ロックよもやま話:オレとレッド・ツェッペリン

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ちょっと前のことになるが、レッド・ツェッペリンのBox Setを購入し、さらにライヴアルバムである『永遠の詩』のリイシュー版も入手し、ツェッペリン・アルバムを聴きまくっていた。今でもたまに思い出した頃に引っ張り出して、やっぱり聴いている。

とはいえ、最高のロックバンドであることは知りつつも、オレは昔から特にレッド・ツェッペリンの熱狂的なファンだったことはない。そもそもロックの聴き初めの頃からハードロックはほとんど聴かなかった。しかしそんな中でも唯一一目置いていたのがツェッペリンだった。ツェッペリンには「ロックの本質」が詰まっているように感じていた。

最初の出会いは中学生の頃、『永遠の詩』が発売されたときだろうか。1976年、ツェッペリンのコンサート映画『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』のサウンドトラックとして発売されたLP2枚組となるこのアルバムは、当時リアルタイムでロック好きの級友たちの脳天をブチのめし、大きな話題となっていた。オレはハードロック好きの級友たちの陰に隠れてデヴィッド・ボウイピンク・フロイドを聴いていたようなガキだったが、流石にこのアルバムはスゴイと思った。映画ももちろん観に行った。

高校に上がってからも、級友たちの多くはハードロック好きで、ツェッペリンやクイーンやディープ・パープルの話ばかりしていた。「ジミー・ペイジってギターが下手だよな!」とこき下ろすのが彼らファンの作法らしかった。オレはやはり隅っこでポリスやXTCゲイリー・ニューマンなんかを聴いていて、そんなニューウェーヴ好きの級友たちも幾人かいた。とはいえ、そんな級友の家に遊びに行くと実はこっそり『プレゼンス』を持っていたりした。

高校の文化祭ではハードロック好きな連中の組んだバンドが何組か演奏していたが、みんながみんな『天国への階段』を演奏していた。そしてどのバンドのヴォーカルもロバート・プラントが出すような高音のキーを出すことができず残念な結果となり、ちょっと笑ってしまった。

その後成人して30代の頃からはテクノばかり聴いていたのだが、北海道の実家に帰省するときは必ずツェッペリンのベストアルバムを持って行った(というかツェッペリンで持っていたアルバムは『永遠の詩』とベスト盤だけだった)。オレは実家に帰るといつも自転車で田舎の何にもない原野を走り回るのが好きなのだが、この田舎の原野の風景とウォークマンで聴くツェッペリンの荒々しさが実に合うのだ。逆にテクノは風景に合わず、これって都市の音なんだな、と思った。しかしその後田舎で聴くのはレディオヘッドに変わってしまった。とまあ、オレのレッド・ツェッペリンに関する思い出はそんなものである。

しかしそんなある日、ツェッペリンが結成されたのが50年以上前だった事実を目の当たりにし、驚愕したのだ。あの、まさに「ロックの本質」だったバンドが、実は50年も前のバンドだったのかと思うと、自分がいかに歳を取ってしまったのかを否応なしに認識せざるを得なかった。そして50年経っても、やはりツェッペリンはオンリーワンであり、彼らを超えるロック・バンドは結局現れなかったのではないか、と思えてしまったのである。この時オレは、一回ちゃんとツェッペリンを聴いてみようかと思ったのだ。それで、Box Setを購入したというわけだ(中古で安かったという事もあったけど)。

購入したのは『Complete Studio Recordings』という10枚組のBox Setだ。中古で¥7000ぐらいで、値段を見てすぐに購入した。そしてその全部のアルバムを聴いて、ああこれは素晴らしいな、全作品聴く価値があったなと感じた。なんだろう、ツェッペリンの音は巨大な鋼鉄の分銅がブインブインと宙を切り裂いている音のように聴こえる。音が重量感のある塊りとなってズシンズシンと体に飛び込んでくるのだ。

ロック=Rockの語源は岩とは関係ないらしいが、ツェッペリンに関しては岩としてのRockがまさに似つかわしい。そんな中にもトラディショナルなメロディーと英国産ならではの鬱蒼とした陰りがあり、演奏はヘヴィーでありつつ繊細さも兼ね備え、そしてメンバーの誰もがスペシャルなのだ。オレはしばらくロック・ミュージックというものを聴いていなかったが、確かに歴史に燦然と名を残す最高のバンドであることは如実に伝わってきた。まあ、今更オレ如きがあれこれ言う事など何もないのだが。

それにしても、こうして全アルバムを聴いてバンドの事をきちんと調べるまで、オレはバンド名の意味をずっと「導かれた(LED)飛行船」だとばかり思ってたよ……ホントは「鉛の(LEAD/発音はled)飛行船」だったんだね……。

Complete Studio Recordings

Complete Studio Recordings

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