最近読んだコミックなどなど/『雨と君と』を中心に

雨と君と(1) (ヤングマガジンコミックス)

雨と君と(1) / 二階堂幸

『雨と君と』はある雨の日に主人公女子が「犬のような生き物」を拾って飼い始めるところから始まる。 この「犬のような生き物」、実はタヌキである。しかし主人公をはじめ周りは「まあ犬だって言ってるんだろうから犬なんだろう」としか思っていない。ところでこのタヌキ、自分からフリップを出して会話することが可能だ。よくわからんが特殊なタヌキなのらしい。

このタヌキと主人公とのさりげない毎日が描かれるのが本作なのだが、単なる動物愛玩漫画なのかと思うとなにか微妙に違う。確かにこの物語のタヌキは愛らしいが、これが犬でも猫でも成立する話ではあるのだ。ではなぜタヌキなのか。まずタヌキは基本的に非日常的な動物であり、さらに飼うことを禁じられている野生動物である。しかし物語のタヌキは会話の可能な特殊なタヌキだ。ここから考えられるのは、この物語は実はファンタジーなのではないかということだ。

そして主人公女子だ。彼女の日常生活は描かれはするが、どんな仕事をしているのか(服装から社会人だろう)はまるで描かれることはなく、だから同僚など仕事上の人間関係は描かれず、さらにはこの年代ならいそうな友人や恋人の姿も描かれない。わずかに両親やご近所さんが登場するが、基本的に閉じた人間関係のみなのだ。さらに主人公は雨や一人でいることが好きな、どこか孤独な陰のある女子だ。物語の中でも、微笑むことはあっても笑うことはない。そもそもあまり感情を表に出さない。こんな主人公が、特殊な、奇妙なタヌキと同居し、淡々とした日常を過ごす。

こういった部分から、一見ありがちな動物愛玩漫画のように見えて、実は主人公の個人的な世界を抽象的に描いたものなのではないかという気にさせられる。その個人的世界とは主人公の孤独であり、孤独を愛する気持ちである。その孤独を愛する主人公の、世界に対する弁になっているのがタヌキの姿をした「何か」なのだ。そしてこのタヌキを介して世界と接する主人公にとって、このタヌキは「孤独の殻」の外で邪気無く遊ぶもう一人の(無意識に理想化された)主人公なのではないだろうか。こう考えると、なかなかに深い物語なのだ。

雨と君と(1) (ヤングマガジンコミックス)
 

 カムヤライド (5) / 久正人

カムヤライド (5) (SPコミックス)

カムヤライド (5) (SPコミックス)

 

 主人公の過去が語られさらに新キャラの婆さんが登場、これが主人公のかつての恩師というか命の恩人らしいが一癖二癖ある人物で、なかなかに物語に厚みを持たせてくれているな。アクションもグラフィックも安定のクオリティでこのまま次巻に期待。 

ゴールデンカムイ (25) / 野田 サトル

おお!倒木の山の下敷きになり身体的に急接近する杉元とアシパさん!ここまで接近するのはひょっとして物語始まって初めて!?そしてここでアシパさんの杉元への気持ちがかすかに語られる!いいシーンじゃないか!こういうのを待ってたんだ!ってかアシパさんって背丈ちっちゃいけど実際のお年は幾つなんだろう……? 

ゴールデンカムイ公式ファンブック 探究者たちの記録 / 野田サトル

ゴールデンカムイが好きすぎて遂に公式ファンブック買っちゃったい!ゴールデンカムイ世界をみっちり紹介した濃厚なガイドであり、満足感もたっぷりだけど、一つだけ言わせてもらいたい!字が小さいので老眼のオレには内容全部把握できない! 

聖☆おにいさん (19) / 中村 光

もはや神ネタとは違う普通のギャグ漫画になりつつあり、ああ……ネタ切れだ……ネタ切れだ……と思いつつ聖なるお兄さんがたのお話も第19巻、 しかしラスト近くで1話完結ではなく長編新シリーズとしてテコ入れするのらしい。まあそれはそれで。 

アンダーニンジャ(5) / 花沢健吾

なんかこうやる気あるんだか無いんだか分からないニンジャの主人公が戦ったりやる気無さそうにしてたりする物語第5巻だが、そもそも作者もやる気があるんだか無いんだかよく分からない内容で、熱血アクションとは真逆の味わいを目指しているのだろうな、とは思いつつ、これ今盛り上がってる所?なんなん?と思いながら読み進めているオレであった。あと前から気になってたけど加工写真使用の背景画ってなんかダイナミックさに欠けるなあ。

いつもきみのそばに 動物たちが残した25個の不思議なメッセージ / みつつぐ

Twitterで見かけた「動物絡みの不思議な話」漫画を単行本にしたもの。Twitterで読んだときは興味を引かれたのだがこうしてまとめて読んでみると単に妄想・誤認・思い込みでしかないお話ばかりなんだよな。ただ人間の思考というのは時折こういったショートカットをとってしまうことがあり、それが有用に働くと「直観」というものになる。この本の物語はだから「不思議な話」というよりは「直観に支えられた話」なんじゃないだろうか。