最近読んだコミックなどなど(その1)

ゴールデンカムイ(29)/野田 サトル

雑誌連載のほうは華々しく完結を迎えた『ゴールデンカムイ』、単行本の第29巻である。当然だがこちらのほうもいよいよ佳境、最終決戦になだれ込み、ここまでやるのか、という大規模な戦闘が展開して驚かされた。これほどの見せ場を作り、さらにそれが多分最初から構想済みであったのであろう作者の類稀なる構成力を改めて感じる。こういった部分に於いてもいかに稀代の名コミックであったことが伺われるというものだろう。単行本自体はあと2巻程度で終了となるのらしい。

ところで実はWeb無料公開版で最終話まで読んだが、その感想は別として感じたのは、雑誌掲載版は単行本版と雰囲気が違うという事だ。オレは雑誌掲載版を初めて読んだのだが、単行本版と比べると絵にしてもアングルや画面構成にしても若干の荒さを感じるのだ。これは非難しているのではなく、雑誌掲載版では連載という事もありリリーススピード重視でグラフィック推敲を二の次にし、単行本版でそのグラフィックを手直しして完璧なものに作り上げているということなのだろうと思ったのだ。

こうして考えると、雑誌掲載版では余韻を込めつつサクッと終った大団円は、単行本版ではもっと情感豊かにきめ細やかに、さらにページを増やして描かれる予感がする。これはなおさら単行本版を期待してしまうではないか。ううむ、『ゴールデンカムイ』、まだまだ終わってないぞ。だからこそ、『ゴールデンカムイ』の評価を今下してしまうのは、早計だと思うのだ。

父娘ぐらし 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話/渡辺電機(株)

Twitterで見つけたWebコミック(note連載)である。最近こういった形で知るコミックが多いな。内容はタイトル通りで作者の実体験を元に描かれている。もう少し詳しく書くと55歳の独身マンガ家主人公が子連れ女性との結婚が決まったが、お互い遠距離であり女性の側の仕事が片付かないため、それまで2女のうち長女を預かることになった、というものだ。で、これがとても面白い。シチュエーションもさることながら、「一生独身だとたかをくくったまま55歳」になってしまった主人公のキャラがいい。そして新しい父親と暮らすことになった女の子の常に予想できないリアクションが楽しい。こうして元は赤の他人だった二人がドタバタを繰り広げながら愛情を育んでゆく。素敵な話じゃないか。作者自体中堅クラスのマンガ家なので表現力が的確だという部分もある。続きが読みたいし、奥さんと暮らすことになった後の物語もあったっていいと思う。