最近ダラ観した韓国映画などなど

『タチャ 神の手』

タチャ 神の手 (監督:カン・ヒョンチョル 2014年韓国映画

韓国の「ゲーム対戦映画」というと囲碁とバイオレンスが悪魔合体して進行する『神の一手』、その続編『鬼手』が非常に記憶に残っているが、この『タチャ 神の手』は花札+バイオレンスというこれまたキナ臭い要素がテンコ盛りとなった作品である。タイトルにある「タチャ」とは「賭博の達人」といった意味らしい。監督は『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル、主演にK-POPグループ「BIGBANG」のT.O.P。なにしろ物語は熾烈な花札賭博を繰り広げる賭博師たちのイカサマ込みの熾烈な対戦劇と、莫大な掛け金に人生を狂わされた者たちの暴力に満ちた薄汚い争奪戦である。騙し騙されのドロドロした人間関係と共に熱い師弟関係や一途な愛が描かれ、こういったあらゆる人間性の発露が見られるのも賭博ストーリーの醍醐味かもしれない。また、得てして陰惨になりがちな物語にK-POPグループのハンサムガイを主演に迎えたことで非常に風通しのいいエンターティンメントとなっており、韓国アイドルも捨てたものではないなと思わされた。オレの大好きな韓国オッサン顔脇役、ユ・へジン(農民風)とクヮク・ドウォン(お団子風)が重要な役で登場しているのも見逃せない。なお作品は『タチャ イカサマ氏』の続編で、さらにシリーズ3作目『タチャ ワン・アイド・ジャック』が存在している。

ステラ SEOUL MISSION(監督:クォン・スギョン 2022年韓国映画

自動車金融のしがない取り立て屋ヨンベがボスの車を持ち逃げされて犯人扱いされ、死んだ父の残したオンボロ自動車「ステラ」で逃げ回る、といったコメディ作品。どことなく勇まし気なタイトルや爆走する(?)車の描かれたDVDジャケット写真からスピード感満載のカーアクション映画と思ったら大間違いで、主役(?)となる車ステラは時速50キロしか出ないしそもそもボロなのでまともに走らず、アクションらしいアクションはヨンベがボコボコにされるシーンぐらいという情けない展開が可笑しい。作品はむしろ追跡逃走劇のサスペンスではなく、韓国の街を逃げ回るヨンベの心の旅路を描くロードムービー的な人間ドラマが中心だ。実は「ステラ」の元所有者だったヨンベの父とヨンベとはある事情により仲違いし、ヨンベは父を心の底から憎んでいた。だが死んだ父の車を乗り回すうちに父の愛と哀しみとが次第にヨンベに理解できるようになってくるのである。こういった部分でいわば「親子の愛」がテーマとなった作品として観るべきかもしれない。

SP国家情報局:Mr.ZOO(監督:キム・テユン 2020年韓国映画

国家情報局員チュ・テジュは中国から寄贈されたパンダを護衛することになるが、謎の集団にパンダを奪われ大ピンチ!?さらに応戦中に頭を打ったせいで動物の言葉が理解できるようになってしまう!?しかしチュは実は大の動物嫌いだった!?というアクションコメディ。なにしろキモとなるのは「動物の言葉が理解できる主人公」という『ドリトル先生』展開と、主人公と絡む様々な動物たちをCGやアニマトロニクスでリアルで生き生きとした姿で描いている部分となるだろう(もちろん調教された実際の動物も登場している)。特にCGの精度がとても高く、動物メインの子供向け映画として製作していないことにとても感心させられた。また、主人公がパリッとしたスーツに身を包んだ国家情報局員なのにも関わらず、いつも失敗や馬鹿馬鹿しい行動をとってドタバタとした笑いを生んでいる部分も十分に楽しめた。同時に動物嫌いの主人公が次第に動物たちに敬意と愛情を感じ始める展開もいい。そんな主人公を『工作 黒金星と呼ばれた男』のイ・ソンミンが体当たりで演じる部分に好感が持てた。

R-POINT (監督:コン・スチャン 2004年韓国映画

ベトナム戦争末期、行方不明兵士の探索に派遣された韓国軍兵士たちが不気味な怪異に遭遇するという韓国ホラー。タイトルの「Rポイント」とは舞台となる軍事拠点の名称。『箪笥』と並び韓国2大ホラーとも称されているらしい。この映画、韓国ベトナム派兵を題材にしているという点でちょっと珍しい作品だと言える。珍しい、というのはベトナム派兵というのが韓国人自身にもあまりいい印象がなく、商業作品として成り立ちにくいという理由があるからだろうか。それでも「あまりいい印象の無いベトナム派兵」の、そこに派兵された兵士たちの厭戦感が如実に伝わってくるのは確かで、それが「死者が死へと引きずり込む」恐怖譚となっている部分に、この戦争への韓国人の感情の一端が現れていると言えないだろうか。2004年製作作品という事で最近の韓国映画の完成度とはまた違う、手探り感のある演出も面白くも感じられた作品だった。ただしこの作品、配信が存在せずDVDレンタルで観たのだが、画面の四方が黒く狭まっているいわゆる「額縁映像」で、これはちょっといただけなかった。

傷だらけのふたり (監督:ハン・ドンウク 2014年韓国映画

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  • ファン・ジョンミン
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借金取り立て屋のガサツな男が、借金を背負わされた美しい娘に恋をしてしまうが、性格も住む世界も全く違う二人の男女が結びつくはずもなく……という物語。韓国名優ファン・ジョンミン主演、ヒロインにTVドラマ『がんばれ!クムスン』のハン・ヘジン、共演に「お団子顔」クァク・ドウォン。前半の「ヤクザな男の不器用すぎる純情」を描く部分はそれなりに見せるのだが、それで引っ張るのかと思ったら中盤なんだか知らないが二人は簡単にくっついてしまい、その後突然分かり難い時間の飛び方をして今度は破局した二人が描かれ、なんだなんだ?と困惑しているといきなり「難病御涙頂戴映画」へと変貌、ここでまた「ヤクザな男の不器用すぎる純情」が繰り返されて、まあ要するに「ダメな俺だが真心はガチ」という男の自己陶酔映画なのね、そんなのどうでもいいから相手の女性をきっちりケアしてあげてこそ男じゃないのかよ?と白けさせられて終わるという駄作であった。いやーなんともかんとも。あまりにも白けさせられたので韓国映画を観るのはこれで一旦終了することにしたほどである。