽しかったのでよしとしたい。また、クライマックスのロケーションとシチュエーションはインドでなければ撮れなかっただろうと思われる特殊なもので、これは鬼気迫るものがあった。主演のアジャイ・デーブガンは安定の三白眼、王女ギーターンジャリはアンビバレントな性格を持つ女だが、この部分をもっと掘り下げれば面白くなっただろうにと思う。


Baadshaho Official Trailer | Ajay Devgn, Emraan Hashmi, Esha Gupta, Ileana D'Cruz & Vidyut

■Bhoomi (監督:オムング・クマール 2017年インド映画)

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結婚式のその前夜にならず者たちにレイプされた娘の恥辱を晴らす為、彼女の父親が復讐に立ち上がる!という生々しいテーマのサスペンス映画。お話のほうは「愛情深い父娘の情景→事件→ままならぬ裁判→さらなる嫌がらせ→ついにブチ切れるお父さん→血煙大噴出!」という予想から一歩も外れない展開だが、それでも【復讐譚】というのは大いに盛り上がるのは確かで、非常にカタルシスのある作品だった。だいたい父親役がサンジャイ・ダットというのがまず卑怯で、こんなオヤジ怒らせたらクライマックスに惨劇しか待っていないのは火を見るより明らかじゃないか。このサンジャイさんが憤怒の形相でならず者たちを追いつめる様子はもはやジェイソンやブギーマンもかくやと思わせるホラー展開で、しかも観ているこちら側もすっかり感情移入しておりブギーマン・サンジャイに「殺れ殺れいてこましたれや!!」と声援まで送ってしまうほど。特にクライマックスの異様にインド的な盛り上がり方はある種ヤバイほどだった。一方被害を受けた娘役のアディティ・ラーオ・ハイダリーがまた実に可憐で可愛らしくて、「守ってやるぞう!このオレがぜってー守ってやるからな!」とサンジャイ親父に成り替わってすっかり熱くなれる事必至。いやファンになっちゃいそう。この作品は同じくレイプ事件を扱い母親側が復讐に立ち上がるシュリーデーヴィー主演の映画『Mom』(2017)と対になっているように思えるので、気になった方はこちらの作品も観てみるといいかも。

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