良くも悪くも原点回帰。/映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ (監督:ヨハネス・ロバーツ 2021年アメリカ映画)

ゲーム『バイオハザード』といえば誰もが知る大ヒットシリーズで、オレも何作かをプレイして楽しませてもらいました。ポール・W・S・アンダーソン監督・製作・脚本による映画化作品『バイオハザード』シリーズもホラー映画のシリーズ作品では世界最大の興行成績を誇るという有名シリーズです。アンダーソン版のシリーズ作は完結してしまいましたが、それをリブートしたのが本作『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』です。そう、まだまだ作るつもりなんですよ!全く商魂逞しいですね!

俳優や製作スタッフはアンダーソン版から全て刷新されています。主演は「メイズ・ランナー」シリーズのカヤ・スコデラーリオ、他にロビー・アメル、ハナ・ジョン=カーメン、アヴァン・ジョーギアら若手俳優が活躍します。監督はパニックスリラー『海底47M』シリーズのヨハネス・ロバーツ

【物語】巨大複合企業「アンブレラ社」の拠点があるラクーンシティの孤児院で育ったクレア・レッドフィールドは、「アンブレラ社がある事故を起こし、そのせいで街に異変が起きている」という不可解な警告のメッセージを受け取る。不審に思いラクーンシティに戻ってきたクレアだったが、ラクーン市警に勤める兄クリスは、クレアから聞いたその話を単なる陰謀論だとあしらう。しかし、やがて2人は変わり果てた姿の住民の姿を目にし、アンブレラ社が秘密裏に人体実験を行っていたことを知る。

バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ : 作品情報 - 映画.com

リブート版なので物語は「そもそもの最初から」物語られます。冒頭からオリジナルゲームのストーリーをとても尊重して作られているな、と感じられる展開です。ゲーム版で言うと1作目『バイオハザード』、2作目『バイオハザード2』の物語を折衷して作られているんですね。まあゲーム自体、1作目が1996年リリースなのでオレも正確に覚えているわけではありませんが、改変は加えられているものの結構丁寧にゲームストーリーをなぞっていたのではないでしょうか。ゲーム1.2作目の主要人物もきちんと登場しており、この辺りが今回のリブートのコンセプトがあったのでしょう。

物語全体は結構ホラー寄りに作られています。そもそもオリジナルゲーム自体が「サバイバルホラー」と銘打たれたホラー作品であり、映画のほうもそれを模してスプラッタ描写のみならず演出自体にホラーテイスト満載です。とはいえ怖くて怖くて観ていられない!というほどのガチなホラーではなく、基本はアクション作となっていて、ホラーが苦手な人でも多分観られるようなエンターティメント作品になっています。作品全体の作りはホラー映画監督ジョン・カーペンター作品を非常に参考にしていると思えましたが、監督インタビューを読むと実際影響下にあったと書かれていました。

そういった部分でゲームファンには嬉しい要素が多分にある作品ではありますが、逆に新鮮な要素が見当たらない部分が難となっています。そもそも世界的製薬開発会社の暴走した先端技術が引き金となる物語なのに、古びた洋館や薄汚れた地下室や錆び切った地下坑道が舞台、というのも、もともとのゲーム舞台だったとはいえちぐはぐさを感じてしまいます。こうした部分を見るにつけ、アンダーソン版『バイオハザード』がいかに優れた脚本と脚色と監督色を出していたか、そしてミラ・ジョヴォヴイッチという傑出した女優を活かしていたのかが、逆に透けて見えてしまうような作品になってしまっています。

とはいえ、若手俳優起用による配役の瑞々しさと言った点では新鮮さがあります。編集もテンポが良く、アクションも飽きさせません。ゲームとは異なる脚色自体もホラーらしさを醸し出していてそれほど気になりませんでした。いわゆるB級映画的にはそんなに遜色ないし、あまりうるさいことを言う必要のない類の作品ではないでしょうか。そもそもアンダーソン版『バイオハザード』自体、アンダーソンらしい支離滅裂さの目立つトンチキ映画であり、ポップコーン・ムービーとしてこういったリブートもアリじゃない?という気にはさせられました。