最近観たインド映画2作~『Tubelight』『Naam Shabana』

■Tubelight (監督:カビール・カーン 2017年インド映画)

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サルマーン・カーン主演による映画『Tubelight』は1962年の中印国境紛争を背景にした兄弟愛の物語だ。子供の頃からぼんやりしていて「蛍光灯(Tubelight)」と綽名を付けられていた主人公ラクスマン(サルマーン・カーン)と弟バラト(ソーヘル・カーン)は固い絆で結ばれた仲睦まじい兄弟。しかしある日パラトは中印国境紛争に派兵されてしまう。そんな折、村に在印中国人の親子が住み着くが……という物語。監督は『Bajrangi Bhaijaan』(2015)のカビール・カーン。頭は鈍いが気立てのいいラスクマンと村人から差別に遭う中国人親子との心の交流、戦地に赴いたまま帰らない兄への想い、これらの混じり合ったヒューマン・ドラマとして完成している。少々あざといといえ、サルマーン兄ィ演じる不器用極まりない男の純な心とその行動は、結構素直に胸に響いた。こういった性善説的な物語をこちらも素直な気持ちになって見届けるのは悪くないものだ。また、中印国境紛争という背景も興味深かったし(結果的に中国の勝利となりインドは甚大な人的被害を出したという)、インド国籍の中国人がインド映画に登場する、ということも目新しかった。それと、カメオ出演したとある大スターの登場には椅子から転げ落ちるほど驚いた。そういった新鮮さも個人的に評価を高くした。ただ冒頭の、いいガタイしたおっさん二人(主役の兄弟)が林の中でキャッキャウフフする映像はどうにかならなかったのかと思った……。またこの作品はオーム・プリ―の遺作となるのらしい。 


Tubelight | Official Teaser | Salman Khan | Kabir Khan

 ■Naam Shabana (監督:シヴァム・ナーイル 2017年インド映画)

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2015年公開のサスペンスアクション『Baby』のスピンアウト作品。『Baby』にも登場した女性特殊工作員シャバーナー(タープスィー・パンヌー)を主人公に据え、大学生だった彼女がなぜどのようにして特殊工作員になったのかが描かれ、いわば『Baby』の前日譚的な物語にもなっている。アクシャイ・クマール他『Baby』に登場した俳優も多数出演し、物語を大いに盛り上げる形となった(やはり華のあるスターが一人出ると映画の雰囲気が変わるものだ)。個人的には映画『Baby』はよく出来ているとは思うが今ひとつ好きになれない作品で、それはシリアスに寄り過ぎて爽快感に欠けていたからなのだが、この作品は女性主人公と言うこともあってか別の感触で楽しめた。主演のタープスィー・パンヌーの強面した顔つきがいいのだ。錯綜した世界政治の裏側で汚れ仕事を引き受ける殺伐とした者のリアリティが滲み出た顔つきなのだ。こういう女優も一人いないとね。作品自体は『Baby』人気にあやかった低予算映画といった寂しさも漂うのだが、気楽に流し見できるアクション映画という事であればまずまずの作品ではないだろうか。

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